─原作サイド─

□疑心
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(…………)
こいつらの、あいつへの気持ちはなんなんだろうなと思えた。
まだガキ思考のルフィとチョッパー。
女と見りゃ無条件で頭がヤられるクソコック。
それはまだいい。
納得は出来ねぇが、あいつらだから仕方ねぇとも思える。
だが…。
あの女に遊ばれバカ騒ぎを始めたルフィ、チョッパーと共に騒ぐウソップ。
俺と共に、反対する砦の一角を担ったってのに、ルフィ、チョッパーのそのバカ騒ぎにつられて、あの女を受け入れる流れに加わりやがった。
大人びた考えも持つ、ここぞという時ぁ、俺の次峰になると思っていたが、やっぱりあいつもガキだった。
(…………)
そして、一番納得出来ねぇのがナミの野郎だ。
あんな手口にあっさりと落ち、宝石に目が眩んで、妹分であれだけあいつの事に親身になって付き合っていたそのビビを苦しめていた女を、簡単に船に乗せやがった。
正直、ナミだけは最後まで俺と反対すると思ってたってのに。
あんな宝石ごときに惑わされやがった事に、辟易と多少の怒りさえ覚える。
(…………)
そしてあの女。
さすがはあの鰐野郎に付き従っていただけあって、随分といい度胸してやがる。
俺達がビビに手を貸し、仲間として必死になってあいつに協力していた事を知っていながら。
その俺達の乗る船に乗り込んで来やがった、図々しい女。
(…………)
ロビンを加えて、いつもの騒がしい日常の状態に戻った甲板上をデッキから見下ろし思う。
こいつらの言う『仲間』ってのは、何なんだろうかと。
こいつらの考える『仲間』の言葉の重さってのは、どれぐらいのものなのか。
ビビの敵だった女をこれ程簡単に船に乗せる流れになっている事に、あいつらのビビへの気持ちは、あいつへの『仲間』の言葉の重さはどの程度のものだったのか、解らなくなった。
普通は乗せねぇ筈だ。
特にビビを妹分扱いし、一番親身に接していたナミ、そのナミと同等の扱いで、あいつの事を特別扱いしていたクソコック。
あの二人だけでも、反対すると思っていたが。
ナミは一度は手懐けられ、ウソップもバカ騒ぎに流されたが、すぐに正気に返って反対し出すと思っていたが。
その様子もありゃしねぇ。
何考えてんだ、ナミもクソコックも、…ウソップも。
(…………)
そりゃあ、船長のルフィの決めた事だ。
だからそれに従うのは解る。
俺だってそうだからだ。
ルフィがロビンが船に乗る事を許した。
だから、俺も今はこうしてロビンを疑っているだけだ。
反対の抗議はやめた。
それが船長へのクルーの態度であり、俺もあいつらもルフィの性格を解っていて、尚且つ信頼しているからこそ、それに従っている。
だが。
(…………)
それでも許さねぇと思っていた。
ナミだけでも、距離を置くと。
俺同様、疑いを持つと思っていたが。
その様子も見えねぇ。
それとも、疑っていてあの態度なんだろうか。
あのナミの事だから。
ロビンの腹を探る為に、あの性悪魔女の本領を生かして、受け入れているフリをしているんだろうか。
それならまだ納得出来るが。
(…………)
取り敢えず、俺だけは疑っていよう。
ロビンがこの船に乗った真意を探らねぇと。
ちぃとでも妙な真似を見せた時は、ルフィが止めても刀を抜こう。
あいつらは緩いから。
俺だけは疑い、何かあった時は緩いあいつらを護らねぇと。
それが、唯一戦いの中で生きてきた俺に出来る事だ。
そして疑う事が、ビビへの救いだ。
あいつらが簡単に流された事で軽く思えるあいつらのビビへの意識に、あいつが哀れに思えるから。
だから、俺だけでも疑っていよう。
俺だけでもあいつの『仲間』でいよう。
それが、あいつへの救い。
そしてロビンはあいつの敵だった女。
俺にとっては、ロビンはあいつを苦しめていた『敵』なんだから。
あいつらが簡単にロビンを受け入れようと、俺はまだ受け入れはしねぇ。
あいつらを護る為に。
ビビを苦しめていた片割れの女としても。
俺はロビンを監視しよう。


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