─学園ラブ─

□チュウ
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「「やんのかてめえ!!!###。おお゛っ!!?」」
相変わらずムカつくクソコックの物言いに、デコを突き合わせて睨み合う。
始まりの理由は最早何だったかも思い出せねぇが、ムカつく事だけは確かで。
「「〜〜〜〜〜〜###」」
一歩も引きやがらねぇクソコックに更にムカつき、歯噛みしながらデコを突き合わせた至近距離でガンを飛ばし合う。
「……もーお前ら毎日毎日ケンカばっかするなよなぁ…?w」
「「ああ゛っ!!?」」
横からのルフィの辟易したみてぇな呆れの声に怒りが増し、
「ほれ、仲直り♪」
「「!!?。Σ!!!?」」
癪には障るがコックの野郎と同時にルフィの方に顔を向けかけた時、ニッと笑ったルフィが組んでいた手を解いてこっちに伸ばしたのが見えたと同時に、後頭部に触ってきた手の感触に頭を押されて。
「「────」」
見開いた目の前に、同じく見開くコックの目。
そして口にはビビで十分知る感触。
コックの口がてめぇの口に当たっている。
その感触と事実に頭の中から思考が飛んで、ただ口に感じる、ビビの口とは多少違う、微妙なかさつきのある柔らけぇ感触にだけ意識が移っている。
「「!!!。ぶおええっ!!!」」
意識が戻った瞬間、勢い付けて口を離した俺と同時にクソコックも弾かれたみてぇに口を離して。
「「うおえええっっ!!!www」」
口に残ったおぞましすぎる感触と、クソコック、そして男と口つけた嫌悪感に吐き気すら上がってきて。
背中にクソコックがえずく声を聞きながら、反吐こそ出ねぇもんの気分の気色悪さにこっちもえずきが止まらねぇ。
「ぐ…っ!!。よりにもよって野郎と…っ!!w。しかもクソマリモと口つけるなんざ…っ!!w。しかも何が嫌って、普通に柔らけぇ──」
「言うんじゃねええーーーっっ!!!#。うぶっ!!!。うおえええっっ!www」
クソコックの言いやがった事に嫌悪感とムカつきで怒鳴り、だがその言葉でまた吐き気がぶり返して。
収まらねぇ気分の悪さと、精神的ダメージに息切れが起こる。
「…くっそ〜〜〜っっ#w。大体避けろよクソコック!!!#。てめぇが避けてりゃこんな目にゃ遭ってねぇんだ!!!#」
「ああ!!?#。てめぇが出来なかった事俺に言うのか!!?#。反射神経はてめぇのが僅かに上だろ!!!#。てめぇが避けねぇから悪ぃんだろうが!!!#」
「んだと!!!#。瞬発力はてめぇのが上だろうが!!!#」
「おいおい…仲直りって言っただろ〜?w。ヒートアップしてどーすんだよぉw」
「「!!###。元はと言やてめぇのせいだろうが!!!、このバカルフィ!!!###。大体何しやがんだてめえ!!!###」」
「ん?、おう。この前テレビで見たんだ。ケンカのあと、仲直りとか言って口つけてたぞ」
「────っっ!!!w」
「そりゃ恋人同士の仲直りだ!!!w。てか俺達は喧嘩の最中だっただろうがよ!!!#w」
くだらねぇテレビで身に付けやがった間違った知識の為に、こっちは頭の血管がぶち切れそうな程の目に遭ったてのに、その元凶のバカルフィはあっけらかんと笑ってやがって。

