─薔薇─

□薔薇3
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(あ?。バラ即売会?)
ビビの肥料を買い足しに行く途中、公民館の広場にバラの直売会場が出来ていた。
(…………)
何となく足を止めて見ていると、赤や桃色、黄色やビビとはちぃと違った真っ白な白バラと、色とりどりのバラが売られて、結構な数の客がそのバラを吟味していた。
(ん…、肥料もあるのか…)
中に値段を立てた肥料も置かれているのが見えて。
(…………)
だが中に置いてある為に、買うには中まで入らなけりゃならねぇ。
それでも、女ばかりなら入りヅレぇところだが、割と男の客も多く、その殆どが年配のおっさん達な事もあって、そのおっさん達に紛れて入ってみる事にした。
つってもてめぇのこの見た目。
一歩足を踏み入れた途端、周りの客の目が一斉に向いてきたが、入っちまったんなら開き直って肥料売り場まで突き進む。
とは言え、てめぇにゃ場違いな場に居るのはてめぇでよく解ってっから、恥に似た居づらさは多大にある。
『…………。…おい…おめぇらは喋れねぇのかよ…』
肥料を手にレジに行こうとしてちぃと気になった事に、周りの奴らの目が離れたのを見計らって、ビビよりデケぇ花を咲かせるバラ達に小声で話し掛けてみた。
「…………」
が、当然と言えば当然だろうが返事は返って来ねぇで。
(………は…)
ふと視線に気付いて振り向くと、輪を作って、遠巻きに変質者を見るような目で俺を見ている女客達。
(〜〜〜〜〜っっw)
ひそひそと耳打ちしている女共の視線とその場の空気に、余計な恥をてめぇで招く真似をしていたてめぇに腹が立って。
肥料を手に、その代金をレジに叩きつけて外に出た。

『ん?』
(?)
うちに帰ると、声を捻ったビビになんだ?と思って。
『Mr.ブシドー…、どこに行ってたの…?⊃』
「あ?」
どことなく遠慮がちに訊いてきたビビに、何がだと逆に訊き返した。
『…なんだか他の薔薇の匂いがするんだけど…w…⊃』
(…………)
鼻もねぇのに即売会に行った事を言い当てたビビに、俺が見えてる事も含めてどこでそんな感覚を感じてるのかがちぃと疑問に思えたが。
「ああ、途中でバラの即売会やっててな。ちょっと寄ってた」
先にビビの問いに返した。
『ミ…Mr.ブシドー…もしかして他にも薔薇買うの…?…w』
(…………)
続けて妙に不安げな物言いで訊いてくるビビは、なんか心配げな声でもあって。
「買わねぇよ。俺はおめぇの世話で手一杯だし、喋りもしねぇバラ買っても枯らしちまうだけだしよ」
『……ほんとに私以外の薔薇は買わない…?…⊃』
取り敢えず訊かれてくる事に返すと、伺うみてぇに訊いてきた。
「おう…。?」
一言返事をすると、今度は質問じゃねぇ、僅かに息を吐く声が聞こえて。
「なんだよ、今溜め息吐いたんじゃねぇのか」
『えっ!?w。うっううんっw⊃⊃。吐いてないわっ!?w⊃⊃。吐いて…w。……吐いたけど…w』
「どっちなんだよw」
てか吐いてたが、なんで一遍隠したのか疑問に感じた。
「…俺が他のバラ買うのは都合悪ぃのか?」
『え…w。…ん……そうじゃないけど…w』
訊いた言葉に返ってきた声は何か言いづらそうな、歯切れの悪ぃ返事で。
『…なるべくならMr.ブシドーには他の薔薇は買って欲しくないから…w⊃』
「?。なんで」
奥歯に物が詰まったみてぇにはっきりと言ってこねぇビビが何を言いてぇのか解らねぇが、どうやらよっぽど俺が他のバラを買うのは嫌みてぇなビビに、その理由を訊いた。
『…だって…⊃、他の薔薇と並べられたら、私見劣りするだろうから…⊃』
「見劣り?」
『ん…、私大薔薇の筈なのに全然背が伸びないし…花だって小ぶりだし…。白薔薇だから他の色の付いた薔薇に比べたら目立たないだろうし…⊃』
「…………」
てめぇの見た目に自信なさげなビビの言葉に、そうか?と疑問を感じて、内心で首を傾げた。
「…まぁ確かに花も背丈もちぃと小せぇが、花はそこらのバラよりきれいだぜ?。見劣りなんざしねぇよ」
『…本当…?…』
「ああ。花に興味がねぇ俺が思うんだ。よっぽどだぜ」
『……そっか…//』
滅多に他人を評価はしねぇ俺が思った誉めの言葉に返ってきたビビの声は気恥ずかしげに納得した声で。
そしてどこか嬉しげにも聞こえた気がした。
『…ねぇ…Mr.ブシドー…』
「ん」
『Mr.ブシドーは…私の事どう思う…?…⊃』
「あ?」
さっきの質問は段落が付いたが、またも来た別の真意不明な問いに、思考同様声も傾いで。
『…お…女の子としてとか…//⊃⊃』
「…………」
何が恥ずかしいのか、やけに恥ずかしげに訊いてくるビビの質問の真意は解らねぇが、
「まぁ…声が女の声だし、名前も女の名前だからな…。性別は女とだけは思ってたが…おめぇはバラだからな。ただの植物としてしか考えた事はねぇ」
『………』
「それがなんだ」
『……ううん。なんでもない。ごめんね、変な事訊いて』
(………?)
取りあえず、質問された事の答えを返すと、いつも通りの物言いでの僅かに笑った声が返ってきた。
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