原作サイド─数年後─

□真実
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「うえ゛えぇ〜〜〜〜」
「ゴメンねー⊃、痛いねー⊃、すぐ終わるからねー?⊃」
いくら細い針と言っても、まだ幼い腕に注射の針が入るのは見ていても可哀想で。
でも生後八ヶ月目の大事な検診。
体重も身長も測って、今回は念の為に血の検査もしておく為に、痛さに泣くゾアをあやしながら、ホウ先生が必要な量の血を抜き終わるのを待つ。
「はい、終わりましたぞ。さすがはこのアラバスタの王子。ビビ様とゾロくんの血もあってか、この程度のぐずりで済むとは」
「ふふっ。将来大物になるわね」
嬉しそうに言うホウ先生に、私もゾアの強さが嬉しくて、でもやっぱりちょっと痛さに泣いちゃったそのゾアをあやす。
「では次はビナ様を」
「ん…。ビナ、ちぃと我慢しろ」
私の隣で様子を見てたMr.ブシドーが抱いてるビナの腕にホウ先生が消毒をして、ゾアと同じ幼い腕に注射の針が入る。
「──〜〜〜〜〜」
「…ん…?」
「…泣かないわね…」
今にも泣きそうに顔を歪めてるビナだけど、ゾアみたいに泣いたりしなくて。
「えらいな、ビナ。おめぇは泣かねぇな」
「これはまた、ゾア様以上に我慢強い。よし、終わりましたぞ」
止血用の脱脂綿で押さえながらビナの腕からも注射が抜けて、ゾアと同じように小さな腕に付いた小さな針傷に絆創膏が貼られた。
「では早速検査へ。結果は一時間後に」
「ええ、じゃあ私達は部屋に戻ってるから」
あとはホウ先生にお願いして、医務部屋を出て自室に戻る。

「それにしても…、まさかビナの方が泣かねぇとはな」
「、」
ベビーベッドに寝かせた二人を見てると、隣で同じく二人を見ながら言ったMr.ブシドーに、
「痛みには女の子の方が強いのよ。子供を産む痛みに耐えなきゃいけないんだから」
「…そりゃそうか」
言ったら、納得したみたいに声を出した。
「なんともなければいいわね、血液検査」
「おめぇと俺の子だ。心配なんざ要らねぇさ」
「…うん」
Mr.ブシドーの言葉にそうねと頷く。
Mr.ブシドーは子供の頃から今と変わらず健康だったと思えるし、私だって風邪くらいは引いた事はあったけど大きい病気はした事はなかった。
(…でも二人を護っててね、ママ)
今までもずっと天国から私やパパ達を、そしてゾアとビナが生まれてからは二人も見守っててくれてるだろうママの写真を見ながらお願いして、Mr.ブシドーと二人で結果が報告されるのを待つ。

「身長も体重も問題無く増えて、順調にご成長されております。血液にも病気などは見られませんでした」
「よかったぁ…」
昼寝から起きたゾアとビナをMr.ブシドーとそれぞれ抱きながらホウ先生の診断結果を聞いて、内心から安堵のため息が出た。
「ですが…w。一つ問題が…w」
「えっ?」
異常のなかった診断結果に心配の気持ちが消えて、自分の腕の中のゾアとMr.ブシドーの腕の中のビナを見ていたら、ホウ先生の言い出しにくいみたいな口調で言われた"問題"の言葉に、瞬間で安心の気持ちが不安に変わった。
「もっ問題って!?w⊃⊃」
「はい…w、それがゾア様とビナ様の血液型なんですが…w。ゾア様はF型で問題は無いのですが…、ビナ様はXF型となっておりまして…w」
「………え?」
焦った気持ちの中で聞いた、思いもしなかった血液型の事。
しかもその血液型が思っていたものと違う事をホウ先生の口から聞いて、一瞬訳が解らなくて。
「えっ?w。XF型?w」
でも実際に聞いた言葉に、ほんとにどういう事なのか、益々意味が解らなくなった。
私とMr.ブシドーはF型だから、XF型なんて血液型にはならない筈なのに、そんなあり得ない血液型がビナから出た事に、ホウ先生の調べ間違いかとも思って。
「なんだ、ビナ。おめぇが俺と同じなのか」
「えっ!?w」
「なんですと?w」
ホウ先生に確かなのか言おうとした時、横からMr.ブシドーの声がして。
ホウ先生と一緒にMr.ブシドーを見たら、抱いてるビナを見ながら嬉しそうに表情を緩めてるMr.ブシドーがいて。
「ミっMr.ブシドーっ!w。あなたXF型なの!?w」
「ああそうだ」
驚いて慌てる私と違って、Mr.ブシドーは平然と私を見て言ってきた。
「えっ!?w、Mr.ブシドーF型じゃないの!?w。私ずっとあなたも私と同じF型だと思って!w、!、それにあなたあの内乱が終わったあとの治療のあと、輸血の話になった時に何も言わなかったじゃない!w」
「そうですぞ!w。私もあの時あなたのお仲間達からあなたの血液型を聞いて、てっきりそうだとばかりっ!w」
「そりゃあいつらにも血液型は言ってなかったからな。あいつらも俺がF型だと思い込んでたんだろ。それに別に言う必要も無かっただろ。俺は輸血なんざしねぇんだから、血液型が間違ってようと関係ねぇからな」
「────」
シレッと言ってくるMr.ブシドーに、でも…w。
「でっでももしあの時強引に輸血される事になってたらどうする気だったの!?w。違う血液型が入ったら死んじゃうのよ!?w」
「その時ゃいくらなんでも言うさ。だがおめぇらもあの時力ずくでも来なかったしな」
「「────」」
飄々と言ってくるMr.ブシドーの態度と言葉に、ホウ先生と二人でもう何も言う言葉が出なくて。