(くそ〜……#)
胸くその悪さにビビを連れててめぇのアパートに帰って、部屋ん中に座り込んだが、未だ収まらねぇルフィへの憤り。
(あのバカが余計な事しやがるから、あんなクソコックと………うぶっw)
憤りにそのまま"あの事"まで思い出しちまって、口に蘇ったクソコックの口の感触に、また吐き気が起きて。
その吐き気を何とか押さえ込んで、顔を横に向けた。
俺からちぃと離れた場所に、背中を向けて正座するビビ。
会話も無く、部屋ん中も妙に静かすぎる以上に静まり返っている。
(…………)
口と記憶に残る嫌な感触を払拭してぇで、おもむろにそのビビに近付いて、後ろに座った。
「!!。いやっ!!!。その口でキスしないで!!!」
(!w)
顔を覗き込ませた俺に気付いたビビと目が合った瞬間、言葉と態度で全力で拒否されて、さっきの精神的ダメージが残る上に、今度は心臓にまた新たにダメージが加わる。
あの時の、何気なく目に入ったビビは驚愕とはまた違う表情で顔を引き吊らせていて。
思いきり嫌悪感と不快感を感じているのがその顔で解った程、俺とコックが、そして男同士が口つけ合った事に引いていた。
家に戻る道すがらも、戻ってから今までも何も言ってこねぇで、微妙に俺から距離を取っていた。
(ぐ…w)
そのビビに、拒否された事へのショック自体に加え、やろうとしていた事を拒否られて憤りと化す恥に、次の言動が起こせねぇで。
動きが固まる俺を、ビビがちぃと眉尻を上げて見ている。
「き、今日はイヤ…w。今日だけは絶対イヤ…w」
「…なんでだよ…w」
俺は早くこの頭と口に残る、思い出しただけでも吐き気が戻りそうな感触を払拭してぇってのに、ビビはマジで嫌そうな顔つきで俺から一人分間を空けて離れた。
「…だって…不可抗力って解ってるけどサンジさんとキスした口だと思うとなんかイヤだし…w。それにサンジさんと間接キスになるじゃない…w」
(ぐ…)
ビビの言葉に言われてみりゃあ確かにそうだと思えて二の句が出ねぇ。
俺だって嫌悪感を感じているあの行為をこいつは目の前で見て。
生真面目なこいつだから、野郎同士で付け合った口なんざ冗談じゃねぇだろう。
それに俺だって間接的にでもあのクソコックの口をこいつに付けさせたくはねぇ。
言われて気付いた事だが、やはり一旦気付くとそう思う。
「取りあえず口洗ってきてw。ちゃんと石鹸でw」
風呂場を指差して言ってきたビビに、仕方ねぇかと、払拭出来なかった嫌な記憶と感触を残したまま、立ち上がって風呂場に向かった。

念入りに石鹸で口洗って、菌だけは洗い落ちた気がする。
(…………)
ビビは昼飯の支度を始めていて、まだ記憶も感触も鮮明に残っちゃいるが、それは精神力で思い出さねぇように頭の片隅に押さえ込んで、精神的なもんからくる異様な倦怠感に床に座り込んで、そのままビビに背を向けて横になる。
後ろからの野菜を切る音を聞きながら、まだ払拭してぇ気分はある。
ビビの口の感触で払拭してぇ。
だがビビはさせねぇだろうし、俺もクソコックの付けた口をあいつに付けるのは嫌だ。
(…………くそ…#)
大体マジであの野郎がかわさねぇからこんな事になってる訳で。
それを考えるとムカついてくる。
頭の片隅に追いやった感触と記憶が、気を弛めりゃ戻ってきて。
それがムカつきに拍車をかける。
(…………)
振り向いた台所、飯を作っているビビ。
その後ろ姿を見ていて、してぇと思う。
この記憶と感触の払拭。
だがそれを諦めて、また首を前に戻した。
(はぁ〜ぁ……)
凄まじい倦怠感。
トレーニングをやる気すら起きねぇ。
変な病気が移ったんじゃねぇかと思えるくれぇに気分がダリぃ。
(…………)
「………Mr.ブシドー」
(ん……)
足音すら聞こえなかった程げんなりしてたらしく、ふいに真後ろからしたビビの声に振り向こうとした。
「…………」
首が上まで向いた時、上にビビの顔があった。
座ってんのか、すぐ近くにあるビビの顔は真上から俺を見下ろしていて、振り向こうとしていた顔をそこで止めた。
「…………」
ビビのその真上にある顔がそのまま降りてきて。
(…………)
口を逸れた俺の片頬に、柔らけぇ感触が当たってきた。
「……感触…。私の口で拭いたかったんでしょ…?」
「…………」
頭にも無かったビビの行動と、そのビビの口が付いた部分に残る感触に、無言のまま肯定の目を向けている俺を、ビビも真っ直ぐ見下ろしてくる。
「…口はイヤだけど…、そこなら別に何でもないし…。今日はそれで我慢して…」
正座から立ち上がったビビがまた台所に戻っていく。
(…………)
頬に残る感触。
その柔らけぇ感触と、新しい記憶になった俺を見下ろしていたビビの顔が、頭の中で嫌な記憶と感触を端に追いやって。
何気なく、その感触が残る頬に手を当てる。
(………まぁこれでも十分か…)
欲を言えば口の方に願いてぇんだが、今日はこれで妥協しておこうと、倦怠感の抜けた体をのそりと起こした。


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