ボツ作品部屋

□真章・番外編─珍事件─
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『真章・番外編─珍事件─』

「どうだ、ルフィ…。釣れたか…」
強制断食三日目。
どうやら完全に魚のいねぇ海域に入っちまったらしく、辺りにも全く島の影も見えねぇ。
「ん〜…なんとか二匹だけは捕れたけどよぉ〜…。こんな小せぇのだぁ〜…」
腹へりの為に、俺と同じく、いや、大食いな分俺より声に力無く返してきたルフィが見せてきたバケツの中をしゃがんで見ると、マジで腹の足しにもならねぇような6cm程の小せぇ紫の魚が二匹。
「……仕方ねぇ…。ねぇよりゃマシか…」
そう納得して、バケツを持ち上げて立ち上がる。
「解ってるな、ルフィ…。先ずは女が優先だぜ…」
「ん〜〜…w、しょうがねぇなぁ…w」
勝手にコックが決めたルールだが、ルフィも一応承知はしているらしく、文句も言わずに大人しくしている。
とはいえ久し振りに見た魚に、益々腹へり感が増しながら、その魚二匹が入ったバケツを持って飯場に向かう。
「おい、コック。魚穫れたぞ…」
「ああ…?。なんだ、こんな小せぇのたった二匹かよ…。まぁいい、こんなでもねぇよりゃマシだな。なら早速ナミさんとビビちゃんに…」
渡したバケツを受け取って、コックが調理台の方に歩いていく。

「いいの…?。私達だけ食べて…⊃」
「構わないわよ、ビビ。レディファーストは当然なんだから。いただきまーす∨」
「ん…⊃」
出来たメシを前に、遠慮がちなビビと、遠慮無く食い始めたナミ。
「いいから早く食えよ。さっさと食わねぇと、ルフィが奪いに来るぞ」
「…うんw。じゃあ…いただきます…w」
食ってる所を見てっと俺も余計に腹が減るから、飯場から出て、腹へりの紛らわせにトレーニングをする事にした。

