倉庫もといゴミ箱

□新たな物語が生まれる
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夕暮れの橙が差し込む放課後の教室で、一つの小柄な影があった。
その影の主である少女はひたすらペンを動かし続けている。

「ん?いや、こっちか…」

問題集とにらめっこをして、ノートにひたすら書き込む少女の横から金髪が覗く。

「随分と熱心にやってるね」

「あーもう、うるさいッ!…って、アンタか」

フレンだと分かるや否や振り上げた本を降ろした。
鼻先を分厚い本が掠めていき、青年は冷や汗をかいていたが。

「ご、ごめん。邪魔したかな?」

再び問題集に視線を落としたリタに、フレンは僅かに心配になりながら声をかける。

「良いわよ別に。で、何か用?」

「いや、用ってほどじゃ…。ただ君を見かけたから」

「なにそれ。アンタもヒマねー」

生徒会での仕事が終わり、帰宅しようとした矢先にリタの姿を見かけた。と青年は告げた。

「ところでこんな時間まで居残って勉強かい?」

まあね。とリタは答える。

「人を待ってるからそれまでの暇つぶしよ。勉強なら家でもできるんだけど」

「ふーん…」

フレンにしては適当な反応に、少女は顔を上げて柳眉を寄せた。

「なによその微妙な反応」

「君が待っているのは、ユーリかな?」

「い、いいでしょ、誰でも…」

「…………」

最近二人が同じクラスになって仲良く話している場面を目撃していた彼は、彼女がユーリとよく一緒にいるのを知っていた。

「……どうしたの?」

きっかけは、些細な嫉妬心。
鈍いフレンとて、それぐらいは理解している。

「僕もユーリが来るまで勉強しようかと思ってね」

そう言って前の席の机をつけ、自前の勉強道具を広げ始めた。

「こんな時間だし、すぐに来るだろうけどさ。ダメかい?」

そこらの女子なら赤面しそうな天然の笑顔で首を傾げる青年にリタは嘆息した。

「別に構わないけど、答案の丸写しとかやめてよね」

「ユーリじゃないんだから、そんなことしないよ」

つい皮肉を言ってしまったが、目の前の少女は微笑を零す。

「ふん、それもそうね」

そんな些細な事ですら心が揺れたフレンだが、それが自分に向けられていないのが切なかった。

―‐―‐―‐

「―で、Xにこの式を代入して」

「ん?こっちじゃないのかい?」

30分ぐらい経った頃、いつの間にかフレンは勉強を教えてもらっているのに気がつく。
彼女の天才と言う名はやはり伊達ではないらしい。

「それだとこの値を求めることになるわよ」

しかし、いつもより近い距離に青年は色々な意味で緊張しっぱなしだった。

「あ、そうか。うん、なるほど。すごいね君は」

「そう?すぐに理解するアンタもなかなかじゃない」

実際、わからないとは言いながらも一度説明すれば理解する彼にリタは何度が驚かされていた。

「時々素っ頓狂な事をしなければ完璧ね」

「手厳しいな。自分はそんなつもりはないのだけど」

「フレンは賢いのにたまに抜けてっからなー」

「はは、よく言われ…ユーリ!」

戸口に立って呑気に片手を上げた青年に、二人は目を向ける。

「……遅い」

「悪い悪い。なかなか離してもらえなくてさ」

リタ同様、帰宅部であるユーリだが、その人柄と実力から度々助っ人を頼まれるのだ。

「もう正式に入部すればいいじゃないか」

「俺は帰宅部がいーんだよ」

本人は自由が良いとかで部活動に専念するつもりはないらしい。

そんな事はどうでも良いとばかりに荷物を片付けたリタは、鞄を手に立ち上がった。

「とにかく、今日はユーリの奢りよ。駅前のクレープ屋で2個!」

「太るぞ」

「うっさい!遅れたんだから文句言うな!」

ユーリの言葉を一蹴ながらも彼女は僅かに頬を染める。
それらを見つめつつフレンも荷物をまとめた。

「じゃあ僕も勉強を教えてもらったお礼にクレープ奢るよ」

ね?とリタに問うが、相手は首を傾げている。

「アレぐらい平気よ。誰かさんと違って要領良かったし」

「悪かったな」

思い当たる事があるらしく、ユーリは口を尖らせた。

「じゃあこれからも暇な時に教えてもらうってことで」

リタにとっては勉強を教えるくらいなんともないため、それなら。と深く考えず了承する。

「…………」

当然、ユーリにはフレンの真意が理解できていたが。

「ユーリ?」

「いや。そろそろ帰るか」

「そうね」

「ああ」


その言葉の裏には
(さりげない約束事)



―‐―‐―‐

最近テイルズが好きすぎて…←
BLも好きだがテイルズオブシリーズはNL推しな自分。

けれどもやっぱりマイナーというね。
サブヒロインが可愛い件←



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