─不良と優等生─

□期末試験
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「ビビ」
「なぁに?」
「…悪ぃんだが、今日から泊まり込みで勉強教えてくんねぇか」
ガッコの帰り道、呼んだ俺を見上げてきたビビに言う。
「もうじき期末だろ。今のままじゃちぃと不安だからな。家庭教師頼みてぇんだ」
「……でも……///w」
「あ?。なんだ?。なんか問題でもあんのか?」
「………/////w」
「?。あ!」
理由を訊いてもちぃと困惑したみてぇな顔を赤らめたまま黙ってるビビに小首を傾げ、だが人に気を使うこいつだからはっきり言えねぇんだと気付き、
「そ、そうか、悪ぃw。おめぇも勉強しなきゃいけねぇよなw。おめぇも大事な時だってのに、落ちこぼれの面倒まで見れねぇなw。悪ぃ悪ぃw」
頭を掻きながら苦笑して、やっぱ今のは無かった事にと言おうとすっと、ビビがブンブンと首を横に振った。
「そっそうじゃないの!!w。そうじゃなくて!!w」
「?w。じゃあなんだ?w」
「………//w。…うんw、…いい//w。ゾロさんが気にしてないなら…//w」
「あ?w」
どっか恥ずかしげで、どっか困惑しているみてぇなビビの態度の理由が解らねぇで。
「でも随分やる気ね。…///と…泊まり込みで勉強なんて…/////」
「……今年は目標が出来たからな」
また顔の赤みが増したビビを不思議に思いながらも、ビビのその言葉に言葉を返した。
「…目標?」
「卒業だ」
「…………」
答えた瞬間、ビビが無言になって。
僅かに驚いているみてぇな顔で俺を見上げるビビに、言葉を続ける。
「今年こそは卒業する。おめぇと一緒にな。それがおめぇに世話になってる俺からの一番の恩の返しだ」
「……ゾロさん……」
多少驚いていたビビの顔。
その顔が次にゃあ緩んで。
その笑みを見ながら、卒業への意気込みをてめぇの中で更に強める。

「――――w」
ビビに家庭教師を頼んで、今日で何日経ったか。
目の前に広げたノートと、三年になってからのこの四年で何となく頭に残っている試験のヤマに的を絞って、そこを集中的にビビに教わる。
が後期を前に、益々数学は難しくなりやがる。
数学だけじゃねぇ、他の教科、特に俺が数学と同じくれぇ苦手な英語と理科も、ほんの数ヶ月でやけにレベルアップしてきやがって。
だがとうとう明日は期末試験当日。
これで点数取っとかねぇと、卒業が難しくなる。
「どう?。大丈夫?」
今日は徹夜と言った俺にコーヒーを淹れてきたビビが、盆をテーブルに置いて訊いてきた。
「…なんとか……w」
こいつの授業だからここまでこれた。
あのたしぎの教え方だったら、とっくに投げ出してるレベルだ、こりゃあw。
「………ゾロさんはすごいね」
「あ?」
「一度決めた事は最後までやり遂げる精神でいる。苦手な勉強こうして毎日頑張って、卒業を諦めない」
「……目標だからな」
俺の斜め前に座って俺を見上げてくるビビに答える。
「目標に据えりゃあ、それを追える。卒業する時の達成感を考えっと堪らねぇ。おめぇと卒業する時の事を考えっとワクワクする」
「…うん」
こいつと卒業写真を撮るその日を想像して楽しみさに笑えてくる俺を見ながら、ビビも笑う。
「ああ、おめぇはもう寝ろ。明日試験だ。俺に付き合ってるこたぁねぇ。おめぇは頭がいいから大丈夫だろうが、俺のせいで万が一って事になったら責任問題だからな」
「ふふふっ。ゾロさんてば大袈裟ね」
可笑しげに笑いながらも、じゃあと立ち上がった。
「………ゾロさん」
「あ?」
横で背中を屈めて俺を呼んできたビビを見ようとした時、
(―――――)
頬に柔らけぇ感触が当たった。
「//////。おやすみなさいっ//////」
呆然とする俺の視界の中を走って、部屋割りの為にカーテンで仕切ったその中へと入っていったビビ。
その顔は耳まで赤くなっていて。
(―――……w。ど、どういうこった…?w)
いきなり頬にキスしてきたあいつの意図が解らねぇ。
なんのつもりか、どういうつもりか。
ただ悪意はねぇのは解るが――。
(……どうしてくれんだよ…///w)
今勉強してた事、全部頭からふっ飛んじまった…w。
「…………w。ええい考えるな!!!w。今は勉強勉強!!!w」
取りあえず今は考えねぇ事にし、今あった事をコーヒーと一緒に流し込んで、飛んじまった分からまた取り戻そうとノートに向かう。

