─短編集─

□幼心
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(………/////)
綺麗なおねぇちゃん。
おれとおんなじ色付きの、長い水色の髪の毛。
その髪の毛に負けねぇくらい、綺麗な顔のおねぇちゃん。
「//////」
「………ん?」
「Σ//////w」
気付かれた。
綺麗なおねぇちゃんに。
「なぁに?、ボク」
「あ……」
綺麗な顔が笑った。
そしたらもっと綺麗になって。
そしたら心臓がドキッとして、ドキドキして。
「あ…っ////w、あの…っ////w、なっ何でもない!!!/////w」
逃げてしまった。
恥ずかしくて。
おねぇちゃんがあんまり綺麗だったから。
「は〜…w」
道場まで走って帰って、縁側でため息をはいた。
(…………w)
まだ心臓がドキドキしてる。
走ったからじゃなく、……おねぇちゃんを思い出すだけでドキドキする。
(…どうしたんだろう…w、おれ……w)
綺麗なおねぇちゃん。
頭から離れねぇ。
なんだろう、これ…w。
「…どうしたんだい?、ゾロ」
「あっw、先生っw」
先生なら解るだろうか。
このドキドキの理由。
でもなんか恥ずかしい…w。
なんて言ったらいいか解らねぇ…w。
「……何でもないw」
結局先生にも言えなくて、夜になって。
布団に入ってもまだドキドキして、寝られねぇ。
目を瞑ると、おねぇちゃんが浮かんで。
寝られねぇ。

「あら?」
「ん?。Σ//////」
河原の土手で素振りしてるとこに聞こえた声に振り向いたら、昨日のおねぇちゃんが立っていて。
「あなた昨日のボクね?」
「…………w」
綺麗な顔で笑うおねぇちゃんに声が出なくて、また心臓がドキドキして。
「大丈夫よ。私別に怪しい者じゃないから」
おれに近付いてきて、俺の前にしゃがんだおねぇちゃんがまた笑った。
同じ目線の、手を伸ばせば届く距離にあるおねぇちゃんの笑顔に、心臓がさっきよりドキドキ早くなって。
「ボク、綺麗な色の髪ね」
「!!w。触るな!!!w」
笑いながらおれの頭に触ってきたおねぇちゃんに、どうしていいか解らなくなって、思わず怒鳴って手を払い除けていた。
「あ……⊃」
「…………」
おねぇちゃんは驚いた顔でおれを見ていて。
「…そっか…ごめんね…⊃。あんまり綺麗だったからつい…⊃。触られちゃイヤだったね⊃」
「!、―――…⊃」
少し悲しそうな顔で笑って謝ったおねぇちゃんに、今度は心臓が痛くなった。
「……ボク、竹刀のお稽古してるの…?」
「………うん…⊃」
心臓が痛くて、おねぇちゃんに悪くて、でも素直に謝れないところに訊かれて、代わりにその質問に返事をした。
「そう。強いのね、ボクは」
また笑ったおねぇちゃんに、でもまだ心臓は痛い。
「…Mr.ブシドー」
「え……?」
急におねぇちゃんが言った『武士道』の言葉に、どうして武士道なのか、どうして急にそんな事を言ったのかが解らなくて、少し心臓の痛さがまぎれた。
「心の強い男の人が持つ志を"武士道"と言うんでしょ?」
「……うん…」
先生が言ってた事とは少し違うけど、意味は同じな気がして返事をすると、おねぇちゃんが少し首を傾けながらニコッと笑った。
「あなたは強い志を持ってる男の子。だからMr.ブシドー」
「………ミスター・武士道…」
おねぇちゃんの言葉を繰り返したら、またおねぇちゃんが笑った。
綺麗な顔で。
「……また会えるといいね。Mr.ブシドー」
「…………」
おれを見ながら立ち上がったおねぇちゃんを見上げて。
おねぇちゃんもおれを見下ろしている。
「じゃあね、Mr.ブシドー」
「…………、おねぇちゃん名前は!!?」
立ち去ろうとしたおねぇちゃんに、名前が知りたくて訊いた。
「俺はゾロ!!。ロロノア・ゾロ!!!」
「………ふふっ」
「?w」
名前を言っただけなのに急に笑ったおねぇちゃんに、なんで笑ったのか解らなくて。
「なっ、何が可笑しいんだよ!!w。俺の名前、笑う程可笑しいのか!!?w」
名前を笑われて、少し腹が立って。
「違うの、そういう意味で笑ったんじゃないの。ごめんなさい」
「じゃあ何だよ!!w」
クスクスと笑いながら謝ってきたおねぇちゃんの笑顔が今度は可愛く見えて、どうしてか恥ずかしくて、ついまた怒鳴ってしまった。
でもおねぇちゃんは笑ってて。
その笑顔はなんでか嬉しそうだった。
「人の名前を訊く時は自分から名乗るのが武士の礼儀だものね」
「………、うん!」
先生にそう教わったから、それを通しただけだけど。
おねぇちゃんが嬉しそうに笑ってたのは、おれが武士道の筋を通しているからだと判って、なんだか嬉しかった。
「なあ!!、おねぇちゃんの名前は!!?」
「……ビビ」
(ビビ……)
綺麗なおねぇちゃんに似合った綺麗なかわいい名前。
「ネフェルタリ・ビビよ。Mr.ブシドー」
「―――――」
にこりと笑ったおねぇちゃん。
その姿がぼんやりと白くぼやけて、水色の髪の毛も霧みたいになって。
「またいつか、会えるといいね」
笑って言ったおねぇちゃんの姿が霧が消えるみたいに。
消えた。
「――――………〜〜〜〜〜」
なんでかそれが悲しくて。
おねぇちゃんの笑顔が悲しくて。
「〜〜〜〜〜うわああぁあぁぁ〜〜〜っっ」
泣いた。
『またいつか、会えるといいね』
おねぇちゃんの笑顔と言葉が目と耳に残る。
「〜〜うう…っ、うえ…っ、うぐっ……」
悲しくて、もっと泣いていたかったけど我慢した。
泣いたら、もうおねぇちゃんに会えない気がして。
強くなったら、おねぇちゃんに会える気がして。
会えるだろうか。
強くなったら。
またいつかおねぇちゃんに。
綺麗な水色の髪の毛の、笑顔の綺麗なビビおねぇちゃんに。
ミスター・武士道とおねぇちゃんが付けてくれた呼び名に釣り合うくらい強くなったら。
きっと……、また会える。


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