─学園ラブ─

□一夜
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(やったあ!!!)
静粛を重んじる剣道の試合。
優勝しても、その喜びを声には出せないで。
日本大会九回連続優勝の偉業を成し遂げたMr.ブシドーの、そして私が初めて観戦したMr.ブシドーの剣道の試合での優勝に湧き上がる喜びを、心の中で爆発させた。
「おめでとう!!、Mr.ブシドーっ!!」
「おう。ま、当然の結果だがな」
試合が始まる前の緊張もしていない堂々とした態度のまま、戻ってきたMr.ブシドーが自信に満ちた態度で返してきた。
「おめでとう、ゾロ」
「やったな兄貴!!。これで九年連続優勝だ!!。来年優勝すりゃ十年連続だぜ!!」
「今年はビビも見てたし、余計に張り切ってたんじゃないの?、兄貴?♪」
「がははははっ!!。なら今年も祝いだ!!。ロビン!!、今日はいつも以上の極上の飯頼むぜ!!」
「ええ解ってるわ、フランキー。ビビちゃん、あなたも勿論来てくれるわよね?」
「あ…」
『はい』と言いたかったけど、昨日のMr.ブシドーとの約束に、その返事を躊躇った。
昨日のデートの帰り道、Mr.ブシドーと約束したから。

"「Mr.ブシドー。明日の剣道大会、優勝したらお祝いなにがいい?」
「ん…。…そうだな……」
Mr.ブシドーの剣術に勝てる人なんていないだろうから、優勝前提で訊いた私に、Mr.ブシドーも当然みたいにお祝いの内容を考え出した。
「なら…」
「?。……Mr.ブシドー…?…」
空を見ながら考えてる様子だったMr.ブシドーの目がちらりと私に向いて、そのまま足を止めて顔を向けてきたMr.ブシドーに私も足を止めた。
「……朝まで二人きりで居てぇ……」
「………。…うん…///」
今まで一度もMr.ブシドーと一晩一緒にいた事なんてないから、その言葉にちょっと恥ずかしく思いながらも返事をした。"

「…………」
その約束があるんだけど、お父さんもお母さんも祝う気満々そうで、しかもそんな朝帰り(多分何もないだろうけど)の宣言みたいな約束をしてるなんて言い出せなくて。
「…悪ぃがむぐっw」
お父さんお母さんは祝いムードで、でもそれを断ろうとしたMr.ブシドーの口を慌てて塞いだ。
『ダメよMr.ブシドーっw⊃⊃。せっかくみんなお祝いしてくれる気になってるのに断ったりしちゃ悪いわっ?⊃⊃』
『…………w』
みんなに聞こえないように小声でMr.ブシドーに言うと、Mr.ブシドーがなにか言いたげに目だけを私に向けてきて。
言いたい事は解るけど、お父さんお母さんの気持ちをふいにしちゃいけないと、なんとかMr.ブシドーを説得してMr.ブシドーの家にお邪魔した。

「さ、じゃあ始めましょうか」
テーブルの上にはロビンお母さんの手料理のご馳走が並んで、いつにも増してすごく美味しそうで。
「ビビちゃんもお手伝いありがとう。もうあなたも座って食べなさい」
「はい」
Mr.ブシドーとナミさんの間に座って、
「じゃあゾロ」
「おう、ゾロ」
「「兄貴」」
「Mr.ブシドー」
「「「「「優勝おめでとう!!」」」」」
「…おう…//」
ちょっと照れくさそうなMr.ブシドーの返事を合図に、また賑やかな食事が始まった。

