─緑猫─

□洗い
1ページ/1ページ

"ガチャリ"
「あ、おかえり……!?」
散歩から帰ってきたMr.ブシドーに、キッチンから玄関に顔を向けると、家に足を踏み入れてきたMr.ブシドーはズボンはびっしょり、そして服や顔、頭や腕も濡れて、足を中心になんか変なべたっとしたものも付いてて。
「う……w。!!、待ってMr.ブシドー!!。入ってこないで!!w」
そのMr.ブシドーの汚い姿に何事…?wと思ってちょっと呆然としてたら、臭ってきたニオイ。
明らかにドブ川や側溝のそのニオイに、思わず顔をしかめた時、それだけ汚いにも関わらず平然と家の中に入って来ようとするMr.ブシドーを慌てて制した。
「何してたの!?w、Mr.ブシドー!!w。もしかしてドブに落ちた!?w」
玄関に走って、足を止めるMr.ブシドーの前で、体に触るのも憚られるMr.ブシドーを見上げて訊くと、
「いいや。クソ猫が俺の縄張りでションベンしてやがったから、ムカついて追いかけて、ドブん中で喧嘩になった」
相変わらずのシレッとした態度であっさりと返してきた。
「…………w」
Mr.ブシドーは強いからケンカには負ける筈はないし、怪我もしてないみたいだけど、ドブの中でケンカするのは考え物で。
「と、とにかく服脱いでっw。お風呂入らなきゃっw」
服はもう破棄しなきゃいけないけど、これ以上ニオイを家の中に振り撒かれるのは困るw。
その場でシャツを脱がさせて、そしたらGパンに手を掛けたMr.ブシドー。
「//////!!。ちっちょっと待って!!//////w」
なんの躊躇いもなく、私(女の子)の前でズボンを脱ごうとするMr.ブシドーに、慌てて後ろを向いて。
「タオル持ってくるから、ちょっと待ってて!?//////w」
腰に巻かせるタオルを取りに走って、戻って後ろを向く。
「…はい//////。いつもみたいにズボンと下着脱いだらこれ腰に巻いて…//////」
後ろを向きながらタオルを差し出し、ズボンが床に落ちる音を聴いたら、手のタオルが取られた。
「いい…?//////」
「ん」
一言の返事に振り向いて、裸で腰にタオル一枚のMr.ブシドーのその足を見た。
靴を履いてたから、なんかヘドロみたいなものが付いてる手や顔と違って綺麗ではあるけど、でもやっぱりちょっとヘドロとか何かが付いてて。
「…片足ずつ上げて」
お風呂までその足で歩かれるのはイヤだから、Mr.ブシドーの足元にしゃがんで、まだ濡れてるその足を脱いだシャツで拭く。
猫って案外手間が掛かると、ケンカで怪我する事や、よそで迷惑掛けているんだろう事を考えると、ちょっと完全室内飼いの考えが過ぎったけど、Mr.ブシドーが大人しく家の中にいる訳がないのは解るから、その考えは一瞬で却下になった。
いつも通り私は服を着たまま一緒にお風呂場に入って、イスに座るMr.ブシドーの後ろからシャワーを掛けてから、シャンプーで頭を洗う。
体は自分で洗えるけど、頭には耳が生えてるから洗いにくいらしく、ほっといたら自分では洗わないから、頭とついでに背中だけは私が洗ってる。
「ちゃんと洗ってね?。ドブは汚いんだから」
タオルでは物足りないと、皮膚を鍛える為とか言っていつもたわしで体を洗うMr.ブシドー。
今日もゴシゴシと、見てるこっちが痛い気になる程の力加減でたわしで体を擦って(磨いて?)るMr.ブシドーに言いながら、短い髪の毛を洗う。
短いから頭はすぐ洗い終えて、予備のたわしで背中も洗って。
「じゃあ流すから、耳伏せててね」
シャワーのレバーを捻ると、Mr.ブシドーが頭の耳を伏せて、そのMr.ブシドーの頭と体、そしてしっぽを濯ぐ。
「じゃあ、はい」
"前"は自分で濯いでもらって、濯ぎ終わったMr.ブシドーの腕を取ってニオイを確認する。
「ん、よし。大丈夫」
ドブ臭さはたわしで擦った事もあってすっかり消えて、代わりに石鹸のいい匂いに変わってる。
新しいタオルをまた腰に巻かせて、バスタオルで体と頭を拭く。
これも私がしないと、Mr.ブシドーにさせてたら適当に拭いてまだ体が濡れてても平気で服を着ようとするから、ほっとけない。
今日みたいに汚れて帰ってきても、雨に濡れて帰ってきても平然といるし、でも朝は自分で顔も洗うし歯も磨くし、グルーミングもするのに、その割には汚れや濡れに無頓着で、Mr.ブシドーの感じる"汚いと綺麗"のラインがどこら辺で引かれてるのか今一よく解らない。
「ふう。はい終わり」
服はさすがに自分で着るMr.ブシドーから、玄関に脱いである汚れた服の所にゴミ袋を持って行く。
異臭を放つ服とズボン、下着と靴も摘まんで袋に入れて、足跡の残る床と玄関も掃除して、やっと一息つけた。
(ほんとにもう…)
子供みたいに手が掛かって、子供より体が大きいから、手の焼け具合が倍に感じる。
でも自由気ままに生きてる猫って生き物と暮らす事、全然イヤだとは思わない。
テレビとかで見るよその家の猫と違って、Mr.ブシドーは愛想もあんまりないし、愛情表現もしないけど、でも元野良猫のMr.ブシドーがこの家にいて、散歩に行ってもちゃんと帰ってきてくれるって事は、少なからずこの家を気に入ってくれてはいるんだろうと思う。
私の事はどう思ってるのかは解らないけど、ちょっとでも気に入っていてくれてるなら嬉しい。
「(ん…)。お昼寝するの?。Mr.ブシドー」
「おう…」
ゴミになった服の入った袋を外に出して、手を洗ってからリビングの前を通ったら、Mr.ブシドーが横になろうとしているのが見えて。
「…一緒に寝ていい?」
「…………」
訊いたら、横に寝ようとしていた体を仰向けに寝転がせたMr.ブシドーに承諾だと近付いて、頭をお腹に乗せた。
Mr.ブシドーから香る石鹸の匂いを胸に吸い込んで、聞こえ始めたいびきを聞きながら私も一眠りと目を瞑った。


[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