「…あなたってXF型だったのね……」
「、なんだ。まだ言ってるのか」
ホウ先生が部屋から出て行ったあと、ゾアにおっぱいをあげながら言ったら、ビナを抱くMr.ブシドーが少し聞き飽きたみたいな口振りで言ってきた。
「…あなたの血液型の事はもう納得したわ…」
「、。じゃあなんだよ」
一旦抱っこしたらなかなか下ろさないMr.ブシドーに、なんだかビナに抱き癖がつきそうで。
でもそんなところがまたMr.ブシドーのちょっと意外なところで。
「私、ずっとあなたがF型だって思ってたから…」
意外に子煩悩なところがある事もゾアとビナが生まれてから知ったけど。
これもXF型だからかなぁ…とか、F型だったらどうだったんだろう…とか思ったり。
「なんだかそうじゃないって解ったら、あなたの見方が変わったというか…」
「…アホくせぇ…」
Mr.ブシドーに言ったら、無表情の顔と呆れたみたいな白けたみたいな声で、緩く吐き捨てた。
「血液型なんてのはただ単に血の型の小せぇ違いなだけだろ。そんなもんで相手を見るのも、相手の性格を決めつけるのもくだらねぇ事だ。血で性格なんざ決まりゃしねぇし、どんな血液型でも俺は俺だ」
「………。…そうなんだけど…ね…」
確かにMr.ブシドーの言う通りではあるんだけど、やっぱりちょっと考えてしまうのは仕方のない事でもあると思う。
「たく…。女ってのは特にそんなくだらねぇ事に拘りやがる。血液型やら、それ関係の占いやらイメージやらそんなもんが好きそうなナミやロビンならいざ知らず、おめぇまでそんなもんを気にするとは、やっぱり女ってのはどいつも変わらねぇんだな」
「、。そんな言い方しなくてもいいじゃないっ?。世間で言われてる事なんだからつい考えちゃうし、仕方ないじゃないっ」
「「っうぇ……」」
「あ…」
Mr.ブシドーの物言いにちょっとカチンときて、つい声に力が入ったら、ふいにおっぱいを飲んでたゾアとMr.ブシドーが抱いてるビナが同時にぐずり始めて。
「…。みろ。おめぇがキツい物言いするから泣いちまったじゃねぇか」
「っ#。そんなにキツくは言ってないでしょっ?。それにそれはMr.ブシドーがっ」
「「ビあああああっっ!!!」」
「Σ!w。ごっゴメンゴメンっw⊃⊃、驚いたわねっw。ママ別に怒ってないからっw。ゴメンゴメンっw⊃⊃」
「たく…。ほれビナ泣くな。何でもねぇから」
子供ってほんとに親の雰囲気を察知するのに敏感で、私が怒ったのを感じたのか本格的に泣き出して。
焦りながらゾアをあやす私の向こうで、Mr.ブシドーが冷静にビナをあやす。
「………変わりゃしねぇよ…。俺は何も…」
(、…)
ビナを泣きやませながら言ったMr.ブシドーの表情はいつもと変わらなく見えるけど、静かに聞こえた声が、なんだか少し寂しそうに感じて…。
「………。…ごめんなさい……⊃」
確かに血液型くらいの事でちょっと考えすぎてた自分に、Mr.ブシドーに悪い事したと思って謝った。


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