銀魂・原作
□「俺のもん」
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ククッ…。本当にかわいい野郎だな。
キスだけでこんなにとろけやがって。
まだ息を弾ませてる銀時をさらにぎゅっと抱き締めると潤んだ目で見上げてくる。
こいつは普段あんまり目も合わせようとしねぇし。何考えてるかわかんねぇ野郎だが、
目をそらせなぇように両手で固定して顔を近付けて目を見つめればこいつの考えてる事が手に取るようにわかる。
気が付いたのは最近だがな。
銀時の力なら俺の手を振り解く事なんて容易いだろうがそんな事はしない。
それどころか俺に体を預けるように力を抜いて、顔を真っ赤にして目を潤ませやがる。
すっげぇかわいい。俺をどうしたいってんだ。
自分でも良く1ヶ月も我慢出来たなって思うよ!
そんな銀時のかわいい顔がもっと見てぇ。
「…銀時、欲しいもの決まったか?」
「…はふ、…ん?」
だが、まだわからないと言うような顔で首を傾げて俺を見上げる銀時。
今の“キスが欲しい。”でわかったろうが。
俺が言って欲しい言葉。
それを銀時の欲しいものとして言わせたいなんて俺も大概わがままだな。
でも銀時に言って欲しい。
のに、銀時はうんうん唸りながら、ブルーレイだのお菓子の家だの(それもちょっとかわいいが)言ってる。
もう仕方ねぇ!
「ちげぇ。銀時、お前の欲しいものは…」
俺の言って欲しい言葉は…。
「え?」
「俺だろ?」
「…」
そう言った瞬間、銀時は口をぽかんと開けたまま動きを止めた。
そして意味がわからないとでも言うように眉間にしわを寄せて「は?」と一言。
「だから、お前の欲しいものは俺だろ?十四郎が欲しいと言ってくれ」
そう言うと銀時は思いっきり。
「はあァァァァ?」
なんだそれと続けて叫んだ。
はぁァァ?とはなんだ。はぁァァ?とはッ!!
てめぇ、俺が恥を忍んで言ったと言うのに。
なんだそれってちょっと、いや、かなり傷付いたぞてめぇ。
お前は俺が欲しくないっていうのか?
俺はこんなにお前が欲しいっつーのに。
「土方く〜ん、もう何を言わせたかったのかと思ったら…。つまんねぇ」
「…」
…んだとぉ?てめぇ。
「ばかだなぁ、お前」
なんて笑っていられるのも今のうちだ。
こうなったらおめぇ、俺が欲しいって言うまで犯して鳴かせて…。
「もうとっくに土方くんは俺のもんじゃん」
今まさに押し倒してやろうとした瞬間に銀時の発した思いがけない言葉と優しい笑顔。
「…は?」
「え?」
「俺のもん?」
「…違うの?」
「ちっ、ちがくない」
「?」
俺の態度に銀時はきょとんと首を傾げた。
な…、なっ、なんてバカなんだ俺ェェ!
こんな、こんな純粋で大事なかわいい銀時を犯してやろうとするなんて…。
銀時はちゃんと俺を想っててくれてるじゃねぇか!
俺のもんだと言ってくれたじゃねぇか!
バカッ!バカッ!しね、俺ッ!
「なっ、なんで泣いてんのォ?土方くん」
「うっ…銀時…」
「大丈夫?」
「銀時ィーッ!」
ガバッと勢い良い抱きしめれば、ひっくり返った銀時を押し倒したような形になってしまった。
「うわっ」
「銀時、銀時ィ」
優しく俺の頭を撫でる銀時の手に更に泣けてくる。
「なんだよ土方くん。そんなに言って欲しかったのか?」
違う。違うんだ。俺は、自分が情けない。
「土方くん…お前が欲しい」
「…銀」
「でもクリスマスプレゼントはブルーレイ買ってね」
「ああ」
「えッ!マジで?」
「ああ、なんでも買ってやる」
くだらねぇ事を考えた俺を許してくれ銀時。
今はこのまま銀時のぬくもりを感じていたい。
俺はお前のもんで、お前も俺のもんだよな?
わかっていた事なのに、なんてバカ野郎なんだ俺は。
銀時は俺の欲しかった言葉より更に嬉しい言葉をくれた。
end
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