原作サイド─数年後─

□心配
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「おい、ビビ」
「あ、Mr.ブシドー」
時計塔に入って来ようとしているビビを上から呼び止めると、それに気付いたビビが見上げてくる。
その腕にゃ葡萄酒の瓶。
どうやら酒の差し入れらしい。
「待ってろ。今降りるからよ」
差し入れはありがてぇが、ここまで階段を登ってこようとするから参る。
腹ぼてに階段は堪えるかもしれねぇし、足引っ掛けて転ばれでもすりゃあ大問題だ。
「大丈夫よ。見張りの最中なんだから私が行くわ」
「いいからじっとしてろ!!w。そこ動くな!!w」
(たく…w)
昼間は大人しく言う事を聞いてたってのに、それもマジで一時だったビビに困惑しながら、壁に沿って作られた螺旋状の階段を下りていく。
「ねぇ、今日は中で一緒に飲まない?」
「あ?w」
「たまには時計塔の中で飲みたいじゃない。私妊娠してからずっとこの時計塔に上ってないのよ?」
「〜〜〜〜w」
二ヶ月前にもこう言った。
今よりまだやべぇ腹の時期に。
「腹ぼてであの階段上る気か!?w。お前マジで自分が妊婦だって解ってんのか!?w」
「だってあなた宮殿に入るの気兼ねするじゃない。Mr.ブシドーが普通に宮殿に入ってくるんなら私の部屋で飲んでいいけど、宮殿の中で海賊の自分がウロウロするのはイヤなんでしょ?。それが解ってるから私も無理強いはしないし、こうしてここに来てるのよ?」
「っっ…w」
上まで延々続く階段を指さしながら言った焦りの物言いをビビの言葉に止められる。
(………w。…そりゃあ解るがよ…w)
俺の都合を汲み取ってるのは解る。
だが最近こいつはやけに聞き分けがねぇ。
子供が出来ると女は強くなると言うが、これがそうなのか。
前までは他人の考えも思慮して身を引く奴だったが、最近気のせいかそれが無くなってきた気がする。
てか、ちぃとナミに似てきた気がするw。
「……解ったよ…w」
「きゃっ!!?」
あんな長ぇ階段上らせる訳にゃいかねぇから、仕方無くビビを抱き上げると、びびったみてぇな声を出したビビ。
「ミっMr.ブシドーっ!?//////w」
焦って俺の顔を見てくるビビの顔は赤らんでいて。
「階段上るのは腹に障るだろうが」
「ぁ…//////。…ん…///、ありがとう…///⊃⊃」
(…………)
気恥ずかしげに下を向く。
こういう所は変わらねぇ。
俺達はもう体まで知り尽くした仲だってのに、抱き上げる事にすら顔を赤らめる。
それに何となく安堵しながら階段を上がる。
「ほれ」
「ん…」
部屋に着いて、ビビを下ろす。
その腕に抱き持つ、コップの被さった高級葡萄酒の瓶を見ていると、ビビが俺を見てきて。
何となく考えが読めて、体を屈めるとビビも顔を近付けてくる。
「……ん…」
艶めかしい口に口を当てて、わりと久し振りの唇の感触を感じる。
「………。…はい、これ…」
「おう」
内縁とはいえ夫婦になって、ガキまで作って。
最初は初々しさもあった接吻も、もうビビも慣れちまって。
照れ臭さの表情も無く差し出してくる酒瓶に、それを受け取りながら、"時間"ってやつをちぃと考えた。
照れも無くなる程の時間。
これからも、俺もこいつも二人でやる事が平然と、当たり前になっていく方に進んでいくんだろう。
それが共に、夫婦として生きるって事なんだろう。
(…………)
感慨みてぇな気分を感じながらその場に座って、前に座ったビビにコップを渡して、瓶のコルクに親指を当てる。
ビビが持つコップに酒を注ぎ入れ、いつものコップ半分より更に量を加減して瓶口をコップから離す。
「あんまり飲むなよ。腹に障るからよ」
「大丈夫よ。私あんまり飲めないの知ってるでしょ?」
確かに、こいつの飲める量はたかが知れてるが、酒は腹に影響するかもしれねぇし、大丈夫って量も解らねぇ。
「Mr.ブシドーがこんなに心配性だったなんて思わなかった」
(、)
いつも通り一口一口チビチビ呑んで、コップから口を離して言ってきたビビに、煽っていた酒を下ろしてビビを見る。
「…俺はその腹の中の子供らの父親だ。だから心配して」
「…お腹だけ?」
「…………」
言ってきた、意味深な言葉。
それに言葉が止まって。
「……ううんw。なんでもない…w。ごめんなさい…変な事言って…w」
ビビを見ている俺から誤魔化すみてぇに顔を下げたビビが、膝の上に下ろす、まだ酒の入ったコップに目を下ろした。
「………たく…」
その、さっきの一言だけの言葉に対して、呆れが湧く。
ビビに対しても。
「腹になんかありゃあおめぇも危ねぇだろうが」
腹の子も心配だが、それよりこいつ。
こいつ自身に何かありゃあ、腹の子どころじゃねぇ。
それを解ってねぇビビに、呆れと鈍さを思いながら酒を煽る。
「…自分の子供に妬く母親なんざ聞いた事もねぇな」
「う…///w。…し…仕方ないじゃない…///w」
瓶から口を離して口に出すと、ビビの顔が赤みを帯びた。
「……今の私はMr.ブシドーの事好きなんだから…///w…」
「…………」
まさかこいつとこんな風になるなんざ、船を降りてアラバスタに残ると決めた時にゃあ、いや、こいつに告られるまで、思いもしなかった。
言う気の無かったてめぇ。
俺とはただの仲間だったビビ。
こいつとそんな、こんな事を言い合う仲になるなんざ、思いもしていなかった。
「…呑んだら宮殿まで送るからよ」
「、。うん」
宮殿まで送ってんのはいつもの事だが。
「…今日は部屋に泊まらせろ」
「え…」
(…………)
久し振りに湧いた欲。
『お腹に赤ちゃんがいても出来るから∨』と、あいつらにビビの妊娠を知らせた伝書カモメに返ってきたナミからの返事の追記にゃあ、そう書かれてあった。
あの時は何考えてんだと思ったが。
今はその助言がありがてぇもんに思えちまってる。
「…無理はさせねぇからよ…」
いつも無理させねぇようにはしてるが。
たまにタガが外れて無理させちまうから。
「………///…、…ん…///…」
やっぱりまだそっちは恥ずかしげに、小せぇ声で返事してコップを口元に持っていくビビ。
だが恥につられての行動みてぇで、ちぃと俯くその口元にコップを持っていったまま動くこたぁねぇで。
ジワジワと欲を煽られながらも、この欲を出せるのはかなり先になりそうだと思えた。

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