「あー!!!、終わった終わったあ!!!」
長ぇようであっと言う間に終わった期末試験も終わり、肩の荷も下りて、公園のベンチで両腕を伸ばして自由を満喫する。
「ふふっ、ご苦労様」
その俺の横で、ビビが労いの言葉を掛けてくる。
「どう?。自信は」
「ああ、まぁ思ってたよりゃ割と出来た方だ」
「よかった。なら大丈夫よ」
「まぁな。これもおめぇの家庭教師のおかげだ」
「ふふっ。ならよかった」
「だがあれにゃあ焦ったぜ」
「?。あれ?」
笑ったビビを見ながら、思い出した"あの事"に、ビビから顔を離して流れていく雲を見ながら言うと、ビビが声を傾げたのが聞こえて。
「おめぇ口つけてきただろうが。ここに」
「Σ//////」
またビビに顔を向けて、人差し指の指先を付けて示すと、ビビの顔が真っ赤になった。
「あれで一瞬頭の中のもん全部吹っ飛んだんだぜ。あれにゃあマジで焦った」
「あっあれはおまじないっ//////⊃⊃。ゾロさんが合格点とれるようにっ//////⊃⊃」
焦りながら言ってくるビビに、ああ、なるほどと納得して。
だが一瞬頭がカラになった事を思やぁ、そのまじないの効果はどう出るかと思えた。

「〜〜〜〜〜w」
自信はあったが、いざ答案が戻って来るとなるとやっぱ不安が湧き上がる。
国語と社会は何とか大丈夫だろうが、やはり苦手な数学、英語、理科は不安で、心臓がバクバク落ち着かねぇ。
「大丈夫よ、ゾロさん」
「……おう…w」
緊張が顔に出てたのか、ビビが俺の手の上に手を乗せてきて。
だがその手とビビに、緊張が増す。
もしえれぇ点数なら、今まで俺の勉強に付き合わせたこいつの時間も無駄になっちまう。
中学時に誘われて暇潰しにやってた剣道の推薦でこの高校に入ってから、ダブってた期間も入れての今までの六年間、テストは抜き打ちだろうと期末だろうとほぼ白紙で出して、ほぼ0点で返ってきてもなんとも思わなかったってのに。
今回はものすげぇプレッシャーに、心臓がやべぇ。
「ロロノアくん」
「!!w」
たしぎに名前を呼ばれて、瞬間バクついてた心臓がドキッと一際大きく飛び跳ねた。
「…………w」
立ち上がって一旦ビビを見ると、ビビも真剣な顔で頷いて。
そのビビに見送られながら、テスト用紙を取りにいった。
「ロロノアくん……」
「!w」
俯いて声の暗ぇたしぎにまさか…wとギクリとする。
「おい…w。どうした…w。Σ!!?」
出している手に答案を渡さねぇで、ちぃと細かく震えてやがるたしぎに声を掛けると、いきなり紙を手放して両手でガシッと俺の出している手を握り締めてきたたしぎにびびって。
「やれば出来るじゃないですか!!!。私今すごく感動しています!!!」
「え…w」
感極まったみてぇなたしぎの眼鏡の奥の目には、涙まで滲んでやがる。
「おめでとう!!。この調子で卒業試験まで頑張って下さい!!!」
嬉しげに笑いながら、俺の手に力強く渡してきたたしぎの科目の数字テスト用紙を見て、思わずてめぇの目を疑った。
そこにゃあ黒字で96点と、今まで見た事もねぇ数字が赤字の花丸付きで書かれてあって。
「――――」
それを見ながら、しばらく呆然とする。
俺の予想じゃ合格ラインの85はなんとかギリギリ越えてる筈だくれぇに思っていたが、それを大きく上回る数字に、呆然としたまま席に戻った。
「!。すごいじゃない!、ゾロさん!」
「!。お、おうw」
俺の答案を覗いて見てきたビビの声にはっきりと我に返る。
「じゃあ、最後はビビさん」
「あ、はいっ」
涙を拭うたしぎがビビを呼び、ビビが答案を取りにいく。
「はい。あなたもよく頑張ってくれました。これからもロロノアくんをお願いします」
「はい」
答案を持って戻ってきたビビの机に置いた答案を見ると、こいつの頭の良さを思やぁ当然の100点。
だが…。
「ん!?。おいたしぎ!!!。何で俺だけこんな花丸付けてんだよ!!!w。俺は小学生か!!!#w」
持った答案の、しかも100点でもねぇのに付いている花丸を指差しながら文句をぶつけると、
「それだけ嬉しかったという事ですっ!。私にとってもあなたの初めての高得点なんですから!」
「〜〜〜〜っっw。!!w」
怒鳴った事に返ってきたたしぎの真顔の言葉に、周りから微かな失笑が聞こえて。
そっちを見た途端、それがピタッと止まった。
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