原作サイド─四年後─

□初夜
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「…………」
久し振りに晩飯に呼ばれた後、時計塔に戻ろうかと思ったが、降り出した雨のあまりの雨足にチャカとペルにもう少し雨宿りしていけと止められて。
「Mr.ブシドー」
客間で雨が止むのを窓の外を見ながら待っていると、イガラムのおっさんと国政の相談をしていたビビが部屋に入ってきた。
「どうしたの?。こんな所で」
「…いや…、雨が止むまで雨宿りしていけって、チャカとペルに止められてよ…」
近寄ってきたビビに返すと、
「なら私の部屋でお茶でもどう?。この雨ならまだまだ止みそうにないから」
「ああ、ならそうさせてもらうかね」
言ってきたビビに同意し、ビビの後ろをついて部屋まで行き、相変わらずきれいに片付いた部屋に入る。
広く、だが簡素な白い部屋。
「今お茶淹れるから」
飾らねぇ、こいつの性格がそのまま出ているその部屋で、茶を淹れに行ったビビの後ろ姿をしばらく見てから、テーブルに据えられたソファーに腰を下ろした。

「はい、お待たせ」
しばらくして戻ってきたビビが、盆からカップを一つ下ろして俺の前に置き、もう一つを俺の斜め前のソファーの前に置いた。
そのソファーにビビが座り、カップを手に取る。
「…………」
その仕草はとても洗練されている。
四年前にも船で同じ仕草で飲んではいたが、その面影も霞む程、無駄も無く、優雅とも取れる振る舞いに昇華して。
女王の貫禄すら漂わせながら、手にしたカップに口を付ける。
「…………」
カップに付く口。
艶を帯びて、形のいい。
目を瞑って紅茶を飲むその顔に何かを感じた。
(…………)
女になったビビ。
顔も、…体も。
まだガキだった、華奢だった四年前とは違う。
全てが女になった、今のこいつ。
四年前より成長し、今や立派な女王に、そして女になった、凛とした姿が四年前と変わらねぇ、だが変わったビビが居る。
「……?。どうしたの?」
(!……)
カップから口を離して、目を開いたビビの目線と言葉に、無意識にビビに見入っていた事に気付いた。
「いや…、何でもねぇ」
(…………)
言葉では何でもねぇと返したが、何でもねぇこたぁ全く無かった。
欲を感じている。
ビビに。
こいつとしてぇと、そんな事を考えている。
「…Mr.ブシドー…?」
「………」
てめぇの感じている欲に、違和感すら感じる。
強くなる以外の欲なんざ感じた事も無かったってのに。
「どうしたの?。…私の顔、なにか付いてる?」
右手ごとカップを下ろして、左手で自分の頬を触るビビ。
その薬指に巻かれた紐。
無くさねぇように和道の柄巻きの下に巻き込めた紐の片割れ。
夫婦(めおと)の印し。
俺のものの証。
「……w、ねぇw、なに?w。ほんとになにか付いて……───」
辛抱出来なかった。
てめぇが止められなかった。
口に触る艶めいた感触。
女の口の感触。
「─────」
口を離した目の前にゃビビの顔がある。
茫然と目を見開く、ビビの顔。
「──。────」
その口にもう一遍口を当てた。
さっきより深く。
「!。んんっ」
途端にビビからくぐもった声が漏れた。
同時に押されてくる胸板。
やむを得ず口を離して、押されるままに体を引いた。
「なっっ!!//////w⊃⊃、なにっっ!!//////w⊃⊃」
驚愕と狼狽えの態で自分の口を両手で塞ぐビビ。
その姿に欲を押しのけて後悔が湧いた。
欲に流された後悔。
欲に抗えなかった後悔。
(っ……)
それでも消えねぇ欲。
てめぇの中の『男』が欲する。
こいつが欲しいと。
こいつを完全に俺のものにしてぇと。
口に残る感触、それがその欲を掻き立ててくる。
「…嫌か…」
野獣みてぇな今のてめぇ。
上物の獲物を前に、抗えねぇ。
「い…イヤって…?…w」
「…俺に抱かれるのは嫌か…」
「!//////」
体ん中で渦巻く欲。
抗う気が起こらねぇ。
今こいつが逃げたら、きっと追いかけちまう。
てめぇを止める自信がねぇ。
「…//////w。…だ…抱きたいの…?//////w」
「抱きてぇ」
訊かれた問いに迷わず答えた。
躊躇う気もなけりゃ、偽る気もねぇ。
「……//////…w」
顔を俯けたビビ。
だが逃げねぇ。
何か考えているみてぇだが、逃げる気配はねぇ。
「………いいわ…///」
「…………」
俯きながら来た言葉に、意外さから来る多少の驚愕を感じた。
「……私達…もう夫婦になったんだし…///」
ちぃと顔を上げて俺を見てくるビビは恥ずかしげで。
「…あなたはもう…私の旦那様なんだから…///」
「…………」
ゆっくり伸びてきた左手。
薬指に指輪代わりの髪紐が巻かれたその白ぇ細い手が、俺の右手の甲に乗ってきた。
「…わ…////…私を…あなたのものにして…//////」
また俯きながら言った顔は、白ぇ耳まで紅くなっていて。
そういう事に慣れてねぇ、真面目なこいつがそれを言うにどれ程度胸を要しているか、その首元まで赤みを帯びている姿を見りゃあ解る。
(…………)
てめぇの中の野獣が消えた。
ビビのその姿に、今あるのは欲だけ。
羞恥に俯くその姿に、今体ん中にあるのは大事にしようって考えと欲だけだった。
「…………」
もう一遍顔近付けたら、それに気付いたのか、顔を上げたビビが目を瞑った。
頬を赤らめながらも俺の接吻を待つビビの口に三たび口を当てて、その柔らかさを充分確かめてから口を離す。
「……本当にいいんだな」
「……ん…///」
もう一遍取った確認に頷いたビビ。
その頬は恥ずかしげに赤く染まり、俯きながら俺の確認に答えた。
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