原作サイド─数年後─

□強さ
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お腹に宿る命。
自分自身のお腹の中に。
今自分のこのお腹に命が、赤ちゃんが宿ってると思うと、まだなんだかちょっと信じられない気もする。
ずっと一人で生きていく気でいたから。
ずっと女王として、私が王としてこの国を治めていくつもりだったから。
結婚も、ましてや妊娠なんてする事はないと思ってたから。
でも今確かにこのお腹には赤ちゃんが宿っていて、それは私自身が望んだ事。
「…………」
窓から見るアルバーナの町。
アラバスタの国。
この国を存続させていく為に、跡継ぎは必要だと思ってた。
でもそれは私の血を継いでいなくてもいい。
ネフェルタリ王家の血を継いでいなくても、私の理念を、アラバスタを護り、平和な国で治めていくという心さえ継いでくれれば、王族の血なんて関係ない。
この国が好きだと言ってくれる、町の子供達。
その子達の中で最も王に相応しく、私が口にする『国は人』の理念を強く理解してくれている青年がいてくれるのなら、その子を次期アラバスタ王にしようと思ってた。
「…………」
でも、そう思ってたのに、今は妊娠してる。
本当に、自分の体で命を育ててる。
私の血を継いだ子。
そして…世界最強の剣士の血を継いだ子。
「…………」
視界に入るアルバーナの町並み。
その中、すぐそこに見える時計塔。
そこに座るMr.ブシドー。
いつも通り、町を見渡しながら不審な気配を見張ってる。
このアラバスタを護ってくれてる。
だからMr.ブシドーの子供ならいいと思った。
世界最強の剣士。
強い人。
今もアラバスタを力で護ってくれてる。
用心棒として、そして夫として。
その彼と子供が欲しいと思った。
アラバスタの未来を継ぐ子供。
私の理念と、Mr.ブシドーの強さを継いだ、その子なら強い王になる。
力でも国を護っていける。
世界最強の剣士の血を継いでいるんだから。
だから望んだ。
妊娠を。
(…独断だったけど…)
ちょっと計画的だった。
Mr.ブシドーと夫婦として"関係"も持ってたから、それに乗じて。
Mr.ブシドーと相談もせずに、私の独断で子供を作る事を決めた。
Mr.ブシドーはいつも自分の事は勝手に決めるから、だから私も勝手に決めた。
元々そんなにお互いの事に干渉し合わないし、Mr.ブシドーはMr.ブシドーで、私は私で国の事考えてるし。
他国との接し方は時々Mr.ブシドーに訊いたりするけど、国の事で相談し合った事はないから。
私は政治、Mr.ブシドーは力で国を護ってて、Mr.ブシドーは私にとっては王だけど、でも正式な『王』じゃないし。
「…ふふっ」
自分の事は自分だけで勝手に決めて、勝手にしか動かないMr.ブシドーと、国の事ではMr.ブシドーをほったらかして勝手に決める私。
なんか似てる事が可笑しくなった。
(…………)
妊娠した事が他の国の王や王妃にも知れ渡った時、かなり非難を浴びた。
未婚で妊娠した事。
ふしだら女王、 汚い王女、一国を治める人間の行動とは思えない。
今でも陰で言われてる事を知ってる。
でもそんなの気にならない。
どう生きようと、どう決めようと、私の勝手。
このアラバスタを平和なまま存続出来るのなら、そんな非難なんて、なんて事ない。
それに一人で国を治めようとする私の姿勢に共感してくれる国もある。
頑張れ、応援してるからと、手紙や、このアラバスタまでわざわざ足を運んで手を握ってくれる女王もいる。
だから負けない。
そんな小さな非難には負けない。
私はこのアラバスタの女王なんだから。
砂の国の民はみんな強いんだから。
母親としても、アラバスタの人間としても、私はこれからも強くなる。
この子達と一緒に、Mr.ブシドーとこの国のみんなと一緒に。
これからも強く生きていく。


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