─海賊姫─

□買い出し
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船も手に入れたし、お金も沢山あるし、ちょっと色々雑貨品の買い物がしたいなと思ってた所に、丁度辿り着いた島。
船着き場もあって、その奥には町も見える。
「Mr.ブシドー!、町に着いたから買い物に──…」
見張り台の上から、下で腕立て伏せしてたMr.ブシドーを呼んだら、さっきまでトレーニングしてたMr.ブシドーは大いびきかいて寝てて。
(また寝てる…w)
その大の字で寝てるMr.ブシドーに、ちょっと呆れ返る。
Mr.ブシドーはほぼ毎日、一日トレーニングしてるか寝てるか、お酒飲んでるかで。
この前夜中に目が覚めてトイレに行こうとしたら、甲板でスクワットしてるMr.ブシドーを見た。
夜も寝ないでトレーニングしてる事には感心するけど、お昼あれだけ寝てるのなら、別に夜にトレーニングしなくたって普通にお昼トレーニングして夜は寝ればいいのに。
昼夜逆転する理由が今一よく解らない。
「Mr.ブシドー、町があったわよ。起きて」
見張り台から張ってある網を伝い降りて、近くで聞くとほんとに豪快ないびきをかいて寝てるMr.ブシドーを揺すった。
「ぐが〜〜〜、ご〜〜〜」
「…………」
でも起きないMr.ブシドー。
一旦寝たらちょっとやそっとじゃ起きないMr.ブシドーを見ながら、一人で買い物に行こうかとも思うけど、Mr.ブシドーもなにか欲しいものがあるみたいだったから、ちゃんと起こさなきゃと思って。
「ねぇMr.ブシドー。起きてよ。町に着いたわよ?。Mr.ブシドーもなにか買うんでしょ?」
「ぐ〜〜〜、ぐご〜〜〜」
「…………。ねえったら!。Mr.ブシドー!?」
「が〜〜〜」
「…………」
どんなに揺すっても声を掛けても起きないMr.ブシドーに、ちょっと呆れながらもムッとして。
「…………」
なにか起こせる物と、キッチンからフライパンとお玉を取りに行った。
「Mr.ブシドー!!、起きて!!。買い物行くわよ!?。置いてっちゃうわよ!?」
「ぐが〜〜〜」
「………#」
フライパンガンガン鳴らして声掛けてるのに、全くいびきの音量すら変わらないMr.ブシドーに、ほんとに腹が立ってきて。
「早く起きてって言ってるでしょ!!?#。何回言わせるのよ!!!」
「!!!」
腹立ち任せにフライパンを広いおでこに思い切り叩きつけたら、Mr.ブシドーのいびきが止まった。
「何すんだてめぇ!!!#w。殺す気か!!!#w」
「なによ!!!#。何度起こしても起きないMr.ブシドーが悪いんでしょ!!?#」
飛び起きた途端に怒鳴ってきたMr.ブシドーに、怒りに任せて怒鳴り返して。
「たく…w。もうちぃと起こし方ってもんが…w」
ブツブツ愚痴りながら渋々な態度でついて来るMr.ブシドーを連れて、ヘコんで買い替えなくちゃいけなくなったフライパンも買いに町に向かった。

