─SandLandPrincess─PureLove─携帯彼女─

□SandLandPrincess
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─一章─

「よっ…と」
今日はアラバスタ王国王女、ビビ姫様の16歳の誕生日。
王宮では同盟を組んでいる国の王やその家族を招いて、盛大な宴で盛り上がっています。
そんな中、裏のバルコニーから抜け出す一人の少女。
ドレス姿のこの少女こそ、今日のパーティーの主賓であり、このアラバスタ王国13代王位継承者、ネフェルタリ・ビビ王女です。
ですがこの王女、他の国のお姫様達とは少し気性が違っていて。
「ふう。やっと抜け出せた」
二階のバルコニーから下の芝生の庭に飛び降りて、一息つくビビ姫様。
「あ〜あw。パーティーは美味しいもの食べられるし、好きだけど、堅苦しい挨拶は苦手だなぁ…w」
このビビ姫様は少し破天荒で、子供の頃から町の子供達と混ざって遊び、その自由さのまま王女として育ってきた為に、王族特有の堅苦しい雰囲気はあまり好まず、もっと肩の力を抜いて気楽に話せるような人付き合いがしたいのでした。
少し息抜きにと、宮殿の敷地をどこへ行くでもなく歩いていると、
『ヴォ、ヴォ#』
カルガモ部隊達が水浴びをするプールがある方からラクダの鳴き声が聞こえてきました。
(?。マツゲくん?)
マツゲとは最近この宮殿の超カルガモ部隊に入隊した見習いのラクダで。
サンドラオオトカゲという、この地帯に住む大型トカゲに追い回されている所を、偶然通りかかったビビ様とその護衛部隊に助けられ、ビビ姫の愛らしさにすっかり惚れ込んで、ビビ姫を護る超カルガモ部隊に入隊を希望した、少しキザで、でも男気のあるラクダです。
(どうしたのかしら。なんだか怒ってるみたい…)
気になった姫様が見に行ってみると、地面に座るマツゲが見え。
(…………)
そのマツゲの前に、礼装をした、腰に三振りの刀を差した、まだ年若い青年が胡座をかいて座り込み、木の枝でマツゲの鼻先を叩いていました。
「あ〜あ…、いいよなぁ、王族ってのは。今頃うめぇ料理思う存分食ってんだろうな…。こっちはこんな所で待機なんてよ。俺もうめぇ王宮料理食いてぇよなぁ」
(…………)
緑の短髪のその青年は、決して虐めている訳ではない、本当に軽く当てる程度の枝の動かし方でマツゲの鼻先を愚痴を言いながら叩いていて。
あんなからかっている程度の仕草で憂さを晴らしているのか、そしてマツゲも鬱陶しいそうに文句は言っているものの、その場から離れるでもなく、青年の憂さ晴らしの相手を受けています。
(誰かしら…。王子という出で立ちじゃないけど…)
護衛隊の服装に似た礼装を着ているその青年の事が少し気になった姫は、隠れて様子を見ていた宮殿の角から出て、その青年の側に歩いていきました。
「あの、もし…」
「あ?」
「ヴォ∨」
ビビ姫が後ろから声を掛けると、目をハートにしたマツゲと、同時に青年が振り向き。
「!!」
その振り向きながらビビ姫を見上げた青年が、ビビ姫の顔を見た途端、慌てたように立ち上がりました。
「しっ失礼しました!!w。無作法な所をお見せしてしまいまして!!w」
服装から姫君だと解り、焦った顔で姿勢を整え腰を折って頭を下げた青年は、さっきマツゲに愚痴っていた言葉ぶりとは全く違った礼儀正しい敬語でビビ姫にお詫びし。
「あ、いいの。気にしないで?。大丈夫だから」
青年の堅くなってしまった態度と言葉遣いに、さっきまでの一兵士の砕けた態度と愚痴に微笑ましさと好感を感じていたビビ姫は、青年に頭を上げるように促しました。
王宮に数多く居る兵士は、王女であるビビ姫の前では当然規律に従い態度が堅く、ですがビビ姫は、彼女がこっそり隠れて見ている時の、兵士達の砕けた態度や、同僚達と軽々しく話している姿が人間らしくて好きだったので、自分の前でも本当はそんな態度でいて欲しいと思っていました。
