原作サイド─四年後─

□腱鞘炎
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「?」
体を起こしがけに、手首に感じた違和感。
痛み。
だが微か、そして一瞬。
ズキリとでもねぇ、ほんの僅かな痛み。
意識して動かしてみたが、何ともねぇで。
気のせいかと、服に手を伸ばした。
(…………)
掴んだ時にまた感じた。
一瞬の僅かな痛み。
(…………?)
持ち上げようとして、また違和感。
手首から親指に続く筋がこそばゆいみてぇな感じがして、なんか親指に力が入れにきぃ。
「…どうしたの…?」
「、。……何でもねぇ」
横から聞こえたビビの声に顔を向けると、いつの間にか起きてたらしく目を開けていたビビ。
それに答えてまた顔と視界を手に戻して、もういっぺん手首を回してみたがやはり何ともなく、小せぇ事だと、何でもねぇ部類に入れて気にしねぇ事にした。
(…………)
服を着るのに動かす度に、瞬間的に微かに痛む。
どうやら親指に連動してるらしく、親指に力が入る度に痛みが起こる。
その親指もなんかこそばゆくて、力が入りにきぃ。
「…………」
何なんだと、肩掛けを一旦シーツの上に置いて、手首を回してみる。
「…もしかして手首が痛いの?」
「……ちぃとな」
ずっと見てたのか、また訊いてきたビビの声に手首を見ながら返すと、視界の端にシーツで押さえながら体を起こしたビビが入ってきた。
「見せて。どこら辺が痛い?」
「…力入れた時に一瞬この辺がな。親指もなんかこそべぇみてぇで力が入れにきぃ」
シーツを体に巻いて俺の手を取ったビビに、手首を持って親指で痛みが起こる箇所をゴリゴリと押さえると、
「…腱鞘炎かしら…。ホウ先生に診てもらってきたらどう?」
それを見ながらちぃと首を傾げたビビが言ってきた。
「大袈裟だ。トレーニングしてりゃその内に治るさ」
「でも酷くなったら…。軽い内に診てもらわないと悪化したらトレーニングも出来なくなるわよ?。ね?、診てもらうだけ診てもらったら?」
「…………」
説得してくるビビに、心配性なこいつは言い出したらちぃとやそっとじゃ引かねぇし、真っ直ぐ俺を見てくる目に仕方ねぇなと渋々腰を上げた。

「軽い腱鞘炎ですな。しばらくトレーニングは控えておいた方がいいでしょう」
「…………」
宮殿のお抱え医師の出した診断はビビの言った通りで。
だが、湿布を貼られ、それが剥がれねぇように包帯を巻かれた手は症状に比べりゃ随分と大仰な見た目になって。
「…世話になった。…………」
診察が終わって、医務室のドアに近付きながら、大仰なてめぇの手を見る。
軽い違和感だけで別に不自由も無く動かせていた手は、包帯のせいで動かしにくくなって、後ろを見ると医師は後ろを向いていて。
見てねぇから解いちまえと、留めてあるピンを指で摘んだ。
「あっ!、治るまで包帯を解いてはなりませんぞっw⊃⊃」
(…………)
後ろからした思い出したみてぇに言ってきた声に振り向くと、医師はこっちを振り向いていて。
「あなたの行動はビビ様から聞いておりますからなw。あなたにはこれからもビビ様とこのアラバスタを護ってもらわんとなりませんw。悪化させて刀を持てなくなるのはあなたも困りますでしょうw」
(…………)
この程度で刀が握れなくなるなんざ思えねぇが、医者の言葉だと思うと多少なりとも"万が一"って事を考えちまって…。
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