─短編集─

□迷子
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真っ暗闇、一人。
周りにゃ誰も居ねぇ、暗闇の中、俺一人。
(────)
焦燥感。
今まで一度も感じた事がねぇ、だがこれが『不安』だと解る。
走って、走って。
暗闇の中走って。
誰も居ねぇ。
ルフィも、ナミも、ウソップも。
チョッパーも、クソコックも。
ロビンも、フランキーも、ブルックも。
誰も居ねぇで、心臓が潰れそうな程不安で。
走って、走って、足を止めた。
出口もねぇ、真っ暗闇。
一人って事が、こんなに怖ぇ。
「────」
動けねぇで。
胸が潰れそうで。
目から溢れてくる涙を、両手で覆った。
「────!」
手に触ってきた感触。
咄嗟に横を見た。
「────」
ビビが居た。
笑って。
『随分大きな迷子ね』
「────」
笑んで言うビビ。
『行きましょ。みんなが待ってるわよ』
「────」
触った俺の手を握り締めて、歩き出したビビ。
そのビビに手を引かれて歩いていく。
『ほら、出口よ。Mr.ブシドー』
「…………」
不安が、いつの間にか消えていた。
遠くに見える光。
それを目指して、歩く。
ビビに手を引かれて。
『もうすぐよ』
「……ああ」
近付いてくる光を目指して、ビビに返事を返す。
ビビに手を引かれて、目の前の光をくぐって。
「────………」
昼寝から、目が覚めた。


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