─原作サイド─

□相談・教え
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(…う〜ん…w)
Mr.ブシドーに相談があってキッチンを出たけど、少し困って彼を眺める。
Mr.ブシドーは今ここから対面の船首デッキの柵に凭れて、糸の切れた操り人形みたいな格好で足を投げ出して熟睡してる。
それを見ながら、困惑する。
いつも時間が空いていそうな彼だけど、案外空いてる時間が無い。
昼間の時間の殆どがほぼトレーニングか昼寝してるか。
夜もトレーニングしてるかお酒を飲んでるか。
そして夜ほぼ一晩中トレーニングしてるのを知ってるから、夜起きている代わりの昼寝は、彼にとっては大事な就寝時間で。
だから起こすのも躊躇われる。
お酒を飲んでる時間はその時間で、お酒好きな彼の楽しみの時間で。
やっぱり気を使ってしまって話し掛けにくくてw。
(…………w。どうしようかな…w)
相談事は別に今日じゃなくてもいいんだけど、でも多分明日も明後日もMr.ブシドーの生活ローテーションはあまり変わらないだろうし。
もしまたルフィさんが冒険出来るような島があったら、みんなと一緒にMr.ブシドーも下りちゃうだろうし…。
そうこうしてるうちにアラバスタに着いてしまうかもしれない。
そうなったら、もう相談してる時間なんてそれこそないだろうし、アラバスタに着いたらもう遅いだろう。
(…少しでも起きてくれないかしら…w、Mr.ブシドーw)
なるべく彼が自発的に起きてくれる事を願いながら、でも一向に起きそうにないMr.ブシドーを眺めた。
「お?、ビビ。なにしてんだ?、こんなとこで」
「あ、ルフィさん」
キッチンのドアの前に立ったまま、船首デッキの上のMr.ブシドーを見てると、キッチンのドアが開いて、ルフィさんが出てきて。
「ええ…w、ちょっとMr.ブシドーに相談したい事があるんだけど…w。でも起こすのも悪いし…w。どうしようかと思って…w」
ルフィさんからMr.ブシドーに顔を向け直して言って、またルフィさんを見ると、
「なんだ。ゾロに用があんのか?。だったら俺が起こしてきてやる。待ってろ」
「え?」
気さくな笑顔で言ってきたルフィさんが腕を後ろに大きく伸ばした。
「ゾローーーっっ!!!」
「!!w。ルフィさん!?w」
その伸ばした腕を今度は前に思いきり伸ばして、Mr.ブシドーの後ろ、凭れてる柵をMr.ブシドーを挟んでがっしりと掴んだと思った次には、ルフィさんの体が勢いよく正面のMr.ブシドーの方に飛んでいって。
「起きろゾローーーっっ!!!」
「…んあ…?。Σいっ!!?w」
ルフィさんが間近まで迫った時、ルフィさんの声に目を覚ましたMr.ブシドーが顔を上げて、自分に向かって突っ込んでいくルフィさんに驚愕で目を見開いた。
「ごはっっ!!!」
(!!w)
そのままルフィさんの頭がMr.ブシドーの顎に直撃して、そのあまりの痛そうな光景に思わず目を瞑って体を竦めてしまった。
「────w。Mr.ブシドー!!?w」
目を瞑る暗闇の中、ドッボーンと、何かが海に落ちる音が聞こえて、その音に目を開けると彼が寝ていた場所に彼の姿はなくて。
Mr.ブシドーが海に落ちたと、慌てて船首デッキに向かった。
「Mr.ブシドー!!w⊃⊃。大丈夫!!?w⊃⊃」
駆け寄った勢いを柵に手を掛けて止めて、海に丸く大きく広がる波紋のその中心に目を向けた。
「ぶっは!!!」
「!。Mr.ブシドー!!」
自力で水面から顔を出してきたMr.ブシドーにホッとして、でもMr.ブシドーの目はギッと、私の隣に立ってるルフィさんに向けられた。
「ルフィ!!!###。てめぇいきなり何しやがんだ!!!###」
額や頬に怒りに血管を浮き上がらせて本気で怒ってるMr.ブシドー。
でも、
「はっはっはー。起きたかゾロ」
(………w)
ルフィさんは何の罪悪感も感じてないみたいにあっけらかんと笑っててw。
「あんなやり方されりゃ誰だって起きるだろ!!!###。てかその前に死んじまうわ!!!###」
「そうか。いや悪ぃ悪ぃ」
(………w)
怒るMr.ブシドーに謝るルフィさんは、やっぱり全く反省してないみたいに笑ってるw。
「ビビが用事があるんだってよ。でも起こしづらそうだから俺が代わりに起こしてやったんだ。な、ビビ」
「えっ!?w。え…ええ…w。まぁ…w」
ふいに私に振ってきたルフィさんにちょっと焦って。
