─学園ラブ─

□家族・過去
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「今日はあの飯屋にするか」
「うん」
「おう」
ウソップとナミに言い、その二人を連れて夜の車道を渡る。
今日見付けたのは、『バラティエ』ってデケぇ高級レストラン。
そこで今日の飯を探す事にした。
同じ店でやると目を付けられて、捕まるか、最悪施設に連れ戻されちまう。
あんな所で暮らすのはもうゴメンだ。
俺達は自由に生きる。
自由に生きて幸せになる。
その為に逃げ出した。
「今日はいいもん捨てられてるかな」
「この前の骨付きお肉おいしかったもんね。またあんなのあればいいね」
美味いもんを量食えるのは高級レストランに限る。
そんな店の客は舌が肥えてやがるし、贅沢な金の使い方をするから、飯も平気で残す。
そんなだから、高級レストランは腹を満たすのに最適だ。
客が最も多い、そして一日分のゴミが溜まる夜が狙い時。
昨日はナミがスってきたリンゴ一個を三人で分けた分だけだったから、豪華な晩飯を期待してゴミ箱を開けた。
「なんだ、何もねぇぜ、ゾロ」
「…………」
今日は当てが外れた。
ゴミ箱の中は食えねぇ発泡スチロールやらダンボールばかりで、食い物のにおいすらしねぇ。
「なんだ?、お前ら。何やってんだ」
「「「!!」」」
それでも肉の一欠片くれぇはねぇかとゴミ箱漁ってると、後ろからした声に驚いて。
咄嗟に振り向くと、左目を髪の毛で隠した金髪のガキが重そうにゴミ箱を下げて立っていた。
俺と同い年に見えるそいつは調理服を着ていて、だがこんなガキがこんなレストランで働ける訳はねぇし、このレストランのガキで、店の手伝いをしてるんだと思った。
「//////!!」
「あ?」
そいつを見てて、急にそいつの顔が真っ赤になって。
「か…かわいい…//////」
「?。…………」
そいつの目線を辿ると、その目はナミを見ていて。
ナミに見とれてやがるみてぇなそいつの、随分重そうに持ってやがるゴミ箱に、食いもんが詰まってると直感した。
「そのゴミ箱よこせ!!」
「あ?。うわっ!」
奪おうとした勢いでゴミ箱を弾き飛ばして。
「──………」
地面に落ちた勢いでフタが開いて、中から出たのは氷クズ。
「なんだ…?、お前ら腹減ってんのか…?」
「っ、うるせぇ!!。お前にゃ関係ねぇ!!」
「…関係はねぇがよ。残飯目当てに来たんだろ?」
「っ」
小綺麗な見た目の金髪に、比べられてるみてぇで悔しくて、その悔しさに歯を食いしばる。
「このレストランじゃ客の残した飯は従業員が全部食うんだ。だから米粒一つでも残りゃしねぇし、食材も、魚の骨まで全部使うから生ゴミだって出ねぇ」
「「「…………」」」
「…腹減ってんなら待ってろ。なんか持ってきてやるから」
(え…)
「「え…」」
落ちたゴミ箱を拾って言ってきた金髪の言葉にウソップとナミも驚いた声を出した。
「お…俺達金持ってねぇぞ…w」
「…見りゃ解る。いいよ。腹減らしてるやつにメシ食わせるのがコックだからな」
(…………)
ウソップが言った事に返してきた金髪の顔は俺達を見下してる顔じゃなくて。
言ってきた事と同じ、人を思いやる真面目な顔をしていた。
「おいサンジ!!!。何してんだ!!!。ゴミ捨てたらさっさと戻ってこい!!!」
(!!。やべぇ!!)
「ゾロ!!w」
「おう!!、行くぞウソップ!!、ナミ!!。逃げるぞ!!」
「あっうん!!」
「おうっ!!w」
「あっ!!。おっおい!!」
店の中からしたオッサンの怒鳴り声に、捕まりゃまた施設に戻されるとウソップ、ナミとその場から逃げた。

「腹へったな…」
「うん…」
二週間前に拾ったテントの側で、三人で頭を寄せて円になって寝そべって。
空に光る星を眺める。
「星が金平糖になって降ってくればいいのにな」
「あはは。だね」
星を見て腹のへりを紛らわせてんのに、ウソップが余計な事言うから余計に腹が減って。
でもこいつらがいるから、その腹のへりもちょっとは紛れる。

