原作サイド─数年後─

□姫懐妊
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ビビの懐妊の話は時間を置かずアラバスタ全土に伝わり、毎日祝福の手紙や送りもんが宮殿に届き、わざわざ遠く離れているナノハナやカトレアからまでこのアルバーナへ祝辞の言葉を言いに国民が訪れる。
その挨拶や、年寄りからは喜びの握手を嬉しそうな笑顔で受けているビビを見ながら、改めてこの国は寛大な国だと思った。
ビビは結婚もせず、未婚の身で懐妊した王女。
他の国ならば、少なからず反発する人間も居るだろうに、この国の国民は、ビビが買いもんに行くとみんながまるで我が事のように満面の笑みでビビを祝福し気遣っている。
『やっぱりあんたが父親だったんだねぇ』
『何となく解ってたよ』
ビビの妊娠が知れ渡ってから、町を見回りしているとあちこちからそう言われた。
この国の国民は、俺ですら非難する事をしねぇ。
鷹の目の後釜に就き、王下七武海、すなわち未だ海賊の立場のままこのアラバスタの用心棒として生き、てめぇにゃ王となる頭も器もねぇとビビとは内縁の夫婦というあやふやな状況をとっている俺を責める事もせず、ビビの妊娠が解った今は、俺を父親として認めるだけで無く、励まし、後押ししてくれる。
『あのビビ様が妙な男を選ぶ筈ないからねぇ。あんたなら納得だ。これからもビビ様とこのアラバスタを頼むよ!!』
以前ビビの妊娠を聞いた日にくだもんをくれた恰幅のいいおばさんに、今度は持ちにくい程のくだもんを持たされて、思い切り背中を叩かれて。
その痛みに思った。
心底思った。
この国の用心棒になる事を決めてよかったと。
ビビを、この国を護る事。
船を下りて、仲間と離れてまで選んだ、俺がてめぇで選んだ、それが最良の道だったと。

かなり目立ってきたビビの腹。
この中で人間が育ってると思うと、なんか信じられねぇ。
妙な感じだ。
細ぇ体つきのビビの腹だけが膨らんでんのも。
(…………)
医師の話じゃ心音が二つ聞こえるらしく、子供二人がこの中に入っているから、余計にデカく見える腹。
「触ってみる?」
「…………」
ビビに促され、ベッドの縁に腰掛けて、ビビの腹に手を伸ばしてみる。
「…………」
服の上から当てた手に触ってくる、奇妙な感触。
中に水が入った風船みてぇな。
羊水ってのが入って膨らんでるらしいから、まさにその通りなんだろうが…。
「どう?」
「……なんか怖ぇ…」
「え?」
ただでさえヤワい『女』の体。
「…ちぃとでも力入れたら破裂しちまいそうだ…」
「………。くすくす」
手を離して言うと、ビビが可笑しげに笑った。
「まだ五ヶ月よ。これからまだまだ大きくなるのよ」
「…………」
生まれてくるまで後五月程。
ほぼ一年も腹ん中で子供を育てて護って。
女ってのはすげぇと思った。

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