─幽霊─

□幽霊
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パパについて次期社長としての仕事の勉強するその合間に、夜間警備員のバイトを始めて今日で一週間。
パパやイガラムや家のみんなは、私は女の子だし、ましてや社長令嬢なんだから、そんな危ない仕事はやめなさいと反対したけど、社長令嬢だから世の中の他の仕事も色々知ってみたくて、まずはこの仕事を選んだ。
私の会社にも警備の人はいて、その人達の仕事内容や気持ちを少しでも知りたくもあって。
でも、私より1ヶ月先輩で同僚になったウソップさん(27)もいい人だし、警備の仕事ってこんな事をしてるんだと色々学ぶ事も多いから、最初にこのバイトを選んでよかったと思える。

「…………」
今日も夜のデパートを懐中電灯の灯り一つで見回る。
もし誰かいて襲いかかってきても、14の時から護身の為に習い始めた合気道で撃退する自信もあるし、一階二階と同様に、気を引き締めながら三階の階段を上る。
(え……)
階段を上がって懐中電灯で辺りを見回した時、一瞬通り過ぎた明かりが何かを照らした。
見間違いかと思って、もう一回向けてみた明かり。
「!」
三階の中央、このデパートの売りとして展示してある日本刀のケースの前に誰かが立っている。
身長と体格から男の人だと解って。
でも緑の着流し、そして腰に刀のようなものを二振り携えているその姿に、かなりの違和感を覚えた。
「あなたそこで何してるの!?」
でも不審者には変わりなく、展示している刀の前にいる事から、あの刀を狙ってると、警備員になって初めて泥棒と対峙した事に、緊張感と使命感が湧き上がって。
声を発した私に、その男がこっちを向いた。
「―――──」
それを見て、瞬時に背中が氷付いた。
その男に向けた明かりが、その体を通り透けて、後ろの刀とその下の台座を照らしている。
(…ゆ…幽霊…?…)
その現実に金縛りみたいに体も動かせなくなってると、その男がふ…と消えた。
「!!。――き…っw、きゃあああーーーっっ!!!w」
生まれて初めて幽霊なんてもの、実際にこの目で見ちゃった事に、恐怖のあまり叫びながら一目散に警備員室に逃げ戻った。

