─SandLandPrincess─PureLove─携帯彼女─

□携帯彼女
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─ゲーム─

サンジの野郎が今の時代に携帯持ってねぇなんざ信じられねぇと、持ってりゃ便利だし何かの時に必要だからって、強引に持たされた、てか買わされたスマホ。
それにウソップが勝手に妙なアプリを入れやがった。
『携帯彼女』
「…………」
携帯の中で彼女が作れるって、いかにも女が出来ねぇ奴が喜んで遊びそうな、くだらねぇ、むしろ空しくならねぇかと思えるようなそのゲーム画面を見ながら、だが消し方も解らねぇからどうする事も出来ねぇで。
てめぇの席に座る俺の机の前で、それを入れやがったウソップと、同じくこのゲームを勧めてきやがったサンジに見下ろされながら、くだらなげなゲームのタイトルが映るスマホの画面を無言で眺める。
「いいから試しにやってみろって、ゾロ。ほれ、俺の彼女、カヤっていって可愛いんだぜ」
「…………」
ウソップが見せてくるスマホの画面には、随分大人しそうな、深窓の令嬢くせぇクリーム色の髪の毛の女が映っていて。
こういうのがこいつの好みなのを、もう二年も留年仲間として付き合っちゃいるが、今知った。
「俺の彼女はこれだ。情熱と魅惑の女神、ナミさんだぜ」
「…………」
サンジの野郎が見せてきたスマホにゃ、橙色の髪の毛の、なんか気の強そうな、どっか性悪そうな女が映っている。
「………。…おめぇらこんなばっかしてるから女が出来ねぇんだよ。こんな玩具の女で遊んでねぇで、女が欲しいならほんもんの女と付き合えよw」
呆れ果て、こんな奴らと仲間でいるのがちぃと嫌になった。
「それが出来りゃ苦労はしねぇよ!!。それに現実の女なんてわがままで気も使わなけりゃならねぇし、その点このゲームなら自分の好きな性格にも設定出来るし、自分の理想の彼女に出来るんだぜ!?。現実の女よりよっぽど可愛いぜ!!」
「…ま…」
「バカかウソップ!!。実際のレディーはレディーで良いところがあるんだよ!!。わがままだって女の特権だ!!。それを許せるのが男の度量であって、そのわがままを聞いてやるのが男の喜びだ!!」
「…………」
ウソップの女の偏見に、だがまぁそりゃそうだがなと納得もしてそれを言おうとする前に、横からサンジが口を突っ込んで来て。
その"女のわがまま"に振り回されるだけ振り回されて、いいように使われた挙げ句、用が済みゃあ気にすらされず捨てられてやがるってのに、まだ女を擁護出来るサンジにある意味感心すらする。
が、やっぱりバカには変わりねぇ。
「いいからほれ、やってみろ」
「やり方解らねぇんだろ。ほれ貸せゾロ」
「!。てめ!、何勝手に!!#。!?」
俺の手から勝手にスマホを取って何か操作し始めやがったサンジに、取り返そうと立ち上がりかけた時に、ウソップが肩を押さえて来やがった。
「いいからいいから。俺達の中でまだ彼女が居ねぇお前に俺達からのプレゼントだ」
「そうだぜゾロ。生まれてこの方、剣道と筋トレ器具だけが恋人の寂しいてめぇに、俺達が可愛い彼女を作ってやろうって言ってんだ。その厚意をありがたく受け取れ」
「余計な世話だ!!#。てかなんだその押し付けがましい厚意はよ!!#」
「まぁまぁ、いいからそんなたぎるなって。どうだサンジ、いいの出来たか?」
「ふぅむ。こいつの性格からして、見た目は清楚な感じがいいだろうな。性格は優等生タイプで、だが活発で…。こいつもたまに抜けてるから、こっちもちょっと天然で…」
「誰が抜けてんだよ…#」
「おし。ん〜…、てめぇの彼女にしちゃ完璧すぎか…。…まぁ俺達からの初めてのプレゼントだ。ちぃと身に余る豪華なものをやろう」
「…………#」
「おら、さっさと受け取れゾロ。てめぇの初めての彼女だ」
「────」
一々ムカッ腹が立つ物言いで言って来やがるクソ野郎に歯噛みしながら、だがやっと戻ってきた、渋々取ったスマホ。
その画面にゃ、水色の髪の毛をポニーテールに縛った女が目を瞑って映っていた。
「要らねぇ!!#。てかマジでなんだこりゃ!!#。俺はしねぇぞこんなもん!!#。さっさと消しやがれ!!#」
俺にゃあ女もゲームも必要ねぇ。
ましてやこんなゲームの中の女なんざマジで迷惑なだけで。
だがどうすりゃ消えるのか解らねぇから、スマホごとサンジとウソップの前に突き返した。
「いいからしてみろって。俺達だって初めはバカらしいと思ってたんだぜ?。でもやってみりゃハマるんだって」
「────#」
こんなもん勝手に入れやがって、今でも全く使い方も解らねぇスマホごと破壊してやりてぇが、大枚はたいて買った(正確にゃあ買わされた)スマホを壊す事も出来ねぇで。

「…………」
うちに帰って、スマホをポケットから取り出す。
消し方が解らねぇから、ずっと点きっぱなしだった画面にゃあ、昼に見た水色の女が目を瞑ったまま突っ立ちながら映ったままで。
消し方を教えやがらねぇくせに、操作の仕方は教えてきやがったあいつらの言っていたように、画面に出ているスタートボタンを押してみた。
やりたくもねぇが仕方ねぇ。
これだって金掛かったんだから、ちぃとはやって、その元取らなけりゃ何か気が済まねぇ。
「…………」
『………初めまして』
「Σ!」
目を開けて不意に喋りやがったゲームに、ちぃとびびって。
喋るとは聞いてなかったから、喋ったゲームにかなり驚いた。
『私、ビビと言います。あなたの名前は?』
「…………w」
下にパネルが出てきて、続けなけりゃならねぇのかと、そこにぽちりぽちりと名前を入れてみる。
『ゾロさんって言うんですか。趣味はなんですか?』
「…………」
見合いじゃあるまいし趣味を訊かれて、だが強制的にパネルが出るから、どうしても打たなけりゃならねぇで。
『へぇ、剣道が趣味なんですか。なんだかかっこいい』
「…………。(は…)」
機械が喋ってるみてぇじゃなく、マジで人間が喋ってるみてぇな流暢さで言ってくるゲームに、なんか知らねぇうちに引き込まれちまってる事に気付いた。
『じゃあ今日からあなたの事Mr.ブシドーって呼びます。ニックネームがある方が早く親しくなれるでしょ?』
「…………」
下に出たパネル。
"はい"、"いいえ"と出ていて、あんまゲームの機械女と親しくはなりたくねぇから"いいえ"を押してみた。
『……え…親しくなりたくないんですか…?…』
(う…)
途端、ちぃとしょげたみてぇな寂しげな表情に変わった女に、妙な罪悪感が湧いて。
(…………w)
これはゲーム、そう解ってるってのに、いやに罪悪感を責められる。
(く…w)
なんか"はい"と答えねぇと悪ぃような気がして、下に出ているパネルの、今度は"はい"を押した。
『──、よかった。じゃあこれからも友達としてよろしくお願いしますね、Mr.ブシドー』
(………w)
"はい"を押した瞬間、しょげていた女の表情が安心したみてぇな笑みの表情に変わって、礼儀正しく頭を下げて言ってきた女…ビビに、ゲームだってのにこんなマイナス感情まで揺さぶられるとは思わなかった。
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