原作サイド─数年後─

□姫懐妊
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「ゾロくん!!。ゾロくんー!!w」
(あ?)
いつも町を護ってくれている礼だと貰ったくだもんをかじりながらアルバーナを歩いていると、どっかでイガラムのおっさんの大声で俺を呼んでる声が聞こえて。
「おう、どうした、おっさん」
「おお!!、ゾロくん!!w。随分探したぞ!!w」
見えたおっさんは、かなり慌てた様子で、見つけた俺に走り寄ってきた。
「大変だゾロくん!!w、ビビ様が!!」
「!!!」
「あっ!!、ゾロくん!!w」
おっさんの尋常じゃねぇ慌てっぷりと、その口から出たビビの名に、あいつに何かあったと、おっさんの話を聞く間も惜しく宮殿に走った。

「ビビ!!!。!?」
「Mr.ブシドー」
ビビの部屋に飛び込むと、ビビはベットの上に上半身を起こして座っていて、その横にチャカ、ペルと共に医師二人が付き添っていた。
「ごめんね、驚いたでしょ?。私はゆっくりした時に言おうと思ったけど、イガラムったらすぐあなたに知らせないとって、止める間もなく出て行ったから…」
(…………)
走り寄った俺にチャカとペルが場を空け、二人の間で足を止めた俺に言ってくるビビを見る。
ベッドの上のビビは、おっさんの慌てっぷりと比べると、重大な様子は見られねぇ。
だが大丈夫ならなんでベッドにいるのか。
イガラムのおっさんの慌てっぷりも尋常じゃなかったし、だが今のビビにゃあ重大さを隠してる様子も誤魔化してる雰囲気もねぇ。
「…どうしたんだ一体…。具合が悪ぃんじゃねぇのか…」
「え…?。Mr.ブシドー、イガラムに聞いてないの?」
「…ああ…w。…なんか焦りながらおめぇの名前言ったから、なんかあったと思ってよ…w。話聞かずに走ってきた…w」
そういやなんか呼び止めようとしてたような気もするが、そんな事構ってる余裕も無かった…w。
「ビビ様、ならばご自分で言われますか?」
「ゾロくんもビビ様の口から直接聞いた方が喜びも大きいでしょう」
「…うん、そうね」
「?」
訊いた医者と、そう言ったペルの言葉に頷いたビビに、その反応と俺が喜ぶという意味がどういうことなのか解らず。
「あのね…?、Mr.ブシドー」
俺を見てきたビビに、次の言葉を待った。
「私…、赤ちゃんが出来たの」
「………………」
ビビが言った事がよく解らねぇ。
確か赤ん坊が出来たとか、そんな事を言ったような気がして。
「ゾロくん?」
「どうしたんだ?」
(は……)
頭が茫然とした中、耳にチャカとペルの声が聞こえて我に返った。
そしてもういっぺん頭の中で反芻する。
ビビの言葉を。
『私…、赤ちゃんが出来たの』
(…………)
その言葉の意味が、やっとはっきり理解出来た。
そして今度はその言葉が信じられねぇで。
「?。…Mr.ブシドー…?」
無意識に茫然としていた中でも視界に入っていた、ずっと俺を見ていたビビが、動きも忘れていた俺を首を傾げて呼んで。
「………本当か…?」
信じてねぇ訳じゃねぇが、それでも信じられねぇで、まだちぃと茫然としながら確認の為に訊いた。
「ええ、ほんとよ。今三ヶ月目ですって」
「…………」
そりゃあ確かに俺達はたまにしていて。
子供が出来ても当然で。
だが実際出来たと聞かされると、頭がついていかねぇ。
嬉しいという感情がてめぇの中に湧いてねぇ。
放心状態。
嬉しくねぇ訳じゃねぇが、感情がねぇ。
「…Mr.ブシドー…?」
「…………」
空白の頭にビビの声が入ってきて、無心のままビビを見返す。
「どうしたの…?。大丈夫…?」
「…………」
訊いてくるビビの顔。
その顔を見ても、何も感情が湧かねぇ。
「……解らねぇ…」
「え…?」
「なんか頭が空っぽでよく解らねぇ…」
「…………」
ビビを見ながら言ったら、ビビは真っ直ぐ俺を見ていて。
「…ただ……」
その目を無心で見返しながら声を出した。
「嬉さはある……。…だが頭がついていかねぇんだ」
「……うん」
茫然としながらビビに言うと、俺を見返すビビの表情が和らいだ。
「Mr.ブシドー」
笑んで俺を呼んだビビが、ベッドにつく俺の手の上に手を乗せてきた。
(…………)
まだ茫然とする頭ん中、見える右の目にそのビビの笑みだけが映る。
「アラバスタの未来を紡ぐ、継承者の誕生よ」
「…………ああ」
『継承者』
空っぽの頭と体ん中、その言葉がやけに胸に響いて。
そしてようやく実感と共に、大役を果たしたような充実感を感じて、笑んでくるビビに笑みで返した。
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