鋼の錬金術師/X

過保護な彼のセリフ/第2話/しぃ〜・にゃーにゃ!
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『過保護な彼のセリフ』



2.どれだけ心配したと思っている




しぃ〜・にゃーにゃ!




大佐の執務室に入ると、俺はローテーブルに資料を広げた。

四隅をきっちりと折られた紙をゆっくりと広げ、俺は改めて其処に描かれている特殊な錬成陣を見つめれば。


「………あ。」


錬成陣の端を横切るように残っていたのは、まるで、てちてちとスタンプを押されたような可愛らしい猫の足跡。



俺は思わず溜め息を付いた。


こんな事なら、錬成陣作成中に『材料』となる『薬』(赤と青のキャンディの事だ)を置いておくべきじゃなかった。



っていうか。


作動するか、普通!?


どう解読しても、この錬成陣、滅茶苦茶なんですけどっ!?





…………って罵倒しまくっても、後の祭り。


俺は徐に立ち上がると、隣で箱座りしている黒猫大佐に言った。



「大佐、ペンと修正液借りるぞ」

「にゃー」




俺は大佐の平机に近付いて、引き出しの一番上を開けた。


そこに有ったのは、クリップにペン一式、メモ帳、糊にセロテープ、線引き。

修正液は、どうやら引き出しの奥の方にあるようだ。

ごそごそと引き出しの奥に手を突っ込んだ俺が手にしたもの。



それは。


「…………チョコレート?」



そう。


何故か、お菓子の箱が入っていたのだ。


「にゃー!!!」


慌てふためいた様子ですっ飛んで来た黒猫大佐を、思わず見つめれば。



彼は机の上に乗っかったまま、気まずそうに視線を逸らしている。



「…大佐って…………甘党?」


「にゃーにゃ!」



にゃーにゃー鳴かれても。


俺、猫語はわからないんだけどな…。



俺は改めて菓子の箱を見、何気なく振れば、かたかたと音がする。


「も〜らい♪」


「にゃー!!!」


まるで、箱を開けようとするのを阻止するかのように懸命に袖口を噛んで引っ張る黒猫大佐を軽くあしらうと、俺は蓋を開けた。


だが、その中に有ったのはチョコレートではなく。



「………これ、」


思わず彼を見ると、黒猫大佐は恥ずかしそうに掠れた小さな声で『…にゃあ…』と鳴いた。



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