原作サイド─数年後─

□いびき
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「ぐが〜〜」
「ぐご〜〜〜」
「す〜〜」
(…………)
Mr.ブシドーを挟んでゾアとビナ、昼寝してる三人を眺める。
今までずっといびきをかく事がなくなっていたMr.ブシドー。
なのに、またそのいびきが戻ってきた。
かかない時もある。
私とベッドで眠ってる時。
その時は静かなのに。
ゾアとビナ、二人と眠る時。
というかゾアと眠る時、二人揃って、競い合ってるみたいに大いびきをかいている。
そして今もそう。
(移るのかしら…。いびきって…)
成長してわんぱくに育ってきたゾアとビナ。
起きてる時のやんちゃぶりはビナの方がちょっと上だけど、ゾアは眠る時、いびきをかいて眠るようになってきた。
いかにもMr.ブシドーの子供っていうような、豪快ないびき。
そしてその頃から、Mr.ブシドーにあの昔の大いびきが帰ってきた。
ゾアのいびきにつられるみたいに。
(……うるさくないのかしら……)
ゾアと二人で大の字になっているMr.ブシドーの左側で、こっちは静かに体を丸めて眠ってるビナ。
Mr.ブシドーは最近次第にまた宮殿から足を遠退けて時計塔に戻るようになったから。
たまにしか宮殿に来なくなったMr.ブシドーといる時間を喜んでるみたいにパパに寄り添って、大人しい寝息を立てている。
真横で響く大いびき二つなんてまるで聞こえてないみたいに。
(………大物だわ…)
私なんて子供の頃、一度だけママがいない寂しさにテラコッタさんと寝てみたくなって、イガラムの部屋で三人一緒に眠った事があったけど。
カルーのかくいびきに慣れていた頃でさえ、それより大きかったイガラムのいびきに、耳を塞いで部屋から逃げたのに。
あの時のイガラムのいびきなんて目じゃない程の大いびきが二つもあって。
平気で眠ってるビナに、私以上の逞しい王女になる確信を感じた。

「…Mr.ブシドー…」
「ん?」
「…今日…泊まっていかない…?…//」
夕飯を食べたあと、時計塔に戻ろうとドアに足を向けたMr.ブシドーを引き止めた。
ゾアとビナが自分の事を自分で出来るようになり始めてきた頃から、時計塔に戻り始めたMr.ブシドー。
一時ずっと宮殿にいて私の部屋で寝泊まりしてたから、大きな体の存在が無くなって、ゾアとビナにも子供部屋を与えて別々に寝るようになったら、一人の部屋がなんだか静かで広く感じて。
その広さを埋めたかったのと、たまには夫婦二人きりの時間を持ちたくて。
ゾアとビナも先に部屋に戻ったから、今夜はMr.ブシドーと二人でいたい気分でMr.ブシドーに言った。

「ん……っ、あっん…っ」
ベッドが軋む音も久しぶりに聞くくらい、随分としていなかった行為。
臨月が近くなった頃から、ゾアとビナの二人が産まれてからもずっと、Mr.ブシドーは私の部屋に泊まってはいたけど。
今日までそんな事に気も向かなかったくらい、私もMr.ブシドーも自分の役目に集中してた。
「っみす…たっ」
「…あんまりでけぇ声出すな…。隣に聞こえたらあいつら起きてくるだろ…」
「ん…っ、だっ…て…んんっ」
久しぶりの肌の触れ合わせだから、感覚が過敏になって。
Mr.ブシドーの入ってるところから起こる感覚に、つい声が出てしまう。
「だめ…っ、そんな動いちゃ…っ、ん…っ、あっん…っ」
体に重なるMr.ブシドーの首に腕を絡めて、体を揺さぶるMr.ブシドーの動きを弱めさせようとしてても全然意味が無くて。
「そんなに動いてねぇだろ…っ…。これでもかなりセーブしてるんだぜ…っ…」
「でも…っ、もっとゆっくり…っ」
「これ以上は無理だ…っ…。無茶言うな…っ…」
「んっんっ、あっ、あっんっ」
たまにしていた時に比べたら確かにセーブはしてくれてるみたいだけど、声も抑えられないくらい私には刺激が強くて。
「めっ、だめっ、みすったっ、だっめっ」
「──いいからおめぇは声抑えるのに集中してろ…っ。出るなら俺の肩でも噛んでおけ…っ」
「んはっ!、あっ!、んっ!、んっんっ!」
急に動きに勢いがついて、もう抑えてられない声を消す為にMr.ブシドーの肩に歯を立てた。
「んっんっんっ!、んっくんっんっ!」
「っ!、はっ!、はっ!、はっ!」
しがみついて肩に歯を立てる耳元でMr.ブシドーの息を切らす声が聞こえる。
滲むくらいだった汗が玉になって伝ってくるくらい激しくなった動きに、ただ必死に声を出さないようにMr.ブシドーの肩を噛み締めて、快感に耐えて。
「んっ!、んんっ!、んっ!!、んーーーーっっっ!!!」
「!!、っく!!、─────っっっ!!!」
今は多分大丈夫な日の期間だろうから、中に直接放たれた熱さが溢れかえって。
(ぁ…………)
あまりの絶頂感に、弾けた意識がそのまま真っ暗になった。

(…………)
"ぐ〜〜〜、か〜〜〜"
(………ん……)
なにか聞き慣れたような音を夢の中で聞いていて。
Mr.ブシドーの体と腕の温さの中で目を開けたら、筋肉質な胸に走る見慣れた古い傷跡が目に入った。
「…………」
「ぐ〜〜〜。か〜〜〜」
意識も目も覚めてみると、その音は実際に聞こえてる音だった。
私の頭の上から。
(……Mr.ブシドー──)
"確かに"なんてものじゃない、暗い静かな部屋に一つだけ聞こえる騒音。
その音と事実に絶句する。
(いびきかいてる───)
アラバスタに留まって、二人でベッドに眠る関係になってからは殆どかかなくなった、かいてもほんの小さい音だったいびき。
それがその音で目が覚めたくらい大きくなって、またいびきをかいている──。
(─────)
なんかショック。
今まで静かだったから、急にかき始めたいびきに。
理由は特にはないけど、何故かショックを感じた。
(───………)
ショックに思いながらも、もう一度眠る為に、温い体に体をうずめ直す。
明日も早いし、特に明日は大事な対談もあるから、ちゃんと眠っておかないとと、目を瞑った。
(……─────)
──寝られない。
寝られなくなった。
「ぐ〜〜〜。くか〜〜〜」
今までずっと静かだった部屋の中。
そこにきたいびきの音に。
頭のすぐ真上から聞こえてくるその音が、気になって眠れない。
寝てられない──。
「…………w」
ちょっと起こそうかと思って、でも起こしたところでいびきなんてどうにもならない、どうにも出来ないから、起こして"いびきを止めて"なんて言っても無理だから。
「ぐか〜〜〜。こ〜〜〜」
「…………w」
19の頃よりかは静か(?)な音だけど、いびきはいびきで。
でも19の時より静かなのはまだマシな事なのかしら…wと、少し無理やり自分を納得させて。
イヤでも意識に入ってくる音を意識しないようにして、それでも気になるいびきを聞きながら夜を過ごした…。


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