「ふ〜…」
『きゃあっ!!』
(ん?)
腹へりに力が入らねぇながらも何とか二時間掛けて8032回まで鉄塊を振った時、後部デッキの方から誰かの声がして。
(?。誰の声だ?。今の)
確か後部デッキで昼寝していたのはビビで、今のも多少ビビの声に似てはいたが、ちぃと低いっつうか、なんか違っていて。
「なんだぁ…?。誰の声だ…?、今の…」
「さあ…」
まだ釣りをねばっているルフィと顔を見合わせて、見に行ってみるかと鉄塊を置いた時、
「ルフィさん!!w、Mr.ブシドー!!w」
焦った様子で角から走り出てきたのは、ビビだった。
……が。
「「!!!?」」
一瞬ビビに見えたそいつは、なんかビビじゃなく、似てるが違う。
「だっ、誰だてめぇ!!w。どっから入りやがった!!w」
刀に手を掛け、ルフィと共に身構えた俺達の目線の先に居るのは男。
ビビには似てるが、その体格は細いながらも完全な男で。
「あっ!?。まさかボンちゃん!!?」
「なにっ!?」
ルフィが言ったのは、あのバロックワークスのNo.2、マネマネの実の能力者、オカマ野郎の名で。
まさか、なんで奴がと、刀を抜きかけた時、
「違うわ!!?。私よ!!w、ビビよ!!w」
「「ビビ!!?」」
その男が言った事に、ルフィと二人で驚いた。
「嘘つけ!!。ビビが男なわけねぇだろ!!。誰だてめぇ!!、ビビをどうしやがった!!」
「!!。きゃあっ!!!」
「!!。待てルフィ!!」
咄嗟にルフィの伸ばした腕を掴み引き、ビビらしい男に当たるギリギリでなんとか拳を止められた。
「なんだゾロ!!。なんで止める!!」
「落ち着けルフィ!!。多分あいつはビビだ!!」
「何言ってんだお前!!。ビビは女だぞ!!、男じゃねぇ!!」
「んなこた解ってるよ!!。だがあいつはビビだ!!」
「Mr.ブシドー……」
ルフィに顔を向けていて、デッキの上からした声に、ビビ…らしき男を見た。
「…………」
確かに体は男だ。
だが仕草はまんまあいつの仕草。
口調も、雰囲気も、確かにビビのもんだった。
「どうしたんだ〜?、お前ら…。腹が減ってるってのに元気だなぁ…。…………」
「…………」
男部屋から出てきたウソップとチョッパー、その二人がビビを見たまま動きを止め。
「ウ…ウソップさん…?w。トニーくん…?w」
「「……ビビ…か…?…」」
「う…うん…w」
「「Σええええーーーっっ!!!?」」
呆然と自分を見る二人に声を掛けたビビに、二人が呆然としたまま確認し。
そしてビビが頷くと、やっと我に返ったみてぇで、ウソップとチョッパーが同時に大声をひっくり返した。
「…なによ、うるさいわねぇ…。おなかすくの紛らわせる為に昼寝してるのに、眠ってられないじゃない…」
「あ、ナミw「「「「!!!?」」」」」
ドアを開けて出てきたのはナミ…に限りなく似た男。
「「「「「――――――――」」」」」
男に変わったビビも含めて、五人で唖然と絶句してると、
「ん?。なによ、みんなで変な顔して……。………ビビ…?」
ぐるりと俺達を見回したナミが、横に居た最後に見たビビの異変に気付いたらしく。
「ナ…ナミさん…?w」
ビビも確認するみてぇに、ナミの名を呼んだ。
「Σあんたどうしたの!!?w。ていうか、ほんとにビビなの!!?w」
「…お前こそほんとにナミなのか…?w」
てめぇの変わりようにまだ気付いてやがらねぇナミに指差して言うと、
「?。なに言ってんのよw。私が誰だって……Σえええっ!!?w」
俺の指の指す先を辿っててめぇの体を見たナミが、ようやくてめぇの体の異変に気付きやがった。
「ちょっと!!w、なによこれ!!w。どうなってんの!!?w」
「どうした、ナミさん。何を騒いで……―――――」
こいつも昼寝で腹へりを紛らわせてやがったのか、今頃男部屋から出てきやがったコックが、ナミとビビを見て無言になる。
「ナミさん!!!?w、ビビちゃん!!!?w。一体どうしちまったんだ!!!?w、その姿は!!!w」
さすが、自他共に認める女好き。
一目だけで二人をナミとビビだと見抜いたのか、俺達の中で一番の焦りっぷりでおたついてやがる。
「…サンジが認めたって事は、あれは間違い無くナミとビビらしいな…」
「うん…」
よっぽどコックの女を見る目は信用されてるらしく、コックも騙されてるって可能性を誰も疑やぁしねぇ。
かくいう俺も、あのアホコックの反応であの二人がほんもんのナミとビビだと確信したわけだが。

「でも…どうしてほんとにこんな事に…?」
飯場に集まった中、男声のビビの言葉で始まった原因究明の会議。
腕と足を組む俺の横で、合わせた膝の上に手を置いて困惑顔のビビ。
たまに見る仕草だが…、
(……………)
体が男なだけになんか違和感。
「原因があるとすれば…、食べ物かしら…」
(……………)
顎に手を当てて考えるナミ。
仕草はいいが、見た目と声が男で口振りが女のままだから、やっぱこっちも微妙に違和感がある。
「食べ物?」
「さっき魚食べたじゃない?。私とビビだけで。あれが原因じゃないかしら」
「なにい!!?。お前らだけで魚なんか食ったのか!!?。ずりぃぞお前ら!!。だからバチが当たってそんな姿に――!!」
「レディファースト#」
「―――───」
「「「「「……………w」」」」」
ナミに文句を言って脳天に拳を食らったウソップが机に突っ伏す。
男になったからか、ナミのその拳固も威力が増してやがる気がする。
「さ…魚ってどんなのだ…?w」
チョッパーが、びびりながらナミに訊き、
「なんだか紫の魚だったわよね、ビビ」
「ええ、このくらいの大きさの、随分ヒレが大きい魚だったわ」
ナミの問いに、ビビが指で大きさを表して、具体的に説明する。
その指も華奢ながらも女らしさは無く、ちぃと筋張った、見るからに男の指。
「わかった、紫でヒレの大きい魚だな。ちょっと待っててくれ」
二人の話を聞いて、チョッパーが席を立ち、しばらくしてやけに厚さのある本を持って戻ってきた。
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