─緑猫─

□緑猫
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数日前、猫を拾った。
猫…と言っていいのかしら。
私より背が高くて、緑の毛並みの猫。
すごく人相が怖くて、すごく無愛想。
喋ってくれないし、私の側に近寄ってもくれない。
喧嘩をしたみたいで、随分ひどい怪我で動けなくなってて。
連れて帰って手当てして、でも次の日にはもう体を鍛えるトレーニング。
傷が開くと止めても、ただ決意を宿した目をして鍛錬をやめない。
そんな強い精神を持つ彼に武人の姿を見て、彼にMr.ブシドーと名付けた。

「あーん」
「………w」
フォークに刺したウィンナーを口元に持っていっても、しかめっ面で困った顔して私を見てくるだけで、口を開けてくれない。
でもお腹はすいてるみたいで、勝手に冷蔵庫を開けて、勝手に中のものを食べている。
なのに、私の手からは食べてくれない。
Mr.ブシドーは、毎日昼寝している。
起きてる時はトレーニング。
ご飯にトイレ。
たまに外に出て、縄張りの巡回。
その他はまた昼寝。
自分からは近付いてこないけど、でも一緒に昼寝しても怒らない。
オス猫らしいがっしりした体に大きな手。
体温が高くて、彼を枕に一緒に寝たら気持ちいい。
時々大きな手で私の頭をグルーミングしてくれる。
恩返しのつもりなのかしら?。

「あーん」
「………w」
今日は猫の好物の魚にしたのに、やっぱり手からは食べてくれない。
食べて欲しいのに。
私の事を飼い主だって認めて欲しい。
私はまだ飼い主とは認められてないんだろうか。
……こんなに好きなのに。
綺麗な緑の毛並み。
怖いけど、優しい顔。
私より大きな体。
強い心。
猫じゃないような猫だけど、私には大切な猫。

「あーん」
「………w」
やっぱり今日も食べてくれない。
「…どうして食べてくれないの?⊃。Mr.ブシドーは私の事嫌い?⊃」
もう1ヶ月にもなるのに。
…そんなに私がイヤなんだろうか…。
グルーミングはしてくれるのに…。
もしかしてあれはグルーミングじゃなくて"退け"って意味なのかしら…。
初めて猫を飼ったから、猫の気持ちが解らない。
私の接し方が間違ってるのかしら…。
何かイヤな事したのかしら……。
「…ねぇ…、Mr.ブシドー…」
「………ゾロだw」
「え…?」
初めて喋ってくれた。
初めて声を聞いた。
「…俺の名前はゾロだ。変な呼び方するなw」
「………」
だからなの?。
もしかして喋ってくれなかったのは、名前が気に入らなかったから?。
「……ゾロさん」
「……なんだ」
返事してくれた。
初めて。
「あーん」
「………w」
やっぱり食べてくれな……、
「………w、…あ〜……w」
「!」
口開けてくれた。
「………?w。早くしろよw。腹減ってんだからw」
「あ」
初めて手から食べてくれた。
ちょっと強引に、私の手首を掴んでだけど。
でも。
嬉しい。
「ずっとうちにいてね?」
どこにもいかないでね。
「……うめぇ酒呑ませてくれるんならな」
笑った。
笑ってくれた。
嬉しくて、気が付いたら抱き締めていた。
大好きな、私の猫。
緑の毛並みの、大きな体。
パタンパタンと振るしっぽに見上げたら、
「―――//w」
私を見ながら、なんか恥ずかしそうにへの字口で頬を少し赤くしていた。
なんか可愛い…∨。
「…ねぇ、Mr.ブシドー」
「、。……w、……あのな…w、だから…w」
「…ダメ?。この呼ばれ方イヤ…?」
「………w」
「イヤならやめるけど…」
もうMr.ブシドーで呼び慣れてるから、こっちの方が呼びやすい。
「………w。…好きにしろよ…w」
「∨、うんっ」
承諾が出たから嬉しくて。
また体に抱き付いた。
「…………//w」
雰囲気でちょっと困惑してるのが解る。
しっぽもさっきより大きく揺れて。
困ってるみたい。
でもじっとしてて、イヤがらない。
「大好きよ、Mr.ブシドー」
あったかい体温。
がっしりした体。
頼もしくて、存在感があって。
「…ずっとうちにいてね?」
「………おう…//w」
胸に着いた片耳に直接聞こえた、低めの照れくさそうな返事。
それに安心して、ぎゅうとMr.ブシドーの体を抱き締めた。


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