─学園ラブ─

□続・服
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「なんでてめぇがビビちゃんに服なんざプレゼントしてんだよ…#」
(……ち…w)
しくじった。
ビビが見せた服。
それに訝しみを持ちやがったサンジ。
俺がビビに服どころか物をやった事なんざ、今までからして無かった事で。
それをやった事を、ビビが服を見せた事でサンジが訝しみを持ちやがった。
「ああ゛?。答えやがれ…、クソマリモ…#」
俺の胸倉掴んで下から今まで見た事もねぇ形相で睨み付けて来やがるサンジに、その手を掴みながら、だが振り解く事も理由を言う気にもなれねぇ。
「ミ…Mr.ブシドー…w」
ルフィ、ウソップ、ナミも居る部屋の中、だってのに物音一つしねぇ妙な静寂の中でしたビビの声に目だけを向けると、ルフィやナミ達とこっちを見ているビビが見えて。
心配げな不安げな、そして焦りの色も浮かべて手を胸の前で握り合わせているビビから、またサンジに目を戻す。
そのサンジの目もビビに向いていたが、またすぐに俺に戻ってきて。
訝しみと怒りの混じり合ったその目を、また見返す事になった。
(……くそ…w)
こいつと知り合って十数年、ここまで立場が劣勢になったこたぁ無かった。
その初めての劣勢の立場が悔しく、そして今朝ビビにこいつらにも服を見せていいかと訊かれた時に承諾しちまった事を心底悔いた。
あの時マジで似合っていたから、そしてビビがちぃと嬉しげだった事に何となく気持ちが緩んじまって、つい深く考え(られ)ずに返事しちまったが。
こうなるこたぁ予想出来たってのに、そこまで考えが及ばなかった。
「おらさっさと吐きやがれクソマリモ…#。てめぇがビビちゃんにプレゼントなんざ、てめぇビビちゃん狙ってやがんのか…#」
「ち…w」
こいつはルフィの紹介でビビが俺達のグループに入ってきた時から紅一点のビビをアイドル化してやがって。
ビビに他の野郎が近付く度に、一番怒り狂ってやがったのもこいつで。
てめぇをプリンス気取りで、ビビをガードしてやがった。
だがナミにも好きだの何だの言い寄ってやがるくせに、ビビに男が出来るのも許せねぇっつう、女に見境がねぇのが俺がこいつにムカつく理由の一つでもある。
「ミ…Mr.ブシドー…w」
「────w」
また横から呼んできたビビに目を向ける。
「兄貴、もう隠してるのも限界じゃない?。兄貴の隠してる理由も解るけど」
(…………w)
そのビビの横から言ってきたナミ。
ガキの頃からこのアホコックの事を知ってやがるから、あいつにゃ言うなの俺の言葉もウソップと共に頷いて今まであの言いたがりのナミですら黙っていた。
俺がビビと付き合ってるなんて事を知りゃあ、この野郎はどこまでブチ切れしやがるか。
それで無くともてめぇはナミにフラれ続きでその度に兄貴の俺に愚痴と八つ当たりをかまして来やがるってのに、てめぇのアイドル状況のビビが俺と付き合ってるなんざ知りゃあ、その怒りはとんでもねぇもんになるだろう。
その怒り程度の事は余裕で受けて立ってやるが、これから先もうるさく言いやがるだろう事には辟易する。
だから言わねぇでいた。
それにわざわざ言う事でもねぇ。
「隠してるってのはなんだ?#。ナミさんは知ってんのか#。…まさかてめぇ…#」
「────」
ナミの横入りでほぼバレたみてぇだ。
更に怒りを含んで低さを増した声でそれが解った。
「…Mr.ブシドー…w、もういいんじゃない…?w。もう隠してるのも気が重いし…w。サンジさんとルフィさんには、私ほんとに知っておいて欲しいんだけど…w」
(──)
ビビに黙っておけと言ったのは俺だ。
ビビはグループ仲間のサンジとルフィにゃ黙ってるのは心苦しいと言っていたが、だがこのアホコックがこうなるだろうって事も付き合いの中で解ってるから、そしてグループとしての均整が崩れるかもしれねぇからと、ビビも心苦しいながらも同意して頷いて。
二人して今まで黙ってきたが、確かにこりゃあもう限界だろう。
「──解ったよ。言やぁいいんだろ、言やぁ」
言うと決めりゃあもう躊躇もねぇ。
足が来ようがぶちのめし返すと、ずっと掴んでいた、胸倉掴んでやがるサンジの手を振り退けた。
「付き合ってんだよ、俺とビビは」
「な…」
解ってたんじゃねぇのか、それとも改めて俺の口から訊いて、確証めいた疑いが事実になった事への驚愕か、軽く目を見開いて声を漏らしたサンジ。
「…いつからだ…」
「……いつ……」
(…………)
いつからだったか思い出せねぇ。
確かバレンタインの1…いや2ヶ月前だったか…。
「バ…バレンタインの1ヶ月半くらい前に…w」
正確に思い出せねぇでいた俺に代わって、横からおずおずと言ってきたビビ。
「…ビビちゃん…」
そのビビを見ながら、どこか哀愁の漂う表情と声で漏らしたサンジの顔がまた俺に向いてきた。
「…どっちから告った」
「俺だ」
「…ビビちゃんは黙って受けたのか」
「…まぁかなり考えてはいたがな」
「…………」
「…………、」
ふいに背を向けたサンジに何だ?と、怒鳴ってもこねぇ事に疑問を感じた。
「…おい」
「────」
(…………)
声を掛けたが振り向きもしねぇで、思い切り背中に落胆を浮かび上がらせながら部屋を出て行ったサンジのその後ろ姿に、今までにねぇあいつへの違和感を感じる。
「だ…大丈夫かしら…w、サンジさん…w」
「………w。…あの野郎が大人しく引き下がりやがったからな…w」
ふとした事で突っかかって来ては引き下がらねぇあいつが黙って身を引いた事が、妙な感覚を煽る。
よっぽどビビに男が出来たのがショックだったらしく、その上その相手が俺だって事が相当な衝撃だったのか。
まぁその気持ちも解らねぇでもねぇが、だからこそ突っかかってこねぇ事が違和感を感じさせる。
「追い掛けた方がいいんじゃねぇか?、兄貴w。あんなサンジ見たの初めてだぜ?w」
「今質(たち)の悪いのに絡まれたら八つ当たりすごくない?。病院送りじゃ済まないわよ?、相手が」
「…………w」
あいつは元々不良くせぇ質だから、大丈夫だろとも言えねぇで。
あいつを昔から知ってるウソップとナミのその言葉が多少ながらにある心配に拍車を掛けてくる。
"ドゴオ……ン!!!"
「「「「「Σ」」」」」
"…………"
「「「「「…………w」」」」」
遠くで何かが破壊された音。
その後の静寂に全員で無言になる。
「ミ…Mr.ブシドー…w」
「…もう手遅れだw、ありゃあw」
止めた所で今更止まらねぇ。
てか止めりゃあ余計に油を注ぐのは解りきっている。
あいつの性格は知りたくもねぇのにもう知り尽くしちまってるから、今は勝手に怒りが静まるまで、あのままほっとくしかなかった…w。


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