ボツ作品部屋

□真章・番外編─珍事件2─
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「くそ〜〜〜〜###」
冗談じゃねぇと男部屋に戻ろうとするとクソコックに蹴りを食らい、飯場に入ろうとするとナミに棒で攻撃され。
完全に甲板に閉め出された。
ルフィは笑ってるだけで助けやがらねぇし、ウソップとチョッパーもナミ怖さにやっぱり味方にゃならねぇで。
逆にあいつらは誰も甲板に出てこねぇから、結局嫌でも俺が見張りをしなけりゃいかなくなり、かなり癪に障りながらも渋々見張り台に上がって、そこに腹立ち勢いのまま座り込んだ。
「大体と言やあ、ビビの奴がくだらねぇ事で怒るから俺がこんな目に合ってんだ…#。出てきたらとっ捕まえてあいつにも見張りやらせてやる…#」
腹減りと、あいつにしては珍しい理不尽な言動に、あいつに向けての苛立ちまで腹の中から沸き上がってきて、海の様子を見ながらも、ドアが開く度にビビかと確認するが、あいつは出てこねぇで。
そうこうするうちにも船はかなり進み、次第に日も暮れてきた。

「〜〜〜う゛〜〜w、寒ぃ…w」
それからちぃと船が進んだ所でまた気候が崩れて、いきなり寒くなった上に、雪まで降り始めてきやがった。
怒鳴った事で腹の減りは益々増し、加えての寒さで腹の虫が大きく鳴く。
海の様子を見ると、あちこちに流氷が浮いていて、完全に真冬の気候の海域に入ったみてぇだった。
相変わらずどんな状況の海域に入るか、あのナミですら予測できねぇグランドラインの海。
こんな気候海域に入るとは考えて無かったから、上着も毛布も持ってねぇで。
「〜〜〜〜〜っっ」
頭と肩に雪が積もってくる。
シャツから剥き出しの腕を抱き込んで、寒さに耐えるのも鍛錬のうちだとてめぇに言い聞かせてはいたが、
「あ〜駄目だっ!w。毛布っw」
あまりの寒さに限界が来て、取り敢えず寒さを何とかしようと、見張り台を降りて男部屋の木戸を開けようとした。
「ん。ああ?」
木戸が開かねぇ。
鍵を掛けてやがる。
クソコックの野郎、あくまでナミに従うつもりか、それともビビに声を上げた事を恨んでやがるのか。
女々しいマネで、絶対的に俺を閉め出す気でいやがるらしい。
「おい開けろクソコック!!。雪降ってんだ!!、毛布寄越せ!!」
ドアを叩いても、中にはウソップとチョッパー、ルフィも居る筈だが、コックも誰も出てきやがらねぇ。
中からはルフィのもんらしいいびきが聞こえる。
「おいルフィ起きろ!!!。おい!!!」
ルフィを起こして毛布を取らせようと声と木戸を叩く音で起こそうとするが、いびきはしたまま。
「くそ〜〜〜〜w」
木戸を壊すかとも考えたが、その木戸を修理するのはウソップで。
あいつは全く関係ねぇし、とばっちりを食らわせるのも何となく考えちまって。
ならビビに毛布と、女部屋に行って、入り口の木戸を叩いた。
「おいビビ!、毛布くれ!。雪降って来たんだ!」
怒ってはいたがもういい加減機嫌も直っているだろうと、木戸を叩いてビビを呼んでいると、
『甘いわよ、ゾロ。ビビを使おうなんて私が許さないんだから。寒いんならトレーニングでもして暖まったら?』
「ぐ…っ。クソ魔女…#」
ドア越しに聞こえてきたのはナミの声。
こういう時にゃあただでさえムカつくあいつの声が、今は男声だから余計にムカつく。
「うるせぇナミ!!、おめぇは黙ってろ!!#。おいビビ!!#。出て来い!!#。いつまで怒ってんだ!!#。いい加減にしろ!!#」
もう腹が減ってトレーニングする体力なんざねぇ。
そしてその腹へりと寒さがナミへのムカつきに拍車を掛け、ビビが出てこねぇ事で更に怒りを増幅させる。
思わずその怒りをビビにも向けながら、なんとかビビを使って毛布を手に入れようと呼び掛けるが、ビビどころか、木戸のすぐそこにいやがるだろうナミも開けやがらねぇ。
「〜〜〜〜〜」
怒鳴っても逆効果だと一旦冷静になって呼び掛けを止め、考えた。
木戸を開けさせる方法。
ビビの機嫌を直させる方法。
寒さに震えながら考えて、
「――――」
『詫びを入れる』
その考えが頭に浮かんだ。
だが俺は何もしちゃいねぇ、完全に今日の事は濡れ衣事だ。
そんな、てめぇは悪くもねぇ事で詫びなんざ入れたくはねぇ。
「〜〜〜〜〜」
だが腹へりで体温も下がり、体力も落ちている今の状況じゃ、マジで凍死しかねねぇ。
剣士と剣を交えて死ぬならまだしも、寒さに負けて死ぬなんざ、それこそ恥まみれな死に様だ。
そんな死に方するよりは。
みっともねぇ死に方で恥を晒すよりは。
多少プライドに傷が付く程度の方がまだマシだ。
「〜〜〜悪かったよビビ…w。謝るからマジで開けてくれ…w。マジで今日だけはヤベェんだ…w。せめて毛布だけでも渡してくれ…w」
女部屋の木戸が床にあるから、ほぼ土下座みてぇな体勢で詫びを入れてる今のてめぇ。
屈辱は感じるが、凍死の危機にもうそれどころじゃなかった。
「なぁビ…」
『あんた、ビビが怒ってた理由解って謝ってる?』
(ぐ…っw。クソ魔女…w)
『解ってないでしょ。謝れば済むと思ってるだけでしょ。お生憎様、ビビだけならほだせられたでしょうけど、私がいるの。そんな口だけの謝罪で誤魔化せないわよ』
「〜〜〜〜〜っ#」
濡れ衣事にプライド投げてまで詫びたってのに、魔女の邪魔で完全に無駄になり。
「ああそうかよ!!#。だったらそうやってずっとムクれてろ!!#」
ナミに邪魔された事と孤立無援の怒りを木戸越しのビビにぶつけ、怒りに任せて雪の降り積もる甲板に出た。

「〜〜〜〜〜〜…www」
見張り台に戻って一時間、縮こまって体を抱き込み寒さに耐える。
(〜〜〜マジで死ぬかもしれねぇ…w〜〜〜)
さっき以上にまた頭にも肩にも雪が積もって、もう手足の先の感覚すらねぇ。
(〜〜〜ん…w)
ドアが開く音がした。
が、今の体勢をちぃとでも崩すと一気に寒さにやられそうで、もう体も動かせねぇ。
「〜〜〜〜〜w」
食いしばる歯が勝手にガチガチ鳴る音の中、足音が聞こえて。
それが近付いてくる。
寒さに耐えてて強張っちまった首をなんとか動かして、そこからは目だけで体の横の入り口穴から下を見ると、誰かが上がってきている。
(〜〜〜ビビ〜〜〜)
暗くて見えねぇが、黒い塊の後ろで長いもんが揺れてのがうっすらと見えて。
それが髪の毛だと解って。
登ってくるにつれて、黒から色が見えてきたそれは、思った通り、上着を着込んだビビだった。

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