原作サイド─数年後─

□ペット
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『『わああん!!!、とおさまのバカー!!!』』
『親に向かってバカとはなんだ!!!w。駄目だ!!!w、居た所に返してこい!!!w』
『『やだーーーっっ!!!』』
(?)
ちょっと長引いた対談が終わって、Mr.ブシドーを待たせてる部屋に戻ったら、部屋の中からMr.ブシドーとゾアとビナの言い合うような声が聞こえてて。
「どうしたの?。なにかあったの?」
「!、ビビ!!w。お前からも何とか言え!!。もう俺の手には負えねぇ!!w」
ドアを開けて訊いたら、勢いよくこっちを見たMr.ブシドーが、加勢を求めてきて。
珍しく必死な様子で助け船を求めてるMr.ブシドーと、そのMr.ブシドーの向こうで泣き声だけ聞こえてるゾアとビナに、まだ理由が解らないまま部屋に入った。
「どうし」
「「かあさま!、これ飼っていいよな!?」でしょ!?」
3人に近付きながら訊こうした時に、ゾアとビナが同時に訊いてきた。
(飼う?)
「だからそれは無理だっつってるだろ!!w」
ゾアとビナの2人ともMr.ブシドーの左右から覗き込んできてはいるけど、Mr.ブシドーで遮られてて、何の生き物かが見えない。
でも飼うって言葉から、犬か猫かでも拾ってきたのかと思った。
「いいわよ、別に飼っても。私も動物は好きだし、何、犬?、猫?」
Mr.ブシドーは宮殿で動物を飼うのはダメだと思ってるのか、必死に2人を説得しようとしてて。
でも動物を飼う事は情操教育にもいいって聞いた事もあるから、賛成しながらMr.ブシドーの向こうにいるゾアとビナを覗き込んだ。

