─不良と優等生─

□月経
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「〜〜〜〜〜」
「大丈夫か?⊃」
朝から下っ腹を押さえて、畳んだ布団に座り込むビビ。
その顔は苦悶と苦痛の表情に顔をしかめていて、眉間にシワを寄せている。
"生理"
男の俺にはねぇ、女特有の自然現象。
症状に個人差はあるらしいが、こいつは貧血と生理痛が重く、特に痛みがひでぇらしい。
だが辛抱強いこいつは絶対に痛みを口にしねぇ。
歯を食い縛って、一人で痛みと戦っている。
出来るもんなら男の俺がその痛みを引き受けてやりてぇが、だが代われる訳もねぇから、ただ眉をしかめて腹を押さえて痛みに耐えるこいつを見ている事しか出来ねぇのがちぃと歯痒い。
「…大丈夫か?w」
どう見ても大丈夫そうじゃねぇが、それしか言いようがねぇで。
「…うん…、大丈夫…」
力のねぇ声で、眉尻下げて笑顔で返してくるビビはかなり弱々しく見える。
こいつはいつも元気だから、見慣れねぇ弱々しさに、心配が更に増す。
男のくせに、目の前で女が弱ってるってのに何もしてやれねぇ事がちぃと情けなく、せめて痛みが楽になるように擦ってやろうかと思っても、下っ腹なんざ擦れねぇw。
「………w」
どうしようもねぇ無力感を感じながらビビから離れると、点いていたテレビに気が行った。
「ん…?」
見るでも無く眺めてたテレビがCMに入り、映ったのは生理痛の薬の宣伝。
(これだ)
してやれる事が見付かった気がして、ビビにちょっと出てくると言い残して家を出た。

「…………w」
いざ薬局に来て生理薬を並べてある棚を見付けたが、種類が多くてどれがいいのか判らねぇで。
手に取って見比べてみても、やっぱよく判らねぇ。
(………店員に訊いた方がいい…よな…w)
変なもん買って効かなけりゃ意味ねぇし、どうせ買うなら効果の高ぇもんの方がいい。
(…………w)
だが生理薬みてぇなもんを店員に訊くのはちぃと考える。
俺にだって恥はあっから。
俺みてぇな見た目の男だから余計に、生理の薬みてぇなもんの事を訊くのは、かなり勇気がいる。
(………ええい!!w、ビビの為だ!!w。覚悟決めろ俺!!!w)
内心でてめぇを奮い立たせ、意を決してレジに向かった。
「あ〜…w、すいません…w」
なんでこんなに緊張しなけりゃいけねぇのか、ちぃとアガりながら店員の薬剤師に声を掛けた。
「あ…w、はいw。何でしょうか…w」
店員も緊張してやがる。
まぁそりゃあ俺の見た目に対してだし、声を掛けるどころか、側に立っただけでびびられんのはもう日常茶飯事だから構わねぇが。
「あ〜…w、ちょっと生理薬の事で……w」
「え……w」
(……『え』じゃねぇだろ…w)
気持ちは解らねぇでもねぇが、客に対してその態度はなんだw。
こういう時はどっちかってと女の薬剤師の方がいいんだが、都合悪く今俺の接客をしているのは男の薬剤師。
しかも頼り無さそうな、眼鏡のひょろ男で。
だから余計に言いづれぇw。
「あ…w、いや…その…w。ツレが生理が酷くて…w。どんな薬がいいか解らねぇから……w」
薬剤師の資格があんだから相手の方が年上なんだろうが、背が俺より小せぇし、なよっちい頼りねぇ奴だから、つい言葉遣いがタメ口になっちまう。
「あ……w、そ…そうですか……w。そ…それならこれとこれが良く効きますが……w。症状は……w」
(症状……)
出してきた『生理痛薬』と書かれた二つの箱を見ながら、ビビの状態を思い出す。
「あ〜…、とにかく腹が痛ぇみてぇで…。あと貧血も酷いみてぇで……」
「な…ならこっちの方が…w」
おどおどしながらも二つの内の一つを俺の前に押し出した店員に、それを手に取る。
裏の説明書きを見っと、確かに"生理痛と貧血を抑え"と書かれてある。
まだちぃと訊きてぇ事もあるが、脳裏に腹押さえて座ってるビビが浮かんで。
「……そうか。ならこれ貰うぜ。いくらだ」
「は…はいw。千百円になりますw」
(……案外高ぇな…)
まぁその値段でビビが楽になるならと、なけなしの金出して薬を買って帰った。

「ビビ」
「あ…、なに…?、ゾロさん…」
「ほれ、飲め」
「え…?」
呼んだ俺に、布団に座ったまま色のねぇ顔を向けてきたビビに、買ってきた薬と水を差し出して言うと、ちぃと驚いたような顔をした。
「これ飲みゃちぃとは楽になんだろ」
「………、…買ってきてくれたの…?…⊃」
「…おうw」
まさかてめぇが生理痛薬なんざ買う事になるたぁ、夢にも思わなかったがw。
「……ありがとう、ゾロさん…」
ちぃと茫然としてから、しんどそうながらも嬉しそうにビビが笑った。
そのビビに先に水を渡して、ビビの前にしゃがんで、箱の説明書きに書かれてある飲む数を確認してから、二個薬を出してビビに差し出す。
「ん」
「ありがとう…」
受けたビビの手の平に薬を渡して、それをビビが飲み、水と一緒に流し込んだ。
「……ごめんなさい…。家に痛み止め買ってあるんだけど、持ってくるの忘れてて……」
薬を飲んだからっつって急に治る訳でも無く、やっぱり痛そうに腹を押さえて眉を八の字にするビビに、女ってのは毎月大変だなと多少同情する。
「……恥ずかしかったでしょ…?、こんな薬買うの……」
「ん……w、…まぁ…な……w」
買った時の緊張っぷりを思い返すとぶり返してきた照れ臭さに、ビビから目を逸らして頬を掻く。
「……だがまぁ…、おめぇがツラそうなの見てるよりは……な……w」
「………ゾロさん……」
ちぃとは男としての威厳を取り戻せた気になりつつビビを見上げっと、
「……ありがとう…」
痛みのツラさに微かに眉間にシワ寄せながらも、笑みを浮かべて礼を言ったビビに、早くよくなれよと願いを込めて頭を撫でた。


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