終焉ノ栞プロジェクト

□何気ない日常
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「暑ーい……」
力もなく情けない声を出して、パタパタと制服を扇ぐB子。

「そうですね、冷房施設も整っていませんし……」

「…旧校舎だから仕方ないよ」

A弥は机に突っ伏して弱々しくD音に答えた。

「A弥もずいぶん溶けてるけど大丈夫か?」
C太は相変わらずの爽やかな笑顔をA弥に向ける。

イケメンはどんなときもイケメンなのか。……くそう…なんでだ…。なんて考えられる程の思考は今は働かない。
「うう……」

「暑すぎて活動どころじゃないわね〜」

「そうですね……脱水症状になったら大変ですし……」

「……じゃあ四人でショッピングモール行く?校外活動……」

「?何でショッピングモール?」

「……オカルト関連のお店があるって昨日携帯で知ったから…それにショッピングモールなら涼しい」

「なんか四人でそういうのって初めてだから新鮮かも……!」
さっきまでだらだらしていたB子は目をキラキラと輝かしていた。

「……でもまぁショッピングモールに着くまでは地獄だけどね」
C太の冷静なツッコミに

「ああ……」
と肩を下げた。

まあ、言いだしてしまったのは僕だし、B子が行く気満々なので数分は頑張ろう……

「……暑いなぁ……」
旧校舎から出て数秒で僕はヘナった。しゃがんでうじうじしていると急に首元に冷たいものが触れた。
「っ!!冷た……」
驚いて振り向くと後ろにはC太がいた。

「A弥、しっかり水分摂らなきゃ駄目だよ?」
といわれ、C太からスポーツドリンクを受け取った。

「…ありがとう……はい」
そういってC太に飲みかけのジュースを渡す。
「?」
「C太も飲みなよ?」
「えっ、いや……俺は…別に」
「……倒れたら大変だし」
「……いいの?」
「…何が?別に大丈夫だよ」

「……あんたら……」
B子が何故かひきつり笑いをしてこちらを睨んできた。

「……よし、じゃあ行こうか」
旧校舎からショッピングモールまで徒歩30分の距離を僕たちはオカルト関連の話をしながら向かっていった。

「……やっと……着いた……」
相変わらずA弥はだらだらしてシンボルとも言える頭のアンテナはへにゃっと倒れていた。
「はは、A弥体力ないなぁ」
「…バテるの早すぎじゃない?D音は大丈夫?」
「はい、なんとか…」
「…早く、中入ろう……」

ショッピングモールの中に入ると思っていた通りに心地よい冷風が汗だくの体に染みわたる。

四人は近くの自販機で飲み物を買い、ベンチに腰かけた。

「……生き返る……」
A弥はへにゃっと顔を綻ばせた。頭のアンテナも元気を取り戻したようだ。

「……お腹減ったな……」
A弥そういうと立ち上がりどこかへ行こうとしていた。
「A弥?」
「ちょ、どこ行くのよ!」
「……ドーナッツ、食べたい」
「はあぁぁ……!?」

そんなこんなでマイペースなA弥がドーナッツを食べたいということで某ドーナッツ店へ向かうことにした。

「おー、ここの生ポ●デ美味しいんだよな!」
「うん」

男二人組が楽しそうにドーナッツを選んでいる。それを横目で見ながら私とD音は席について待つ。
「……よくドーナッツ食べれるわね……」
「え?B子ちゃん苦手なんですか?」
「うーん…甘いものは嫌いじゃないけど脂っこいじゃない…」
「おまたせ」
「「!?」」
目の前には数えきれない程の大量のドーナッツ。
「あんたたち……何人分買ってきてんのよ…!…私食べないよ?」
「うん、これ僕たちの分」
「はあぁぁ!?太るよ!?」
「……え、これぐらい結構毎日食べてたよね?C太」
「うん、A弥食べても太んないよなー俺はある程度運動するけど」
「あんた…女の敵だわ……」

A弥の意外な一面を知った私たちはようや
く本当の目的のオカルトショップへ向かう。

が。

「え、どこにもないわよ……オカルトショップなんて……」
「あれ……おかしいな……」
「間違えたんじゃない?」
「皆さん、あれ……」
D音が指をさした方向を見ると『閉店』の文字。
「あー……そりゃあ買いに来る人なんてそうそう居ないか…」
「A弥気にすんなって」
「……ごめん」
「……でも、結構楽しかったですよ?皆で遊びにきたみたいで」
「…私も結構楽しい!高校生って感じがする!」
「……なにそれ」
「こういうのもたまにはいいんじゃない、部長?」
「……そう、かな?まぁ、皆がそう言うなら……」
「思い出にプリクラ撮ろうよ!」
「私もB子ちゃんとプリクラ撮りたいです……!」
「A弥が撮るなら俺も」
「ええ……」

「思い出作り!」
B子はD音の腕を引っ張る。
「A弥も行くぞー」
C太もA弥の腕を引っ張りB子に着いていく。


……なんだか今日は平凡でも楽しい一日だな。

A弥はフッと軽く微笑んだ。

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