「これ!!」
「え…w」
ビナが抱いた生き物をビビに見せた瞬間、ビビの顔から笑みが消えた。
「犬や猫なら俺も一応お前に相談するさ…w」
その生き物を、表情を固めて見ているビビに、溜め息混じりに言った。
対談中のビビを待っている間に、遊びに行っていたゾアとビナが帰ってきて、『とおさま!、これ飼いたい!』と二人で声を揃えて言いながら俺に見せてきた、そして今もビナが頑固に腕に抱いている生き物。
サンドラオオトカゲ…の子供。
子供でも人間の赤ん坊くらいの大きさのそのトカゲの仔を持ち上げてビビに見せているビナ。
これも、まだ普通のトカゲならビビに飼う口添えをする余地もあるが、あんなデカくなるトカゲを飼うなんざ、将来的に無理がある。
「ほんとに飼っていいのか!?、かあさま!!」
「わあい!∨」
「Σ、ま、待ちなさい!!w」
ビビの賛成の言葉に喜んだゾアとビナに、二人が飼いてぇと言っているものの正体を知ったビビが声を出した。
「それどこから連れてきたの!!w⊃⊃。ダメよ!!w、返してくるから貸しなさい!!w⊃⊃」
(?w)
ビビは犬や猫だと思っていたみてぇで、それがあのサンドラオオトカゲの子だった事に一気に反対意見に回った。
が、それは解るが、それにしちゃいきなり随分慌てだしたというか、焦ってやがるみてぇなビビに疑問が湧いた。
「えー!!、やだーっ!!。かあさま今いいって言ったじゃない!!」
「まさかサンドラオオトカゲだとは思わなかったのよ!!w。ペットが欲しいなら他の動物にしなさい!!w。とにかくそれだけはダメ!!w」
「…どうした?w。なんか粟食ってねぇか?、お前w」
ビナからトカゲを奪おうと手を伸ばすビビからそれを遠ざけるビナを見ながら、やたらと焦っているビビに訊いた。
「将来的にあの大きさになるから反対するのは解るが、今すぐデカくなるってわけでもねぇだろうに、そんな焦らねぇでも…」
「サンドラオオトカゲはトカゲでは珍しい子育てするトカゲなのよ!!w」
「あん?」
言った俺に焦りの顔を向けてきたビビが言ってきた、あのトカゲの習性を聞いて。
だが…、
「…それでなんでそんなに焦って…」
「サンドラオオトカゲはオスとメスが共同で子育てするの!w。もし子供が敵に襲われたら夫婦で助けるし、連れ去られたりしたら、夫婦で子供を取り戻しにくるのよ!w」
「……へぇ…」
ビビの様子に訊いた問いが終わる前にビビが言ってきたトカゲの生態に、あのトカゲがそんな子煩悩な生物だった事はちぃと意外で。
まぁあの巨体がこのアルバーナの町に来ると思えば、ビビの焦りようは解らなくもねぇ。
…が…。
「…だが、いくらあの大きさだとしてもたかだかトカゲだろ。そんなびびらねぇでも」
「怒ったサンドラオオトカゲはもうトカゲとは言えないのよ!!?」
また俺が訊き終わらねぇ内に言ってきたビビの顔は、さっきより焦ってるみてぇで。
声を荒らげた、ただならねぇ様子のビビの口が続けざまに動いた。
「遠い昔…カトレアの近くに小さな町があったそうなの…。その町の子供がサンドラオオトカゲの子供をペットにしようとして、町に連れて帰ったの…w。そしたらその親トカゲがつがいで子供を取り返しに町にやってきて…。2匹の怒ったサンドラオオトカゲに暴れられて、その小さな町は壊滅してしまったって文献にも残ってるの…」
「……w」
表情を強ばらせながら言うビビの話に言葉が出ねぇで。
だがまぁ、あの巨体が暴れりゃあ、下手な武器程度じゃ太刀打ちしても敵やぁしねぇだろう。
「…だがどうやって子供が連れられた場所が解るんだ…?」
子供を奪い返しに来ると聞いた時から頭の隅にあった疑問をここで言うと、
「どうやらニオイを辿るみたい…w。サンドラオオトカゲの子供は親トカゲにしか解らないにおいを持ってるらしいの…」
表情はまだ固ぇが、言葉の勢いは落ち着いた声が返ってきた。
(…………)
ならこの子トカゲがここに居る事が解るのも時間の問題だろうし、そいつらがここに来りゃあかなりの被害が出るだろう。
「………」
以前の俺なら『そんなもん俺がぶった斬ってやるよ』と言えた。
…だが…今はそれが言えねぇ。
今は俺にも子供がいる。
もしゾアとビナが連れ去られりゃあ…、俺だって平静でいられるか解らねぇ。
「…聞いただろ、ビナ。そいつを連れてきた事が親にバレたら、このアラバスタが壊されちまうかもしれねぇんだ。ほれ、そいつを寄越せ。今のうちに返しに行くぞ」
「でも!⊃⊃、とおさまは強いんだもん!。サンドラオオトカゲだって倒せちゃえるでしょ!?⊃⊃」
トカゲを受け取ろうと手を差し出して、だがビナは俺の手から更にトカゲを遠ざけて、まだ頑固に抵抗してくる。
「俺はそいつらは倒せねぇ。子供を奪われて取り返しに来たそいつらを倒すようなマネは、俺には出来ねぇからな」
ビビがさっき焦っていたのも、俺がもうそれをできねぇのを解っていたからだろう。
昔、俺があの大トカゲを倒した時を見ていたビビだから、いくら怒り狂ったあのトカゲでも、今や王下七武海の1人となってまでいる俺の敵にはならねぇのは解っている筈だ。
だが今の俺は父親として、子を思う親の気持ちが解る。
そしてビビは俺が父親として意識が変わった事に気付いているみてぇだから、子を奪い返しにきた親トカゲの相手を俺がしねぇと解って、だからあんなに焦っていたんだろう。
「う〜〜〜…、でもぉ…⊃」
この頑固さは俺に似たのかビビに似たのか、よっぽどこのトカゲが気に入ったみてぇに、抱いたトカゲを口惜しげに見下ろしている。
「そのチビだって親の所に帰りてぇはずだ」
「ゾアとビナだって、パパとママから離されるのはイヤでしょう?」
「「ぅ………、………」」
俺達が言うと、俯いてトカゲを見ていたビナと、ビナと同じくトカゲを見ていたゾアが俺達を見てきた。
そしてまた俯いてトカゲを見たビナが、渋々ながらの態度で抱いていた子トカゲを俺達に差し出してきた。
「いい子ね、じゃああなた達も一緒にこの子を返しに行きましょ。この子をどこから連れてきたのか教えてちょうだい?」
受け取ったトカゲを俺に渡してきたビビがビナの頭を撫でる。
「歩いて行くような悠長な事もしてられねぇな。カルガモ部隊で行くぜ」
「ええ」
言うと、返事をしながらビビが立ち上がり、ゾアとビナはまだ名残惜しげにトカゲを見ている。
そのゾアとビナも連れて、足になってもらうカルガモ部隊の厩舎に向かった。

 

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