─学園ラブ─

□料理
1ページ/3ページ

サンジさんがデザートの新しい構想が湧いたらしくて、その試作品をみんなで試食する事になった。
「おー!!、うっめー!!!」
「ほんとー∨。おいしー∨」
一口食べたミルフィーユ。
それは今まで食べた事もないくらい美味しくて。
「出会いは偶然だったが、サンジと知り合えててほんとに良かったよな♪。なぁナミ」
「ほんと。こんな美味しいもの試食出来るし、ゼフさんのレストランに行ってもただで食べさせてもらえるんだから、幸せ∨」
(ふふっ)
お金を掛けずに美味しいものが食べられるという事に上機嫌に笑うナミさんがらしくて。
私もそうだけど、ナミさん、そしてお母さんのロビンさんもサンジさんの実家のレストラン『バラティエ』で無料で料理を振る舞ってもらってる事を、この前初めてみんなでサンジさんのレストランに食べに行って知った。
「ねぇビビ。来年になったら、あんたが初めてうちに来た日の記念日として、その日に二人だけでバラティエに食べに行かない?。いいわよね?、サンジくん」
「もちろんナミさん∨。その時は当店屈指の最高級料理でおもてなししますよ∨」
(ふふっ)
訊いたナミさんに紳士的な態度でお辞儀をするサンジさん。
ナミさんもいつも私をどこかに誘ってくれて、Mr.ブシドーの彼女としてじゃなく、私として親友、そしてほんとの妹みたいに気兼ねなく接してくれる事が嬉しい。
「おいサンジ。俺もお前とは古い仲だろ。ナミとビビとお袋ばっか贔屓(ひいき)しねぇで、俺もタダにしてくれよ」
「おー!!。俺も頼むぞサンジ!!。タダでこんなうめぇもん食えるのなら、俺なんだってするぞ!!」
「フザけんな。ナミさんとビビちゃん、ロビンちゃんは俺の特別なレディーだ。特別どころかレディーでもねぇてめぇら野郎にタダで料理を振る舞うわけねぇだろ。てめぇらはタダどころか倍額取ってもいいくらいだ」
笑っていた私とナミさんの横で、まだ食べながらのウソップさんとほとんど一口でデザートを食べたルフィさんとが言った事に、タバコに火を点けたサンジさんが、ふー…っとそのタバコの煙を口から細く吹き出した。
「だがお前ら随分と持ち上げてくれるじゃねぇか。ま、そんな賛辞が出るのも当然だろうがな」
謙遜しないのがサンジさんらしく、でも本当にその自信通りのおいしさに、スプーンが止まらない。
「持ち上げてなんかねぇぞ。俺は本当におめぇが俺達のグループにいて良かったと思ってんだぞ。な、ビビ」
「うんっ」
笑って言ってくるルフィさんに心底から同意して頷いて、もう一口スプーンにすくったミルフィーユを口に入れる。
「はっ。ま、その言葉有り難く受け取っておくぜルフィ。何も言わねぇで黙々と食ってるそこのマリモはどうだか知らねぇが、ナミさんとビビちゃんにだけでも必要とされりゃあ俺は満足だ」
(ふふっ)
さっきから一言も言葉を発せず黙々と食べてるMr.ブシドーを煙草で指しながら不遜な態度で言うサンジさんと、どんなに美味しい料理でも絶対に美味しいと言わないMr.ブシドーの、どっちともの"らしさ"に可笑しさが湧いてくる。
「………。…俺もてめぇが居ねぇと困る」
「え」
「え…?」
「…あ…兄貴…?w」
(…Mr.ブシドー…?w)
賑やかな部屋の中、ふいに発したMr.ブシドーの言葉に、その賑やかさが一瞬で消えた。
子供の頃からのライバルでお互いに負けん気も強いから、何かと言えばすぐサンジさんと喧嘩になるMr.ブシドーが、そのサンジさんを必要みたいな事を言った事に、いつもと変わらない様子でサンジさんを眺めているMr.ブシドーにみんなで唖然として。
「な…なんだマリモ…w。てめぇいきなり…w。気持ち悪ぃぞ…おい…w⊃。なんだ…w、俺ぁお前に変なもん食わせた覚えはねぇぞ…w」
その中でも当のサンジさんが一番動揺と困惑の顔つきでMr.ブシドーに言って。
そのサンジさんをMr.ブシドーは目を逸らさずジッと見ている。
「な…なんで俺が居ねぇとお前が困るんだよ…//w⊃。そりゃ……俺だっててめぇが居ねぇとちぃと張り合いはねぇが…//w」
幼なじみであり、そして子供の頃からのライバルに必要だと言われたからか、サンジさんの様子は動揺と困惑の顔つきの中でもなんだか恥ずかしそうでもあって。
「てめぇが居なくなりゃあ…」
「「「「「……ごくっ…w」」」」」
「//…w」
口を開いたMr.ブシドーに何を言うのかと唾を飲んだ私達と、その横で同じくMr.ブシドーが何を言うのか待ってるサンジさん。
そして、Mr.ブシドーの口が続きを言うのか静かに動いた。
「俺の酒のアテを作る奴が居なくなる」
「「「「「…え…?w」」」」」
「あ?//w」
どんな感動的な事を言うのかと期待していた所に来たすごくハズれたMr.ブシドーの言葉にみんなで拍子抜けして。
サンジさんなんて何を言われたかも解ってないみたいな顔をしているw。
そんなサンジさんをMr.ブシドーは相変わらずの淡々とした顔で見ていて。
「何が『あ?』だ。今てめぇが料理人として必要だって話してただろうが。てめぇの料理の試作品は、給料前の俺の貴重な酒のアテなのを知ってんだろ。誰もてめぇの張り合いの話なんざ聞いてねぇ。何勘違いしてやがる」
「離せウソップ!!!###。あの野郎マジでオロしてやる!!!###」
「落ち着けサンジ!!!w⊃⊃」
「?。何キレてやがんだ。マジで訳解らねぇ野郎だな、てめぇは」
「てめぇだそりゃあ!!!###、このボケマリモ!!!###」
(…………w)
ウソップさんに止められながら包丁を振り上げて怒るサンジさんを、本当に解らない様子で口に残りのミルフィーユを運ぶMr.ブシドーに唖然として。
唖然とする頭の中でふと、
(Mr.ブシドーって、本当に料理ってしないのかしら…)
そう思った。
Mr.ブシドーはいつもコンビニでお弁当を買ってて。
朝も昼もそれ。
私とこうして付き合ってからは、私が作ったご飯をたまに食べて帰るけど、普段は夜もコンビニのお弁当。
一回に二つ食べるから、三食食べるなら六つ買うし、お金も掛かるから自炊すればいいのにと私が言った時、『男は台所に立つもんじゃねぇ』って、サンジさんの怒りを買うような、でもMr.ブシドーらしい返事が返ってきた。
だから思う。
本当にMr.ブシドーって料理した事ないのかなって。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