「えと…、これでいいのかな」
雑貨品を買って、買い忘れがないか頭の中で考えてから納得して。
「お待たせ、Mr.ブシドー」
荷物の入った紙袋を胸元に抱えて、お店の前で待っていたMr.ブシドーに声を掛けた。
「………、ほれ」
「ん?」
急に手を出してきたMr.ブシドーに、なにが"ほれ"なのか解らなくて。
「なに?。私手相なんて見れないわよ?」
手の平を向けて差し出すMr.ブシドーに、でも生命線はすごく長くて、長生きはしそうだと思った。
「w、誰が手相なんざ見ろっつったよw。荷物貸せって言ってんだ」
「え。…持ってくれるの?」
「ああ」
(…………。………⊃)
ここに来る前はフライパンで叩いちゃったのに。
それでも荷物を持とうとしてくれてるMr.ブシドーに、叩いた事をちょっと悪かったと思った。
「Mr.ブシドーは何を買うの?」
「バーベル」
「え?、バーベル?」
私が両手で抱え持ってた荷物を片腕で持つMr.ブシドーに訊いたら、返ってきたMr.ブシドーの言葉に、頭に浮かんだのは、バーベルの持ち棒に頭を乗せて寝にくそうな首の角度で寝てるMr.ブシドー。
「枕にするならバーベルよりダンベルとか鉄アレイとかの方が…」
「誰が枕にするんだよw。普通バーベルってのは体鍛える器具だろうがw」
「…………」
言われて、まぁ確かにとは思うけど、いつもしょっちゅう寝てる姿しか見てないから、バーベルも本来の使用法には結び付かなかった。
(…………)
横を歩くMr.ブシドー。
確かに体格はいいけど、バーベルなんてほんとに持てるのかしらと思うくらいには細めな体で。
そんな事を思いながら、Mr.ブシドーについて歩く。
(…………)
かなり歩いた。
でもなんだかおかしい。
(………?…)
なんだか見覚えのある町並み。
(…………)
そこは確かにさっき通ったような道で。
Mr.ブシドーが曲がった。
でもさっきもここを曲がった気がする。
(…………)
歩いていく道は変わらない、見た事のある道。
(…………)
見えてきた雑貨屋さん。
さっき私が雑貨を買ったお店。
(…………もしかしてMr.ブシドーって…。、)
足を止めたMr.ブシドー。
きょろりと辺りを見回した。
(……────)
足を向けて踏み出したのは、右側の道。
もうこれで三周目になる道。
(方向音痴───)
初めて見た。
方向音痴な人。
そして初めて知った。
Mr.ブシドーが方向音痴な事。
(────知らなかった…)
Mr.ブシドーを仲間にして一週間、今まではずっと船に乗ってて、今日初めて陸地に上がったから。
「!w。待ってMr.ブシドー!!w」
「あ?。なんだよ」
また見慣れた道の方に曲がろうとしたMr.ブシドーの腕を掴まえて、その逆の方の道を指差した。
「ちょっとあっち行ってみない?w。さっきから同じ道歩いてるみたいだからw」
「ああ?。………。そうか?。通ってねぇだろ?、こんな道」
「周りの風景見て歩いてないの…?w」
辺りを見回してまた私を見下ろしてきたMr.ブシドーは、本当に真顔で。
迷ってる事を疑いもしていない顔をしている。
「……Mr.ブシドー…誰かに方向音痴って言われた事ない…?w」
「ん、ああ、そういやしょっちゅう言われてたな。道場の先生やら、一緒に稽古してた奴らによ」
「…………」
訊いた事に返ってきた返事に、やっぱり方向音痴なんだと決定付いた。
「だが俺は方向音痴なんかじゃねぇよ。知らねぇ道で迷うのは当たり前の事だ。おめぇだってあるだろ?、迷う事くらい」
「─────」
(無自覚───)
こういうのが一番たちが悪い。
自分に自覚が無い方向音痴が一番。
これはもうMr.ブシドーに道は任せられないと、Mr.ブシドーの腕を掴んだまま自分が前を歩いて、Mr.ブシドーを連れて歩いた。

「あ」
「ん」
曲がってない道を曲がりながら歩いてると、すぐにそれらしい店を見付けて。
前まで来たら、ガラスの奥にはトレーニング器具が見えた。
「こんな近くにあったのに…」
「みろ。歩いてりゃいつか着くんだよ」
「────」
私が連れて歩いてきたのに、まるで偶然でここまで来たみたいな風に言うMr.ブシドーに、言葉を無くす。
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