「おいナミ!!。しっかりしろ!!」
「やべぇぜゾロw。このままじゃナミ死んじまうぞw」
ナミが熱を出した。
すげぇ体温が高くて、呼んでも目を瞑ったまま苦しそうで。
「ウソップ!!、医者に診せにいくぞ!!」
「おう!!w」
ナミをおぶってこの町で一番デケぇ総合病院に駆け込んだ。
「なんでだよ!!!」
「お前ら医者だろ!!!。医者は患者を診るのが仕事じゃねぇのか!!!」
俺達がガキだから、金も持ってねぇから、金がねぇなら診られねぇって、医者のくせにナミを診るのを拒みやがる医者に、ウソップと食い下がる。
早くしねぇとナミが死んじまう。
なのに医者は迷惑そうな顔しやがって。
「どうしたんだ?」
「!!。!!」
食い下がってたら後ろから声を掛けられて、咄嗟に後ろを見たらすげぇデケぇニイちゃんがいた事に驚いた。
「なんだ、その子病気か?」
「ひどい熱…。どうしたの?、あなた達医者でしょう?。診てあげないの?」
水色の髪の毛のニイちゃんのその後ろから、今度は黒い髪の毛のネエちゃんが出てきて。
俺がおぶってるナミの額に手を当てて医者を見上げた。
「あ…⊃。いやこの子達は治療費を持っていなくて…⊃。いくら医者でも治療費を払えない患者を診るのは…⊃」
「「〜〜〜〜〜っっ!!」」
「だったらこの子の治療費は俺達が払う。早く診てやってくれ」
(え…)
俺の背中からナミを抱き上げたニイちゃんの言った事にウソップと驚いて、医者にナミを渡したニイちゃんと、そのナミを受け取った医者を見上げていた。

「…ナミ…」
「ナミ…、しっかりしろ…」
ベッドで苦しそうに寝るナミは、でも点滴を受けて、さっきよりはほんの少し表情が穏やかになってる気がする。
「…おめぇら兄弟か?」
「…………」
後ろでゴツいニイちゃんが訊いてきて、それに首を振った。
「…お父さんかお母さんは…?」
今度は黒い髪の毛のネエちゃんが訊いてきて。
「…いねぇ。俺達は…」
「ウソップ」
言いかけたウソップを止めた。
施設から逃げてきたなんてバレたら、また連れ戻される。
だから余計な事を言おうとしてるウソップを止めた。
「…訳ありみてぇだな」
(…………)
「こんな小せぇ子供がよ、力合わせて生きてんだな」
(…………)
俺の横に来てナミの頭を撫でるニイちゃんに、その優しい手つきに、施設のヤツらや町の人間とは違うもんを感じた。
(…………。…………)
そのニイちゃんを見上げて、ナミを見る。
そのナミから、またニイちゃんを見上げる。
人の良さそうなニイちゃんとネエちゃん。
だからナミだけでも引き取ってくれねぇかと思った。
ナミは女だから、父親と母親がいる方がいい。
ちゃんとした家で育った方がいい。
そしてこの二人なら、頼めばナミを引き取ってくれる気がした。
ナミをちゃんと幸せに育ててくれる気がした。
「…」
「フランキー」
(、⊃)
ニイちゃんにナミを頼めねぇか言おうとした時、ニイちゃんの名前らしいのを言ったネエちゃんに、ニイちゃんが振り向いた。
「…おう。構わねぇか、ロビン」
「ええ」
「「?。………」」
何か相談したのか、でも何も言わねぇで承諾し合った二人を、俺と同じように不思議そうに見上げるウソップと二人でニイちゃんを見上げてると、ニイちゃんが俺とウソップを見下ろしてきた。
「おめぇら、俺達の家に来ねぇか?」
「「え…」」
急に言われた言葉。
その言葉にちょっと驚いて出た声がウソップと同じになった。
「俺は大工でな。おめぇらの食い扶持くれぇなら稼げるくれぇの甲斐性はあるつもりだぜ。どうだ、うちの子にならねぇか」
「「…………」」
「私達はね、今日はここに不妊治療に来たの」
「…ふにん治療…?」
「赤ちゃんを作る治療よ。もうずっとその治療を続けてるの。でもどうしても出来なくてね」
意味の解らねぇ言葉の意味を訊いたら、ほんの少し笑いながらも、どっか寂しそうに言ってきたネエちゃん。
その時、俺の頭に、そしてウソップの頭にもニイちゃんがデケぇ手を乗せてきた。
「おめぇらがうちの子になってくれりゃあ、家ん中が賑やかになりそうだ。な、この嬢ちゃんも一緒にうちの子になってくれねぇか」
「「…………」」
ニッと笑って言うニイちゃんをウソップと見上げていて、そのウソップと顔を見合わせた。
そしてその顔をナミに向けた。
ナミ一人だけ頼むつもりだったけど、ナミ一人だけだったら寂しがるかもしれねぇ。
ナミの治療費も出してくれたし、悪い人間にも見えなさそうだから。
「うん…」
治療費の礼としてその二人の子供になる事を決めた。
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