ボツ作品部屋

□スウィーツ・乗船三日目
1ページ/2ページ

「どうぞ、ナミさん、ビビちゃん。今日は二人のレディーの為に特別スウィーツを作ってみました∨」
アホコックが気取りながら、雑談していたナミと王女さんの前にそれぞれ出来立ての焼き菓子を置いた。
「なんだ、俺にはねぇのか」
「男に食わせるスウィーツはねぇ!!#。てめぇはその辺の雑草でも食ってろ!!#」
「ふん」
冗談で言った事にマジギレして返してきやがったクソコックにムカついて、腕を組み直して昼寝に入ろうとした。
「あのサンジさんw、Mr.ブシドーにも…w」
その時俺を擁護する王女さんの声が聞こえたが、別に菓子は要らねぇから耳から意識を外す。
「ビビちゃんは気にしなくていいんだよ。俺はナミさんとビビちゃん、二人のレディーの為にこれを作ったんだから」
「でも…w。Mr.ブシドーw、なら私の分を…w」
王女さんが少し気まず気な声を出して、椅子から立ち上がったのか、椅子の足がカタッと音を立てた。
「要らねぇよ。女から物取り上げられるか」
「なら半分こ…」
「要らねぇ」
「………w」
「ほっときなさい、ビビ。この二人のこんなやり取りしょっちゅうなんだから。今から慣れとかないと疲れちゃうわよ」
「でも…w」
ナミの説得にそれでも納得しねぇ王女さんに、このまま居ればまだ気にされるし煩いと、快適な昼寝場所を求めて場所を移動した。

「あの…Mr.ブシドーw。ちょっといいですか…?w」
「あん?」
俺が腹筋しているのをずっと見ていたビビが、終わって汗を拭う俺に声を掛けてきた。
この船に乗り始めた頃とその以前のこいつは気のキツい、だが変な女だったが、自分がアラバスタの王女という事を明かし、自国の状況を話してからは人が変わったようにキツかった目付きは丸く変わり、顔付きが穏やかになった。
それだけ今まで気を張り詰めていたらしく、特別な積み荷として船に乗った今のこいつはよく笑みを浮かべ、そして時折ふと柔らけぇ王女らしい表情すら垣間見せる。
そんな王女さんは、仲間になって数日経った今、他の奴らとは気軽に話したりしているが、俺には滅多と話し掛けてきたりすらして来なかった。
それが何を思ったのか声を掛けてきた今でさえ、少し緊張している面持ちで、肩にも力が入っているのが解る。
「なんだ。どうかしたのか」
「あ…、いえ、あの…w」
「なんだ、早く言え。自分から声掛けてきておいて、何緊張してる」
別に咬み付きゃしねぇのに、必要以上に緊張している王女さんに、俺にとってはごく普通に接してみた。
俺は自分が強面なのは自覚してるし、ナミやクソコックにもぶっきらぼうだとよく言われる。
そんなだから特に女子供にびびられるが、それにもとっくに慣れてっから、今更怯えられんのは気にはならねぇ。
「あ…w。その…昨日の事なんですが…w」
「あん?。昨日?」
「Mr.ブシドー、サンジさんが作ったお菓子食べたかったみたいだったのに、食べられなかったから…w」
(うん?。……ああ、あれか)
促してようやくおずおすとだが話を切り出した王女さんの言葉に、昨日の昼頃あった出来事を思い出して。
「気にするな。ありゃあただ言ってみただけだ。別に本気で食いたかった訳じゃねぇよ」
「え…、そうなの…?w」
俺の返した返事に、ちぃと拍子抜けしたみてぇな顔で返してきた。
「まぁ…味見に一口くらいは食ってもよかったけどな」
「やっぱり食べたかったんじゃないですか…w」
「う…。いや、まぁ…w、そりゃ多少はな…w」
何だかんだ言ってもあのクソコックの料理の腕は俺も認めてるし、初めて見た菓子だったから興味が湧いてあんな冗談言ったわけで。
「なら私が作ります!!」
「はあ?」
視線を外して頭を掻いていると、不意に俺の前で言い放った王女さんの言葉に顔を向けた。
「サンジさんみたいに上手には出来ないけど、私が作って食べさせてあげます!!」
「………」
なんか菓子ぐらいの事でいつまでも拘って真剣になってる王女さんを見ていて、ふと、何かして気を紛らわしていてぇのか?と思った。
今は騒がしいあいつらは買い出しに出ていて居ねぇし、気晴らしの役が今船に居る俺にきたのかと。
「……まあ…、作りてぇなら…」
どうせこの後はやるこたねぇし、ここは王女さんの気晴らしに付き合ってやるかと、台所についていった。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