「先外出てろ」
「あ、うん」
ご飯もご馳走になって、8時になった帰り際の玄関前でMr.ブシドーが私を促して、2階の階段を上がっていった。
「ビビちゃん、またいらっしゃいね」
「はい。お邪魔しました」
「ビビまたね」
「うん、ナミさん」
ロビンお母さんに軽く頭を下げて、ナミさんに手を振って返した時、Mr.ブシドーが二階から下りてきて。
「ゾロ、ちゃんとビビちゃん送っていってちょうだいね」
「ああ。解ってる」
(…………)
お母さんに返事を返したMr.ブシドーは、今日は泊まって帰るとも、なにも言わないで。
手にも荷物もなにも持ってなくて。
「…………」
「先自転車出してろ」
「え?。…Mr.ブシドー?」
そんなMr.ブシドーを不思議に思いながらも外に出て、玄関ドアを閉めたMr.ブシドーが家の裏手の方に歩いていくのを不思議に思いながら見ていると、
「?」
戻ってきたMr.ブシドーの片手には、なんだか随分大きなボストンバックが持たれていた。
「…なんであんな所に…?w」
どうやら泊まる用品が入ってるらしいけど、でもそれにしては随分大きいボストンバックだし、どうしてあんな所から?wと不思議に思いながら訊いたら、
「今、部屋から落とした」
自転車のカゴに入いる大きさじゃないボストンバックを肩に掛けたまま、Mr.ブシドーが自転車を出しながら言ってきた。
「二人だけで一晩過ごすなんてバレたらうるせぇからな。俺じゃなくおめぇの身を心配して」
「…………w」
Mr.ブシドーが家族に信用されてないって意味なのか、家族の人達の性格を解ってるからの気回しなのか、でもどっちにしろやっぱり二人だけで一泊するって事はそれだけ重大な事なんだろう。
「ほれ行くぞ」
「あ、うんw」
自転車に跨がったMr.ブシドーに自分の自転車に乗って、走り出したMr.ブシドーの後をついてペダルを踏んだ。

(…………)
Mr.ブシドーについて走る夜道は私もよく知ってる車道。
でもその道は私の家とも、Mr.ブシドーのアパートとも方向の違う、段々人通りの減る町外れに出る方向で。
(え…w。まさかMr.ブシドー…w)
その町外れの方角の道にあるのはラブホテル街で。
まさか二人きりで過ごす場所ってラブホテル?wと、前を走るMr.ブシドーを見ながらちょっと想像外と見損ないの感を感じた。
まさか朝まで二人きりで過ごしたいっていうのは"そういう意味"で言ったの?wと思って。
そりゃせっかくの優勝のお祝いだから、"そういう事"でお祝いって事は、男子なら考えるかもしれないけど。
でもMr.ブシドーは違うと思ってた。
Mr.ブシドーは何かしら自分に信念を持ってて。
いつもストイックで、だからそんな欲求もないと思ってたし、そんな望みを向けてくるとも思ってなかった。
(────w)
そりゃ好きな人がそう望んでるなら応えてあげたいとは思う。
思うけど、やっぱり私にはそこまでの気持ちはまだない。
今はまだMr.ブシドーとは普通の恋人でいたい。
体を重ねたら、何かが壊れる気がするから。
今のMr.ブシドーとの関係と、違う関係になる気がして。
(…………)
それにラブホテルなんて…w。
応える気はまだないけど、でも初めての夜はやっぱりちゃんとした、もっと普通の、ちょっとロマンチックな所で結ばれたいって願望は私だって女の子なんだから少しはあって…。
(…………w)
やっぱりMr.ブシドーも男の人で、女の子の気持ちなんて解らないのかなと思って。
体さえ繋げられたらそれでいいのかなとか思ったり。
私ってMr.ブシドーにとって、そこまで深く考えつく程でもない、その程度の女の子なのかなって思ったら、ちょっとムカリと、そしてモヤモヤとした嫌な気分もする。
「おい、そこ入るぞ」
「え?」
(え?。ここって…?)
Mr.ブシドーが言ってるらしいそこは市民公園で。
緑地公園と書かれた石門を曲がって入ったMr.ブシドーに、その後について入りながら、ちょっと呆然とした。
ここはMr.ブシドーやルフィさん、サンジさんとも二回程来た事があって。
自然を模してて、低いながらも小山もあって、恋人や親子連れのデートスポットでもある。
(へぇ…)
夜の公園なんて初めてで、こんな時間だから人もいない。
まさかここで一晩?とも思って、でもここには宿泊施設はない。
まさか野宿?w、それともここで時間潰してやっぱりラブホテル?wと、夜の公園を見回しながら、Mr.ブシドーの後をついて走る。
「ん」
「あ。ん」
Mr.ブシドーの自転車が止まったから、私もブレーキを握る。
自転車を下りて鍵を抜いたMr.ブシドーが、私が鍵を抜くのを待っている。
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