─原作サイド─

□露草
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容赦ねぇ事がありがてぇ、鷹の目の手合わせに毎日死にかけ。
今も手加減無しの斬撃に、地面にぶっ倒れたまま動けねぇ。
「ちょっと!。大丈夫か!?w」
「………」
動けねぇから仕方無く倒れたまま目ぇ瞑ってっと、上から聞こえた幽霊女の声。
「…―――」
相変わらずのうるせぇ声に目ぇ開けた時、目線の先の茂みの中に花が咲いてんのが見えた。
(…こんな所にでも咲くのか)
花には興味ねぇが、この花の名前は知ってる。
露草。
道場の片隅にも咲いていた、青い、名前の通り儚げな見た目の花。
だが儚げな見た目の割には頑強で、雪に枯れても毎年生えてきては、夏に花を咲かせていた。
「………」
あの頃は何とも思わなかったその花。
だがその姿に重なった人物。
いつも真っ直ぐ国を想い、いくら逆境に立たされても諦めねぇ、青より薄い水色の髪のあいつの姿が。
「ねぇ!、ちょっと!。!?」
「……うるさく騒がねぇでもくたばっちゃいねぇ」
軋む体を自力で起き上がらせ、花を見る。
「…………」
何となくあいつに見守られてる気がして。
気が引き締まる。
何となく力が湧く。
「生きてるなら早く手当てしろよ!w。見てるこっちが痛いじゃないか!w」
「……うるせぇなぁ」
耳にギンギン響いてくる幽霊女の声に、小指を耳に突っ込む。
「…………」
日も当たらねぇ日陰で咲く青い花を横目に、ペローナに急かされて屋敷に戻った。

毎日毎日修業の日々。
怪我は増えるが、強くなってる気はしねぇ。
こっちは必死だってのに。
奴にはなかなか届かねぇ。
「っ!!、108煩悩鳳!!!。!!」
剣で砕かれた煩悩鳳。
その砕かれた衝撃波の一つがあの花に迫った。
(ビビ!!!)
瞬間頭に露草とあいつが重なり、反射的にその斬撃に飛び込んでいた。
(!!!)
「ちょっと!!!」
「!!!」
左目に走る痛みと熱さ。
頬を温い血が伝う感触。
暗くなった視界半分。
どうやら目をやられたらしい。
「……どういう事だ。ロロノア」
「何やってんだよ!!w、お前!!w」
(…………)
ほんとに何やってんだ、俺は。
たかが花一つで。
(…………)
だが守りたかった。
あいつに似た花を。
「……片目の方が、手っ取り早く強さを掴める気がしてな」
「…………」
「バカ!!w。何言ってるんだ!!w。剣士が片目になるなんて、不利になるだけじゃないか!!w。メリットなんて何もないだろ!!w」
「…いや、メリットなら大有りだ」
困惑の顔で声を張り上げるペローナ。
その奥に立つ鷹の目を片目の視界に入れながら、口の端を引き上げる。
「目に頼ってばかりじゃ、いつまで経ってもおんなじこった。この方が視覚に頼れねぇ分、他の感覚を鍛えられるだろ」
花を守ったなんざ、言えるわけがねぇ。
そんな事言ったら、引っこ抜かれちまうかもしれねぇ。
あの花が。
あいつが。
「……さあ、続きを始めようぜ。片目だからって手加減は無しだ」
「………愚かな」
刀を構え再開を頼むと、一度目を瞑った鷹の目も剣を構える。

あれから1年。
俺は少しは強くなっただろうか。
いや、強くなっている筈だ。
鷹の目の太刀筋が読めるようになった。
片目になったお陰で本当に他の感覚が鍛えられ、太刀筋を体全体で読めるようになった。
集合まであと1年。
それまでにもっと強くなる。
あの露草みてぇに。
枯れても折れても毎年芽吹く、あの頑健な露草みてぇに。


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