mini chapters.

□その終わりはきみの骨を溶かすだろう。
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リヴァイ班、7名。
今日の作戦にて、死亡数、4名。
生存数、3名。

死亡した班員、エルド・ジン、オルオ・ボザド、ペトラ・ラル、グンタ・シュルツ。
生存班員、リヴァイ、エレン・イェーガー、エリカ・ラングウェッジ。


エリカは空を眺めていた。
眺めている場合ではないと、自分では分かっているつもりだった。

―――――守れなかった。
―――――ペトラ達を、守れなかった。

そう思えば思うほど胸の内から熱いものがこみ上げてくる。
戦争に死者は付き物だ。例えそれが大切な人であっても。
一々戦死者に涙していては埒が明かない。幼少期、調査兵団だった父と母にそう言い聞かせられたエリカは、感情を殺す道を選んだのだ。
でも、無理だった。
どう足掻いても、仲間の死を悲しまない道なんて、自分にはない。
…弱い。
弱かった。
自分はこんなにも、弱かったのだ。
歯を食い縛って涙に耐える。下を向いて顔を手で覆った。

まただ。
あの時と同じだ。
父と母が骨になって帰って来た時と。
その時に、絶対に、巨人を殺してやると。
それなのに感情に負けて、骨を抱いて泣き崩れた事。

繰り返すのか。
また。
…何度繰り返せば気が済むんだ。

「畜生…!」

弱い自分を殺してやりたい。

「…エリカ……?」
「!」

少し戸惑ったような声が背後から聞こえた。
振り返ったそこには、エレンが立っていて。
…そうだ。エレンだって、辛いんだ。

「ごめんねエレン、ちょっと取り乱しちゃった」
「いや…うん。仕方ないと思う。……オルオさんたちが死んだのは、俺の所為、だから」

私は今の言葉にバッとエレンを見上げた。
エレンの目は、沈んでいた。
どこまでも自分を責めていた。
違う、と言いたいのに、そうだ、と言っている自分がいて、どこまで自分は愚かなのだと思う。

「ごめん、ごめん……エリカ、ごめん…」
「っ違う!」

自分に言い聞かせるようにして叫んだ。
エレンの目から涙が一粒零れている。
本当に違うの。エレンの所為じゃないの。誰の所為でもないんだ。悪いのは、自分だ。

「違うんだよエレン…悪いのは、守れなかった私だ…!結局何もできなくて、エレンも一回連れて行かれて、私、私、何もしてなかった…!!」

大切な仲間さえ、一度は守れなかった。
守れると豪語していたこの手が、酷く情けない。
こんなちっぽけな手で誰を守れるっていうんだ。誰も、リヴァイも、エレンさえ。

「絶対守るから!」
「…!エリカ、」
「ペトラさん達の分まで、私がエレンを守るから!リヴァイ兵長だって守るから!」
「ッエリカ!」

激昂していた私は、いつの間にかエレンの腕の中にいた。
エレンの体は私よりの一回り大きいけれど、初めて会った時、その背は酷く小さく見えた。
それが、今はこんなにも頼もしく見える。

「もういいんだ、エリカ」
「エレ、ン」
「女の子に守られんの、男として恥ずかしいし。…俺だって、俺だって守りたいんだ。みんなも、エリカも、」
「…っ」

ああ駄目だ。もう限界だ。エレンの隊服を握りしめて、涙を流す。
エレンはそんな自分を黙って抱き締めてくれた。
ああ本当に情けないよ。
でも情けなかったからこそ、あの人達と出会う事が出来たんだ。
ありがとう、エレン。

あなたを絶対に守って見せるから。



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