華咲く頃が終わっても


□12 さあ始めようか
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今日から知覧は学校へ行けるようになり、元気に飛び出して行った。

「行ってきまーす!!」

多紅世に見送られて、手を何度も振った。

「知覧が元気になって本当に良かった!多紅世さんも相手をするのに疲れただろう?」

「いえ、大丈夫ですよ」

「さてと朝食がそろそろ出来る頃だな」

「行きましょう」

パタンと扉を閉めて辺りは静かになった。

「頂きます!」

「わー、和食なんて久しぶりに食べます」

「多紅世さんも栄養が必要だからな」

「あなた、私語は謹んで下さい」

麗華の一言で三人は黙々と食事を済ませた。








「なあなあ知覧!お前好きな子いるんだってな?どいつだよ?」

「バーロー!勝手に解釈すんな、いねーよ」

授業が終わり、知覧がカバンを手に椅子を片付けた。

「さってと!今日の夕飯何かなー!」

ルンルンな足取りで帰宅しようとする知覧をクラスメイトの男子がじどーっと見ていた。

「怪しいなー」

気になって知覧の後を付けてみても。

「あれ?知覧何処行きやがった?」

あっと言う間に巻かれてしまい、渋々引き上げた。

「くっ、くっ、く!」

可笑しくてたまらない知覧は、ゆっくり家までの道を走って帰った。

「ただいまー!!」

「おかえりなさい、知覧君!」

「見てみてー!学期末テスト、じゃーん」

「おー50点かー!惜しいなー」

父親がテスト用紙を見て知覧の頭をナデナデした。

「勉強進みそう?」

「それがさー多紅世さん、僕狙われているんだ」

「何ー!狙われてるだとー?」

父親が即座に反応した。

「僕にちょっかいかけてきて、集中出来ないんだ………」

「けしからん!学校へ抗議してくる!!」

と、そのまま出て行ってしまった。

「あ!父さん!もう、言い出したら実行しないと気が済まないんだから………」

「知覧君はお父さん似かな?」

「何でぇー!?」

「ははは」

と、いつもならここで文句を言い出すはずの真理亜がいない事に気付いた。

「あれ?姉貴は?」

「真理亜ちゃんなら麗華さんとお出かけしてからもうだいぶ経つけどまだ戻って来てないよ」

「………って事は………?」

「うん、俺と知覧君だけだね」

「………」

急に知覧が黙り込んだ。

「知覧君?」

「多紅世さん………」

顔が赤くなるのが自分でも良く分かった。

「ちょっと良いですか?」

多紅世を連れて、プライベートルームへ入るとカチャッとカギをかけた。

「何?どうしたの、知覧君」

「さあて!!始めようか!!!」

それから、地獄に似た至福の時が訪れようとしていた。




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