小説(成れ染め)

□青い人
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―自覚はない。

目が覚めた時には軍隊所の地下に閉じ込められていた。
ネスツから回収されたトリガデータのない失敗作のクローンだという説明をハイデルンから受けたが、全くもって実感がなかった。

自分は自分、草薙京以外の誰でもないというのに、急に自分は自分ではないと言われ、今は軍に協力をするかわりに生かしてもらっている身だ。
…納得はしていなかった。
自分が自分でないなんて。
自分のまわりのものが、記憶が全て自分のものでないなどと、信じれるわけがなかった。


「……草薙」
「……」
暗い気持ちに更けっていた自分に、彼女は声をかけてきた。
「草薙?」
「……キョウ」
「……?」
「俺のことは“キョウ”って呼んでくれよ」
「……キョウ?」
「気心知れたヤツにはそぅ呼ばせてるんだ。それに、オリジナルとの区別がつくだろ」
「……気心知れた?」
「そぅ、だからキョウって呼んでくれ。レオナ」
「……了解」


…意味が通じただろうか?
これには草薙京と気心知れた仲にならないでほしいという意味が込められているのだが、レオナの表情からは何も読みとれなかった。

「…キョウ、大佐が一時ににミーティングルームに来るようにって」
「ふぅん。…お前は?」
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