銀魂・原作
□「俺のもん」
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「なぁ、銀時。なんか欲しいもんあるか?」
何も言わずに誰かが万事屋に入って来たかと思ったら、やっぱりてめぇか土方くん。
「…はぁ?なんだよ唐突に」
「だからお前の欲しいもんだよ」
んだよ、久しぶりにやって来たと思ったら第一声がそれ?
つーか隊服だし。仕事中だろ?通りがかりのついでに寄った感が満載だし。
なんかもっと他に言う事あんだろうが。1ヶ月ぶりなんだからほらもっと『逢いたかった』とかさ。
つーか、えっと、なんだっけ?欲しいもん?欲しいもんつったらアレしかないだろ…。
「…金?」
俺がそう言うと土方くんはあからさまに顔をしかめる。
「おめぇなぁ、金で愛は買えねぇぞ。なんか他にあんだろうが」
「はぁ?なにワケわかんない事 言ってんの?」
読んでいたジャンプに再び目を落とすとそれを取り上げられ体ごと土方くんの方向に向かされた。
「ちょっ…なにすんだよ!」
「銀時、俺は真面目に聞いてるんだ」
「…じゃ、糖分」
「それはいつもの事だろ?そうじゃなくて、ほらもっとあるだろ」
「…んな事言っても別にねぇし。急に思いつかねぇよ。それに俺が今リアルに欲しいもんつったらアレだよ?暖房器具とかデジタル対応テレビとかだよ?それ言ってもいいのか?」
土方くんは大げさにため息をつくとおめぇには夢がないのか?とふてぶてしく言ってポケットからタバコを取り出して火を付けた。
なんかむかつく野郎だな。
じゃ、なんだよ。お菓子の家が欲しい〜。
とか言えば満足ですかコノヤロー!
おめぇこそ1ヶ月ぶりだってぇのになんだよその態度は?
おめぇがそんなんだから俺だって…。
んな甘えたりとか、しねぇし…。
寂しかったとか絶対言わねぇ。
って、いやいや!今は んな事はどうでもいい!
俺は怒ってんだッ。
土方くんをキッと睨んだ後、わざとらしくフンと声を出して顔ごとそらした。
「…わかった。じゃ、質問を変えよう」
土方くんは俺が顔をそらしたのが気に入らなかったらしく、そらした顔を両手で挟んで自分の方にむかした。
「…いッ…」
おい、今、首グキッてなったぞ大丈夫か?
もっと優しく扱えっつーの。
「じゃあよ、もし俺がクリスマスにサンタさんの格好して現れたらどうする?」
「…え?」
あ〜、そういう事?
クリスマスのプレゼント何が欲しいか聞いてたのか…。
そりゃ、嬉しいよ。俺んとこに来てくれるんならどんな格好でも嬉しいよ。
両手で顔を固定されたまま聞くもんだから顔が近い。
顔もそらせないしにやけそうになるのがばれるかも…。
「…え〜、普通に引く。つーかなんだよサンタさん?かわいいつもり?」
「そうか嬉しいか」
「─ッ、んな事言ってねぇだろ!?」
「言ってなくても思ったろ?」
わざと思ってる事と反対の事言ったのに。
「…う、なんでわかんの?」
ぼそりと言った俺の一言にニヤリと口端を上げる土方くん。
もう恥ずかしくて顔をそらそうとしてもまだ固定されてる顔はピクリとも動かない。
つーかこのまっすぐな目に見つめられるとそらせない。
「や〜、もう離してッ」
恥ずかしくなる。
こんな綺麗な顔で見ないで。
「いやだ、おめぇの欲しいもん言うまで離さない」
「じゃ、じゃあ、ケーキ、でっかいケーキ」
「それは欲しいもんのうちには入らねぇな」
「えと、ふたりきりで温泉旅行〜なんつって」
「それはいずれな。だが違う」
なんだよなんだよ!何が違うんだよ?
俺の欲しいもんだろ?違うってなんだよ。
なにを言えば満足すんだよ。
えと、なんかコイツの喜びそうな事と言ったら…。
「あっ!キスッ、キスが欲しい」
「それは今するから却下」
「あっ、んん…ッ」
そして唇を塞がれた。
なにを言って欲しいんだよ?土方くんは。いくら考えてもわかんねぇよ。
てかもうなにも考えられねぇ。
「…ん…ふ、ぁ…」
1ヶ月ぶりだし。
「…銀時」
気持ち良くて、なんも考えらんねぇよ。
長い口づけもようやく離された頃には俺はぐったりと土方くんの胸にもたれかかってた。