お題部屋

□あくびの途中で
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「ふわぁ〜
「ふああああ〜ぁ…」
………」
あくびの途中で聞こえたあくびの声。
その声に、つい出ていた私のあくびは止められた。
隣に座ってるMr.ブシドーは眠たそうな目で、テーブルの上に広げた本を読んでいて。
「…………」
それから目を離して、自分の手元の本にその目を向ける。
静かな部屋の中。
窓からの日の光が、部屋の中を温めて。
私がページを捲る音しか聞こえない部屋。
「…Mr.ブシドー…?」
「…ん〜…」
返ってくる、気の入ってない返事。
「…ちゃんと本読んでる…?」
「…ん〜…読んでる…が、頭には入ってねぇ…」
(…………)
Mr.ブシドーの返事に思う。
絶対読んでない。
だだ字面を眺めてるだけ。
無表情の横顔と、全然黒目が動いてない、いつも以上に座った目。
開いた本を眺めてるだけの目。
「………明日までに感想文書かなきゃいけないのよ…?、それ…」
「……解ってる……」
やっぱり返ってくるのはさっきより気の入ってない返事。
半分寝てるような声。
「けど入らねぇもんは入らねぇ……」
「…もう。出来なくても手伝わないわよ?、私」
「……いいさ…。教師も俺がこんなん出来るとは思ってねぇよ……」
「…確かにそうだろうけど……」
でも私は先生に言われてる。
『お前はあいつの彼女なんだから、お前がしっかりあいつの勉強の監督しろ』って。
(…………)
「ふああ
「、。ふあぁぁ…」
あああ〜〜……」
ふいに聞こえたあくびの声に、今度は私がつられてあくびが出た。
(………眠い…)
あくびは移る。
でも眠気も移ってくる。
Mr.ブシドーがすごく眠そうだから、私まで眠くなる。
「………いかん…やっぱりもう限界だ……俺はちぃと寝る…」
「………もう…」
両腕を枕に顔を向こうに向けて、開いた本の上に体を伏せたMr.ブシドーに。
私も眠りたい気分になる。
「…………」
…静かな部屋。
陽の暖かさが心地良くて…。
隣から聞こえてきた、気持ちよさそうないびき……。
(…………ひどい……)
私だって眠いのに……。
一人で気持ちよさそうにいびきかいて………。
…明日までに感想文書かなきゃいけないのに………。
…全然頭に文章が入ってこない………。
(…………。…Mr.ブシドーのせいだ………)
横ですっかり夢の中なんだろうMr.ブシドーの様子に、もう私も眠りたくなって………。
私だけ頑張って宿題してるのがバカみたいに思えて………。
(…………───)
Mr.ブシドーの伏せてる背中を枕にして、気持ちよさそうないびきを子守歌に、起きとく気持ちを手放した…………。


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