ボツ作品部屋

□みかん
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「はい、今回の収穫よ」
「いやっほう!!、やっと食える!!」
「あっルフィ!!!。一人二個までだぞ!!。三つも取るんじゃねぇ!!」
「はいカルー。あんたの分」
「グエッ∨」
ナミさんの育てたミカン。
甘くて美味しいから、みんなが好きで。
でも勝手に採ったらナミさんが激怒するからみんな勝手には採れなくて。
だから、収穫日にはみんな大喜びで手を伸ばしてくる。
(甘い∨)
太陽の光を浴びて育つナミさんのミカンはほんとに美味しくて。
気が付いたら一つ食べ終わっていて。
二つ目を剥こうとした時、
(…?)
隣に座ってるMr.ブシドーから視線を感じて、顔を向けるとMr.ブシドーの目が私を見ていた。
「おめぇ、最近よく食うな」
(Σ)
「くおらマリモ!!!。レディーに失礼な事言ってんじゃねぇぞ!!!#」
(―――――w)
キッチンの前で怒るサンジさんの怒声を聞いてるのか聞いていないのか、私をジッと見下ろしてくるMr.ブシドーのついさっきの言葉にショックを感じながら、手に持ったみかんを見た。
(私そんなに食べてる…?w)
自分じゃいつも通りだと思うけど…w。
でもサンジさんの料理もおやつも、ナミさんのミカンも美味しいから、知らない内に食べ過ぎてたのかも…w。
控えろって意味なのかしら…w。
遠慮しろって事なのかしら…w。
でもルフィさん達も、私の倍は食べてるし、Mr.ブシドーも食べてるし…w。
ナミさんと比べて食べ過ぎてるのかしら…w。
どうしよう…w、ミカン食べづらくなっちゃった…w。
「…………w」
「ちょっとゾロ!!。そんな事言ったらビビが食べづらくなるじゃないのよ!!。気にしないのビビ。ほら食べなさい」
「う…うん…w。…え…?」
「え?」
「マリモ…?」
Mr.ブシドーの言葉に、手に持ったみかんを見ながらナミさんに返事をした時、ふと横から手が伸びてきて。
大きな引き締まったその手は、Mr.ブシドーの手で。
その手が私の持つみかんの上に被さって、でもすぐに引っ込んだそのあとには、元々持ってた私のみかんの上に、もう一つみかんが乗っていた。
「…Mr.ブシドー…?」
隣のMr.ブシドーを見ると、自分の持ってるみかんの皮を剥いていて。
でもそのみかんは一つしか持っていない。
「…………」
私のみかんの上のみかん。
これがMr.ブシドーのみかんで。
「……それもやるから食え」
「え…、でも…w」
どうして?wと、Mr.ブシドーの横顔から、持ってるみかんの上のみかんを見た。
さっき、最近よく食うなって注意みたいな事言ってたのに、自分の分のみかんをくれたMr.ブシドーの意図が解らなくて。
「どうして…?w。だってこれはMr.ブシドーの…w」
「…………」
また見上げて訊いても、何も言わないで剥いたみかんに目を向けたまま、一房口に入れてもぐもぐと口を動かすMr.ブシドーに、みんなも注目してる。
「…反乱止める前のおめぇはろくに飯も食えてなかったからな…。…食えるようになったのはいいこった」
「…………」
「………ビビ!!」
「?。なに?、ルフィさん。え?」
Mr.ブシドーの言葉に少し呆然としてるとルフィさんが呼んできて。
顔を向けたと同時に、ルフィさんの腕が文字通り"伸びて"きて。
すぐにその手が私の前から離れた後には、私の持つみかんは三つになっていた。
「俺のもやる」
「え…?」
「「「「Σなにぃ!!?w」」」」
「Σグエッ!!?w」
「…ルフィ…」
ニッと笑って言ったルフィさんの行動と言葉にまた少し茫然として。
周りではMr.ブシドーとウソップさん、サンジさん、トニーくん、カルーまでが驚愕の声と顔で大声を出したその中に、ナミさんの柔らかい声が聞こえた。
「信じられねぇ…w。あのルフィが食いもんを大人しく渡したぞ…w」
「何か天変地異の前触れじゃねぇのか…w」
「もしかして熱でもあるんじゃ…w」
「グエ…w」
呆然とする視界の中にMr.ブシドーとウソップさん、サンジさん、トニーくん、カルーが驚愕の顔でルフィさんを見てるのが見えて、その中で、ナミさんだけは穏やかな顔に仄かに笑みを浮かべながらルフィさんを見ている。
「…でもいいの…?、ルフィさん…⊃。ルフィさんの食べる分が一つになっちゃうわよ…?⊃」

本当は私もナミさんと同じ表情がしたかった。
おそらくMr.ブシドーと同じ理由でみかんをくれたルフィさんの気持ちが嬉しかったから。
でもMr.ブシドー達の言うように、食べ物をルフィさんが分けてくれるなんて思わなくて。
食べる事が冒険と同じくらい大好きなルフィさんだから、楽しみにしていたナミさんのみかんを分けてくれたルフィさんに、本当にもらっていいのか少し戸惑った。「う〜ん…w、いい…ん〜…w、ほんとはよくねぇけど…w、……でもやっぱいい!!。やる!!♪」
「…ルフィさん…」
かなり渋々に迷ってる様子で、でも最後には大きく歯を見せて笑いながらきっぱりと言い切ったルフィさんに、ようやく笑む事が出来た。
「……仕方ねぇなぁ。だったら俺の一個やるよ、ルフィ。その代わり、せっかくのナミさんのミカンをやるんだから、味わって食いやがれ?」
「おおおー!!、サンキューサンジ!!!」
「一口で食うんじゃねぇよ!!!#w。味わって食えっつっただろ!!!#w」
「……うふふっ」
サンジさんの言った事も聞かずに瞬時に皮を剥いてみかんを丸ごと口に入れたルフィさんに、本気で怒るサンジさん。
そのやり取りの可笑しさが、胸の中の暖かさと一緒に笑みになる。
「ありがとう。ルフィさん、Mr.ブシドー」
「おう!」
「そのかわり残すんじゃねぇぞ」
「ええ、もちろん」
ニと笑って言ってきたMr.ブシドーに笑みで返して、先ずはルフィさんのくれたみかんを剥いた。
「ん、おいしい∨」
ルフィさんの優しさに、おいしいみかんがもっとおいしく感じられる。
みんなで食べるみかん。
今度のミカンの収穫の時、私はまだこの船にいるのかは解らないけど、もし私が船を降りた後になったなら、私の分のミカンはルフィさんとMr.ブシドーにあげようと。
Mr.ブシドーのくれたみかんを剥きながらそう決めた。


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