ボツ作品部屋

□真章・番外編─珍事件2─
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「あ…、Mr.ブシドー…」
「ん」
まだ違和感のあるビビの男声に振り向くと、飯場からビビが出てきた所で。
姿にもまだ違和感があるが、頭では慣れてきた。
「…ねぇ…、Mr.ブシドー…」
「あ?」
近付きながらやけに遠慮がちに声を掛けてきたビビに、鉄塊を振る手を止めてビビを見た。
「あ、いいの。トレーニングは続けて?」
「?。…………」
俺にトレーニングの手を止めさせるから遠慮がちなのかとも思ったが、続けてても構わねぇみてぇだから、鉄塊での素振りを再開する。
「……Mr.ブシドーは…私が男になっても気にならないの…?」
「ああ…っ、ならねぇ…っ」
気合い入れて振らなけりゃいけねぇから、返事もそれなりに、短く返す。
「…どうして…?」
(…………)
余計な息が切れっから余計な返事はせず、目だけをビビに向けた。
「…あの時、まだ一週間で戻るって解ってなかったわよね…?」
「ああ…っ」
「て事は、一生男のままかもしれなかった状況でも、Mr.ブシドーは私が男のままでも支障はないって考えてたのよね…?」
「ああ…っ。そうだ…っ」
「…どうして…?」
(…………)
「Mr.ブシドーは私が男でもいいの?」
(…………)
「私が女でも男でも、Mr.ブシドーには関係ないの…?」
「ああ…っ。関係ねぇ…っ」
「…………」
(…………)
答えてから、僅かにビビの目が見開いた。
それを横目で見ていると、そのビビの目が、僅かに俯いた顔と共に伏せられた。
「…そう…。…関係ないの……」
(…………)
その様子はやけに沈んでるみてぇで。
(…………)
なんで沈んでるんだか解らねぇ。
別に沈む事でもねぇだろうに。
「何…っ、凹んでんだよ…っ」
「………」
「…っ、…おい…っ」
「………」
(…………)
返事がねぇ。
俯いたままのビビに、手を止めて、鉄塊の頭を床につけて、一旦トレーニングを中断した。
「…そんなに女でいてぇのか?」
「…………」
訊いた事に返事がねぇ。
「女でも男でも、変わらねぇだろうが」
「っ……」
「あ?」
何か言ったみてぇに聞こえた事に、首を傾げて顔を見ようとした。
「…もういい…」
「?。何が」
その時、俯くビビがぼそりといきなり話を切った事に、意味も解らねぇまま訊くと、
「っもういいわよ!!。Mr.ブシドーなんか!!」
「なっ!?」
俯いていたビビがギッと俺を睨み付けながら、喉が裂けんばかりの声で怒鳴りやがった。
「なんでそうなんだよ!!w。待てって!!w」
そのまま走り去ろうと後ろを向いたビビの腕を咄嗟に掴んで引き止めた。
「離してよ!!。もうほっといて!!」
「ぐっ!」
力任せに殴ってきたビビの拳が胸板に当たって。
どすっと、かなりの衝撃が来た。
ウソップの言う通り、幾分力が強くなってやがる。
「何怒ってんだ!!w。俺が何言ったってんだ!!w」
「〜〜どうせ変わらないんでしょ!!?、私が女でも男でも!!」
「だからそれが何だってんだよ!!w。怒るような事じゃねぇだろ!!w」
「〜〜〜〜〜っ!!」
「あっ!!?。ゾロ!!、お前ビビに何やってんだ!!?」
「あ!!?、ごっ!!!w」
怒りの形相を向けてくるビビを止めている最中に飯場から出てきて言ってきたルフィの声が聞こえて。
振り向いた瞬間に飛んできた黒い何かがでこに直撃してきた。
「づおおおお……w」
ゴドン!!!と重ぇ音を立てて甲板の床にめり込み落ちたもんを、でこを押さえて痛みに耐えながら見ると、そりゃあ俺のダンベルで。
当たった瞬間のそのあまりの衝撃にビビの腕を離しちまって、ビビが飯場に走っていった。
「誰だー!!!###、こんなもん投げやがったのは!!!###」
ダンベルが飛んできた方に怒鳴ると、その先に居たのはナミの野郎で。
「ビビに怒鳴ってんじゃないわよ!!!#、このバカマリモ!!!#」
駆け寄ったビビを抱き止めたナミが、俺に向かって怒鳴って来やがる。
「―――――」
だが俺はそんな事より、ナミの力がとんでもねぇ事になってる事に、怒りも吹っ飛んだ程呆然としていた。
俺のダンベルは片方で100キロ。
それをあの距離からあのスピードで威力を落とさずぶん投げてきやがったナミに絶句して。
「くおらあクソマリモ!!!###。ビビちゃんは今男になっちまったショックでナイーブになってんだよ!!!#。そんなビビちゃんに何怒鳴ってやがんだ!!!。このボケマリモが!!!#」
「どうせまた無神経な事言ったんでしょ!!!#。今日はあんたは一日ビビに近付く事禁止よ!!!。罰として今から明日の朝になるまで見張り台での見張りしてる事!!!。いい!!?、解ったわね!!!」
「〜〜〜〜〜###」
俺は何もしちゃいねぇってのに、なんでか俺が全面的に悪ぃ事になっている上に、強制的に見張りを押し付けられようとさえしている。
相変わらずの理不尽な魔女と、こっちの言い分も聞かずに無条件にそれに加勢しやがるクソコックに怒りがこみ上げてきて。
「ふざけんな!!!#、俺は何も言ってねぇ!!!#。そいつが勝手に―――うごっ!!!」
反論してっとダンベル二撃目が飛んできて。
避ける間も無くまたでこに食らい、たまらず後ろに倒れ込んだ。
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