けれどそんな願いは、自分の立場を解っている姫にとっては叶わないものと解っていましたし、だからこそ、自分を前に堅くなってしまった青年の態度に少し寂しさも感じていました。
自分が普通の少女なら、こんな堅苦しい態度で接したりはしない、もっと砕けた柔らかい物腰で接してくれるだろうに。
そう思うと、いつもどこかで感じていた王女という立場と、自分への特別な扱いへの寂しさに、また少し悲しさが増しました。
「…あなたは誰?。今日来てくださってるお客様の側近の方?」
「はっ。自分はココヤシ王国のモーガン国王の御子息、ヘルメッポ王子の護衛の任に就いております、ロロノア・ゾロという者です」
「ロロノア・ゾロ…」
自分を真っ直ぐ見下ろしてくるロロノア・ゾロと名乗った青年の、その鋭い、けれど穏やかな目を見返しながら、ビビ姫の胸には何かいつもと違う感覚が起こっていました。
胸が高鳴る。
生まれて初めて経験する、それは未だ女性としては幼く、恋すらした事がなかったビビ姫に訪れた初恋でした。
ですが恋を知らないビビ姫はその胸の高鳴りの訳が解らず、それでもその鋭く、けれど穏やかな目つきの、整った顔つきの青年から目が離せず。
また青年もそんなビビ姫の深い紫の瞳と、清楚で愛らしい見た目に心を奪われ、今まで感じた事の無い気持ちの暖かさを感じながら、ビビ姫から目を逸らせずにいたのです。
「ヴォ」
「あ…」
「は…」
そんな二人の雰囲気に、ビビ姫がゾロと名乗った青年に見入っている事が面白くなかったマツゲの出した声で、二人とも互いに捕らわれていた意識を取り戻し。
「し…失礼しました…⊃⊃。あの…、貴女はどちらの国からいらした姫君でしょうか…」
さっき見られただろう愚痴をこぼし、態度も崩していた事を自分の主君に黙っていてもらおうと、ゾロはまずその見目麗しい王女の名を訊く事にしました。
「あ…、私はこのアラバスタ王国の王女、ネフェルタリ・ビビよ…。知らなかったかしら…?⊃」
「Σ!!!?w」
姫が答えると、慌てた様子で片膝をつき頭を垂れた青年。
「失礼しました!!w。今回主君がお招きいただいた国の王女にとんだ無礼を!!w」
「…………」
敬語で謝りながらもどこか間の抜けた雰囲気で焦りながら謝る青年に、ビビ姫は少し呆然としていましたが、
「…ぷっ。くすくすくす∨」
「え………w」
つい吹き出して、こらえられない可笑しさに喉を鳴らして笑うビビ姫に、ゾロは少し困惑してしまいました。
「あ…ごめんなさいw⊃。なんだかあなたを見てると幼なじみの青年に重なっちゃってw」
困惑の表情を浮かべたまま自分を見ているゾロに、今度はビビ姫がお詫びし、笑った理由をゾロに言いました。
「じゃああなたはそのヘルメッポさんの護衛の人なのね?」
「あ…、はい…⊃」
「そんな畏まらなくてもいいわ。姿勢も戻して?。跪かれるのはあまり好きじゃないの」
「…ですが…⊃」
「護衛兵と言っても、私もあなたも同じ人間よ。王族だろうと庶民だろうと。でしょ?」
「…………」
「それに私はあなたの主君じゃない。他国の王女なんだから、そんな堅苦しくならないで?。ここにいる今のうちだけは、肩の力を抜いて過ごしていて欲しいの」
「……はい」
王族の人間にこんな事を言われたのは初めてだったゾロは、目の前の、まだ自分より年下そうな他国の姫君の言葉に少し戸惑いながらも、その大らかな考えと柔らかな笑みに気持ちが解されていっている事を感じていました。
「あ、そういえばさっき料理が食べたいって言ってたわよね。じゃあちょっと待ってて?。何か見繕って持ってくるわ」
「え。あ!w」
先ほどの青年の愚痴っていた要望を叶えてあげたくて、宮殿に走って行ったビビ姫に、ゾロは止める間も無く。
止める為に出した行き場の無い自分の手を突き出したまま、展開に少しついていけないゾロなのでした。
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