「ウっ!!!、ウソップさんっっ!!!www」
「Σうおっ!!w。なんだよビビ!!w。驚かすなよ!!w。!!?w」
死に物狂いで警備員室に走り込んだら、イスに座って携帯を打っていたウソップさんがその携帯を放り上げたくらい驚いて。
怖さのあまり、そのウソップさんの胸元にしがみついた。
「でっ、出たっ!!!w、出たっ!!!w」
「はあっ?w。何が出たんだ?w」
「お化けよ!!w。幽霊!!w」
しがみついたままウソップさんを見上げて訴える私に、
「───|||||w」
顔を引きつらせて、私を見下ろすウソップさん。
「うっ嘘じゃないわよ!!?w。おかしくもなってないんだから!!!w」
ウソップさんの様子に、なんだか私の頭がおかしくなったと思われてるみたいで、必死に訴えたら、
「…やっぱり出るのか…|||w」
「え…?w」
顔を引きつらせたウソップさんが、私を見ながらちょっと震えた声で言った。
「実はこのデパートじゃ、夜着流し姿の男の幽霊が出るって、警備会社内でも有名でよ…|||w」
「え!?w」
そんな話初耳で、
「お前が幽霊見たのって、あの展示品の刀の辺りじゃないのか…?w」
「う…うん…w。そう…w」
ウソップさんの問い掛けに頷いたら、ウソップさんの顔つきに浮かんだ真剣さと恐怖感が更に増した。
「今展示されてるあの刀は、このデパートが建った時から社長の家にあったもんを展示してるらしいんだけどよ、よくその付近で出てくるらしいんだよな…w。そいつ…|||w」
「………w」
顔を青ざめさせて言うウソップさんの話に出た着流し姿の男っていうのが、私の見た幽霊と全く一緒で。
私は幽霊としか言ってないのに一致した事に、やっぱり自分が見たあれは本当に幽霊だったんだと背中が寒くなった。
私的には目の錯覚だと思いたかったし、内心そう言って欲しかったけど、ウソップさんの話で夢でも幻でもない事が確実になっちゃって。
「俺は見た事はまだねぇんだが、今まで夜勤に当たった奴、みんなそいつを見て次々辞めちまうから、ここは警備員の採用率高いんだよな…w。だが俺はもう1ヶ月このバイトしてるがそんなヤツ見た事ねぇし、正直そいつらの目の錯覚なんじゃねぇかと疑ってたんだが…、おめぇまで見たとなりゃあ…w。俺ももう転職考えようかなぁ…w」
「……(は…っw)。何っ!?w。まさかもしかしてその幽霊見たら呪われるとかって言うんじゃっ!?w」
ウソップさんの話を呆然と聞いていて、ふいに浮かんだ怖い疑問に焦ってウソップさんに訊いた。
「いや、別にそういう類いの被害は無ぇから安心しろ。あいつはあの刀を中心にこのデパートの中を徘徊はしてるみてぇだが、特に何かをしてくる訳でもねぇで、見たからと言ってどうこうなる訳でもねぇみてぇだ」
「……ほ…w。よかったぁ…w」
まぁよくもないけどw、でも呪われないだけまだ救われた。
けど、幽霊を見たなんて事実だけでもやっぱりイヤな感じで。
「ん……w」
幽霊が怖くて、見回りを放って逃げてきちゃった事を思い出した。
(………w)
幽霊を見るのはもうイヤだけど、お給料を貰う以上は仕事はやり遂げないとと責任感はあるから、見回りの続きに戻りたいけど…w。
やっぱり幽霊が出ると解ったら、一人で行くのは怖い…w。
「ウソップさんお願いっw。一緒について来てっw」
怖いから、抱き付いたままのウソップさんを見上げて頼んでみた。
「嫌だ!!w。幽霊に鉢合わせするかもしれねぇってのに、俺は絶対行きたくねぇ!!w。今の時間はおめぇの見回り当番だろうが!!w」
「〜〜〜〜〜www」
上から速攻で拒否してきたウソップさんにかなりの頼りなさは感じるけど、でもその気持ちも解るから、それ以上なにも言えなくて。

「……行ってきます…w」
行きたくないけど仕事だから仕方がないから、ついては来てくれないウソップさんを警備員室に残して、放り出した三階の見回りに行く事にした。

(…………www)
お願いだから出てこないでと幽霊に祈りながら手に持った懐中電灯を握り締め、三階への階段を上がる。
「Σ!!?w」
ビクビクしながら三階について、自分の靴音にすら恐怖心を煽られながら、暗い店内を懐中電灯の灯りで見回りした時、後ろをスッと影が動いた気配がして。
思わずビクッとしながら勢いよく振り向いたけど何もいなくて。
それでもなんか『いる』気配は微かに感じる……気がするw。
「www。もうっ!!#w、こそこそしてないでいるんなら出てきなさいよっ!!#w」
どうにも出来ない怖さに、逆に怖さを吹き飛ばす為に大声を上げて、見えない相手に怒鳴り付けた。
「Σ!!。!!w」
そしたら、今私が上ってきた後ろの階段に気配が移動して、動いた気配を顔で追うと、階段の踊り場で、『それ』が私を見上げていた。
緑の着物に、後ろに流す短髪も緑。
背が高くて、目つきの鋭い、片目の男。
その姿は見えているのに不鮮明で、胸の辺りに後ろの壁に書かれている、階を教える"2階/3階"の文字が透けて見えている。
「ーーーっっ!!w」
やっぱり出た幽霊に背中と心臓が凍りついて、勝手に涙が目に滲んだ。
『…………』
私を見ている幽霊。
強面にも見えるその顔のその鋭い右目が、じっと私を見ている。
「────」
『……おめぇ…。俺が見えるのか…』
「!!。──────」
幽霊がいるという戦慄と、もしあの刀で斬りかかって来られたらどうしようと精神が強ばってた時、ふいに喋った幽霊に恐怖が一気に増して、
「───…………」
気が遠くなる感覚と同時に、目の前が真っ暗になった。
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