─不良と優等生─

□弁当
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(は〜…)
ビビのクリームコロッケ一番最後に食えばよかったと、初めて弁当の事で後悔しながら弁当殻を片付ける。
横のビビはあんなぽっちの飯の量をまだ食っている。
それを見ながら、もしかしてあのエビフライでモタレてんじゃねぇかとか、思ったそんな考えに気まずさを感じたり。
「ごちそうさまでした」
「…悪かったな…w。エビフライw」
「え?」
やっと食い終わって手を合わせ、弁当殻を片付け始めたビビに詫びた。
「油っこかっただろw。ボソボソだし…w」
こいつが自分で取ったなら詫びる必要もねぇが、ありゃあ食えと俺が半ば押し付けたもん。
本来ならこいつは食わずに済んだ、美味いクリームコロッケを食ってただけで済んでたんだから、余計な不味いもん食わせちまった事を詫びた。
「でも店屋物だし。初めてコンビニのお弁当食べたからなんだか新鮮でした」
笑って答えるビビの表情には俺に気を使っている様子は出てねぇが、それでも俺の言葉に否定しねぇ所をみると、やっぱ気に入りはしなかったんだろう。
「…………w」
まだ申し訳なさはあるが、それでもまだ笑って言ってきたビビの態度にゃ救われて。
「…だがマジで美味かったぜ…。俺は手料理食った事がねぇからよ、なんか感動しちまった」
「え?。手料理食べた事ないんですか…?」
詫び代わりに、さっきの卵焼きとクリームコロッケの世辞じゃねぇ感想を言うと、ビビがちぃと驚きの顔をして。
「ああ」
さっきビビのお袋さんの事訊いちまったし、詫びのついでにてめぇの身の上も言う事にした。
「俺はみなしごでよ。生まれたてで養護施設に捨てられてたらしいんだ。そこは給食で、その給食もどっかのセンターで出来たもんが運ばれてくるもんだったし、だからその人間が一から作った手料理って言えるもんを食ったのは今日が初めてだ」
「……お店に入ったりは…?。お店ならシェフが…」
「バイトの身が店で飯食ってられねぇよ」
「…………」
いかにもいいとこ育ちの考えに笑って言うと、ビビが黙って俺の顔を見ているだけになった。
「……じゃあ私、明日からゾロさんのお弁当も作ってきます」
「え…?」
俺を見ているビビを見ていると、ふいにビビから思っても無かった事を言われて。
「お昼のお弁当代だけでも浮くでしょうし」
「いやっw。そういうつもりで言ったんじゃねぇしっw」
「お弁当箱なら実家に父のがあるから。大きいし深さもあるから一つでも足りると思います」
「そうじゃなくてっw。弁当がデカけりゃ材料もそれだけ要るだろっw」
笑って言ってくるビビに焦りながら返す。
ちぃとでも金が浮くのはありがてぇ。
何より、あのうめぇ弁当が毎日食えると思うと、断るのは正直勿体ねぇw。
だがこいつも俺と同じ一人暮らしらしく、金銭的に余裕がねぇんじゃねぇかと、てめぇの暮らしと重ね合わせて考えて、その言葉を受けるのを躊躇った。
だがビビはにこにこと笑っていて。
「材料費の事は心配しないでください。父の仕送りで暮らしてますが、毎月余りすぎてちょっと困るくらいだったから。人が喜んでくれる事に使うのなら、父も喜んで許してくれる筈です」
「………w」
「?。………あ…」
「あ…?」
それでも返事出来ねぇでいた俺を不思議そうな顔で見ていたビビ。
その顔が何かに気付いたみてぇな表情に変わった。
「ご、ごめんなさいw。私ったら先走って押し付けるみたいな事言ってw。家の人達以外で男の人に料理の事誉められたから嬉しくてついゾロさんの迷惑も考えないでw」
「え」
焦りながら言ってきたビビの言葉に一瞬気が飛んで。
「いや…w、迷惑なんかじゃねぇぜ?w、別に…w」
焦るビビに、そんな事を思っていた訳じゃねぇ事を言った。
「つぅか、あんな美味い弁当食えるんなら願ってもねぇ話だけどよ…w」
「…………」
「……マジでいいのか…?w。頼んじまってw」
「………。はいっ、もちろん」
「…じゃあ頼む…//w」
女に弁当作ってもらう事になるなんざ思った事もねぇで。
なんか無性に照れくさくなって、なんかむず痒い気分に後頭部を掻きながら、それでも笑って承諾してきたビビを見ながら、内心明日の弁当が楽しみだった。

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