やり方はあれだけど、でも代わりに起こしてくれたのも、用事があったのも本当だから、正直に頷いた。
「起こし方ってもんがあるだろうが!!!#。ちぃとは考えやがれこのバカ船長!!!#」
Mr.ブシドーの言い分ももっともだと多分私だけが納得して、ロープを取ってきて、ルフィさんと一緒にMr.ブシドーを引き上げた。

「あの…w、ごめんなさい…w、Mr.ブシドー…w」
また柵に背中を着けて凭れて座るMr.ブシドーは頭から海水でびっしょりでw。
そのMr.ブシドーの前に正座して、気まずさと申し訳なさでのお詫びをしながら、ロープと一緒に持ってきたタオルを渡す。
用があるとは言ったけど、ルフィさんがあんな起こし方するとは思わなかったし、もしかしたら私があんな起こし方してと頼んだんじゃないかとMr.ブシドーに思われてるんじゃないかと、それが不安で。
「たく…#。寝起きに頭突き食らうとは思わなかったぜ…#。寝てても油断出来ねぇ…#」
「…ごめんなさい…w。ルフィさんにMr.ブシドーに用があるって言ったらルフィさんがいきなり…w。でも私もルフィさんがあんな起こし方するとは思わなかったから…w」
それとなく私が頼んだんじゃないという弁明を話に混ぜながら言うと、
「たく…。なるべくあいつにはものを頼むな。行動が破天荒なんだからよ」
「ごめんなさい…w」
タオルで顔と頭を拭いたMr.ブシドーが、シャツの上から体も拭いて。
そのMr.ブシドーにもう一度謝った。
(…………w)
短髪でもすぐには水気が切れなくて、Mr.ブシドーの頭から水滴が落ちて、Mr.ブシドーがまた軽く頭を拭いた。
そのタオルが頭から離れた時、耳のピアスを掠めて。
シャラリと、三つ連なった飾りピアスが音を立てた。
「………。……そのピアスはおしゃれ…?」
「あ?」
あまり服のセンスからしておしゃれには関心なさそうだけど、でも片耳にだけ、三つも連ねて付けてるから、彼なりのおしゃれかと思って訊いていた。
「洒落じゃねぇよ。そんなもんにゃあ興味ねぇ」
「…………」
耳の方に目だけ向けて、また私を見てきたMr.ブシドーに、なんとなく理由を訊いてみたいと、Mr.ブシドーの目に合わせていた視線をまたピアスに向けると、
「こりゃあてめぇの意識を留める為だ」
私が理由を知りたい事が通じたのか、Mr.ブシドーがその理由らしき事を言ってきた。
「意識を留める…?」
「ああ」
彼の言葉のその意図が解らなくて、ついその言葉を反復すると、Mr.ブシドーが短く返事をしてきて。
「俺の剣の流儀は豪剣だ。押して押して押しまくる。だからアツくなっちまう。それを抑える為のもんだ」
「…………」
もう少し詳しく聞きたくて、Mr.ブシドーの顔を見ていると、仕方なさげに笑ったMr.ブシドーが、頬に流れてきた水滴を肩に掛けたままのタオルで拭いた。
その動きに合わせてピアスが揺れ、また僅かに音を立てる。
「戦いの最中、こいつらが教えてくれる。アツくなるな。冷静になれ。敵をよく見ろ。それを音で教えてくれる」
「…………」
「音が鳴るもんなら何でもよかった。町ん中いいもんがねぇか探してたんだ。その時こいつを見つけた。大きさも手頃で邪魔にならねぇし、音も自己主張しねぇで、涼やかだ。それでこいつに決めた」
「…………」
本当にすごいと思えた。
気を向ける対象が全て戦い関係な事に。
そしてあんな猛々しく剣を振るっている時にも、あんな涼やかな小さな音に意識を向けていられている事。
この彼は本当に冷静で、そして本当に戦う事にしか興味を持たないんだと、それを知って。
「ねぇなら鈴でもいいかと思ってたがよ、正直これがあって良かったぜ。鈴なんかにしてりゃぜってぇ後悔してただろうな。リンリンリンリンうるせぇだろうし、格好も悪ぃ」
「…へぇ…あなたでも格好とか気にするのね…」
「……どういう意味だ?」
「あっw。うんんっw⊃⊃。別になんでもないのっw⊃⊃。気にしないでっ?w⊃⊃」
「…………」
自分の服装センスは全く気にしてないというか、これが彼のセンスなのかは解らないけど、人のセンスをとやかく言う気はないし、本人が気にしてないなら余計な事言わない方がいいわよねwと、疑問の目を向けてくるMr.ブシドーに慌てて話を切り上げた。
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