銀魂・原作

□ツンの向こう側
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『来月の5日 万事屋に来い』

初めて銀時からの電話。

嬉しくて息切れして心臓が止まるかと思うほどドキドキしながら出た。

が、

冒頭のセリフをひとこと言うとすぐに切れた。

え?なに、来月がなんだって?





「銀時?なんだよ、なんですぐ切るんだよ?」



しばらく待ってみたが、もう一度掛かってくる様子もないから自分から掛けてみる俺。



『…もう、用済んだからいいじゃん』

「俺の返事は聞かねえのかァ!」

『んだよ、うるせえなぁ。出来ねぇとかは聞かないからな』

「はぁ?」

『いいな?絶対来いよ?』

「んな勝手に、なんで…」

『な!』

「だから…」

『なッ!!』

「ゥ…わかったよ」

『よし、じゃあね〜』

「おいッ、ちょっ…」



ツーツーツー…

切れてやがる。

ったく、なんだってんだ。

相変わらず勝手な野郎だな。


来月の5日つったか?

いったい何があるって………。


あ…。


ら、来月の5日つったら、

5月5日?


お、お、


俺の誕生日じゃねぇかァァ!!


え、マジでか?


俺達は始まりこそは良くなかったが(俺が襲ったりしたのが悪いんだが…)

なんか、いろいろあって。

一年前の俺の誕生日に俺達の思いは通じ合ったんだよ。

もしかしなくても俺の誕生日を祝ってくれるのか?銀時!

そういうことなら何が何でもあけてやる。

仕事なんかするかよ!




その電話があった次の日から銀時は逢う度に「5日は休め」とか「絶対来い」とか「絶対絶対休め」とか言うようになった。

俺はそれが聞きたくて曖昧にしか返事をしない。

そのたびに一瞬寂しそうな顔をするのがすげぇ可愛い。

そして今日もまた俺の巡回中に銀時がたぶん偶然を装ってやって来た。



「よぉ、土方くん偶然だな」

「あぁ、銀時?」



ふらふらと近寄って来る様が可愛い。



「なぁ、土方くん、休み取れた?」



ほら来た。



「うーん、近づかねえとまだわかんねぇな」

「わかんなくても絶対休め」



クククッ

あぁ、可愛い。

ちょっと睨んで言うのが、これ、おまえ照れ隠しだろ。

可愛すぎて涙がでそう。


だが、もういいだろう。

これ以上じらすとこのツンデレは怒って帰ってしまいそうだから。




「まぁ大丈夫だろ。絶対休み入れるよ」

「ほ、ほんとか?」



キラキラと目を輝かせ嬉しそうな顔をするが、それも一瞬の事で、すぐに憎たらしい顔に戻る。



「ふん、当然だな、俺が誘ってやってんだから」



ったくコノヤローは…。

まぁ、否定はしねぇがな。

だが楽しみにしてると思われるのもシャクだ。

だからわざと自分の誕生日を忘れたフリをして、その日なんかあったっけ?

と聞いてみたら、銀時は至極嬉しそうな顔をして別になんもねぇけど。と言った。


あ、あれか?サプライズか?

なんかサプライズ的な事をするつもりか?

それなら俺は気付かないフリをしてやるよ。


俺も良い歳こいて自分の誕生日がこんなに楽しみに思うとは思わなかった。














待ち遠しい誕生日も、もう翌日にせまってきた。

だが大型連休という事もあって5月に入ると忙しさもハンパねぇ。

今も幕府の上官の命令で江戸に遊びに来ている娘のために、江戸で流行りの初夏限定の1日5つしか作らねえという菓子をあげるために買いに来ている。


んなの自分で買いに行けよッ。


と言いたい所だが近藤さんがボロクソ言われるのは明白で我慢ならねぇから仕方なく従うしかねぇ。

明け方から朝一番に何時間も並んで今やっと買えた所だ。

次は急いでそいつ等の所へ持って行かなきゃなんねぇ。

そんなくだらねぇ事で時間とらしやがって、

あーッ、イライラする。



「副長、お疲れ様です」



迎えに来た山崎を一発殴ってやったら少しすっきりした。



ハァ…

と一息ついた時。



「あれ〜?土方くんがいる」

「…あ?」

「珍しいとこにいるなぁ」



ヘラヘラした顔で寄ってくる銀時。

いつもなら可愛く見える行動も急いでる時に引き止められたからか暇そうにしているこの男にイラっとした。



「んだ、今急いで…」

「ああァアー−ッ!!」



俺が持ってる菓子の箱を指差しながら突然叫ぶ銀時。



「ちょっ…おま、これ…初夏限定1日5つしかねぇっつーふわふわスポンジになめらか生クリームのチョー高級いちごのロールケーキじゃねぇかァァーッ!!」

「はぁ?」



ビンボーで買えねえくせにそんな知識だけはあるんだよなコイツは。

つーか、なんで箱の外からわかるの?


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