ボツ作品部屋

□誕生日
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「ねぇ、Mr.ブシドー」
「あ?」
朝飯の後、一人飯場に残って昼から何のトレーニングするか考えてると、ルフィと戻ってきたビビだけが俺に近付いてきて、何か話を切り出してきた。
「明日、私の誕生日って、ナミさんか誰かから聞いた?」
「あ?、誕生日?」
初めて聞く話に、意識が完全にビビの言葉へと向いた。
「聞いてない?。なら知ってると思ってるのね」
俺の反応に解ったのか、一人で納得したビビが、また俺を見てきて。
「明日ね?、私誕生日なの」
改めて、さっき聞いた事実を言ってきたビビ。
「………。……お前な…w。なんでギリギリになって言うんだよw」
ナミと違って謙虚なこいつが自分からそんな事を言ってきてる事がちぃと信じられねぇが、
「祝ってもらいてぇならもうちょっと早めに……」
「あ、違うの、別に祝って欲しくて言った訳じゃないから」
「あ?w」
言ってきたって事は祝ってくれって事じゃねぇのかと、ビビの返事に訳が解らねぇで眉が傾いた俺を見てきているビビの口が動いた。
「ナミさん達は知ってるから祝ってくれるって言ってくれてるけど、Mr.ブシドー知らなかったら、一人知らなくて気分悪いんじゃないかと思っただけだから」
「…………」
「私が船に乗った時にはもうMr.ブシドーの誕生日も終わってたから、私もあなたの誕生日祝えてないし、私だけ何か貰うのも悪いじゃない。だから別に気にしないで?」
「…………」
マジで祝わなくていいと先手打たれてる気がしながら、先に話を付けてくるビビを見ながらちぃと納得いかねぇ気分がする。
「おーいビビ、もういいかー?。行くぞー」
「あ、うん、ルフィさん。じゃあMr.ブシドー、それだけだから」
飯場の出入り口で待っていたルフィの所に走って戻って、そのままどこかへ行ったビビ。
(…………)
一方的に誕生日を知らされて、俺が何かを言う間も無く出て行ったビビになんか釈然としねぇもんを感じる。
(………誕生日…か…)
あいつは気にするなとは言ったが、知っちまったからには考えちまう。
ちぃと何かやるかと考えて、だが何をやりゃあいいかも、どんなもんがあいつが喜ぶかも解らねぇで。
だが聞いたからにゃ何かする気は起きたし、してぇとは思う。
(…………)
ちぃと本格的に考える。
何を喜ぶだろうか。
あいつが欲しがるような物。
…俺が物をやったから喜ぶ事ぁねぇだろうが、その"物"で喜ぶ所を見てぇ。
(…………。…………。…………くそ)
いくら頭を使っても何がいいか解らねぇ。
今まであいつが欲しがったもんと言やぁ、カルーに似たカルガモのぬいぐるみくれぇで。
女の好むもんって事だけでも解らねぇってのに、あいつ限定となると更に難解になっちまう。
(…………)
何となく頭の片隅にある妥協案。
俺が何かするような人間にゃあいつも思ってねぇだろうし、あいつも気にするなとは言ったから、何もしねぇって妥協もありかと思える。
(…………)
だが何か祝いてぇ気は、俺にだってある事はある。
てめぇがやったもんで相手が喜ぶのは悪ぃ気はしねぇし(まぁ実際誰にも何もやった事なんざねぇが)、あいつだから尚更、喜ぶその姿が見てぇ。
(…………)
見てぇから、妥協の意志より、何かをする意志の方がデカくて、妥協分以外の頭をフルに使って考えてみる。
だがやっぱり思い浮かばねぇ。
あいつの喜びそうなもんが解らねぇ。

「「「「ビビ「ビビちゃん」」」」」
「グエ」
「「「「「誕生日おめでとー!!」」」」」
「グワー!」
「ありがとう//、みんな//」
始まった誕生日会。
結局何も思い浮かばねぇまま、あいつの誕生日会に参加だけする事になった。
「はいビビ、プレゼントよ」
「ありがとう、ナミさん。わあっ、綺麗∨」
祝われてちぃと照れ臭げなビビの首にナミが掛けたのは、ビーズ細工の首飾り。
昨日あれから小せぇ町を見つけて、ビビを船番にそれぞれやるもんを買いに出て。
俺も一応は出てみたが…。
「俺はこれな」
次にウソップが渡したのは、筒状に丸めた画用紙らしい紙だった。
「?。わあ、私を描いてくれたの?。ありがとうウソップさんっ。やっぱりウソップさんは絵が上手ね。でもちょっとこれ綺麗すぎない?」
それを開いて見たビビが、笑いながら謙遜の言葉を言う。
「俺はこれだぞ、ビビ」
「?。わ、これ貝殻?。綺麗な桃色」
「桜貝っていうんだ。昨日寄った町の砂浜二時間探して、やっと見つけたんだ」
「そうなの?。ありがとう、トニーくん。すごく嬉しい∨」
「俺からは料理とケーキもだが、いつまでも残る物も渡したかったからさ、ビビちゃんはピアス穴は開けてねぇからイヤリングだぜ」
「ありがとう、サンジさん。わあ、すごく大人っぽいデザイン。ねぇ、着けていい?」
「勿論さ∨。ビビちゃんに喜んでもらって、丸一日掛けて選んだ甲斐があったぜ〜∨」
「うふふっ、どう?、似合う?」
「お〜、すごく似合ってるぞビビ」
「ええ、ほんとに17歳になって大人びた感じよ、ビビ」
「えへへ//。そう?//」
チョッパーとコックからそれぞれ渡されたプレゼントの、そのコックの渡した耳飾りをつけてはにかむビビ。
その、やっぱりプレゼントを用意してやがるコックにも胸糞が悪くなる。
「俺達からはこれやるぞ、ビビ!」
「グエッ」
「わ、すごく赤い綺麗なリンゴ。ありがとうルフィさん、カルー。私、こんな嬉しい誕生日、初めて」
ルフィとカルーが渡したのは、リンゴ一つ。
それでもビビは満面の笑顔でそれを受け取って笑っている。
(…………)
「ん…、ゾロ、あんたは?」
「(…………)。………ビビ」
「、」
「おめでとうよ」
「………。ええ。ありがとう、Mr.ブシドー」
こいつが喜ぶもんが解らなかったから手ぶらのてめぇ。
だから贈れるのはありきたりな祝いの言葉だけで。
「お前な…。はぁ、いや今日はビビちゃんの誕生日だ。おめぇが誕生日プレゼントなんざ用意するとも思えねぇからな、小言はやめとくぜ」
「違うのよサンジさんw⊃⊃。私も気にしなくていいって言ったからw⊃⊃。それに言葉だけでも十分嬉しいから⊃⊃」
「…………」
せめて二、三日前から知らされてりゃ考える時間もあった。
だが昨日いきなり聞かされたりすりゃ、頭も働く訳がねぇ。
それにそんなギリギリになって言ってくるって事ぁ、マジで俺に祝ってもらう気なんざ無かったんだろう。
それを考えるとちぃと胸糞悪ぃ。
確か確かにあいつの気回しのおかげで知らねぇ事で気が悪くなるってのは免れたが、こんな気分は知らねぇのと同じ気分の悪さだ。
あいつにとって、所詮俺はその程度の存在だって事が解った気がして、仕方ねぇ事だと解ってはいても釈然としねぇ気分のまま、切り分けられたケーキを口に入れた。
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