─原作サイド─

□宴
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行われる宴。
魚人の国を救った英雄だと崇められ、振る舞われる酒や馳走。
その酒を呑みながら思い出していた。
二年前にも、行われた宴。
あの時も宮殿の中、酒を呑み、馳走を食った。
国を救った『英雄』として。
共に走った『仲間』として。
本当の笑顔を、心底からの笑みを取り戻したあいつと共に。
こんな国を挙げての盛大な宴じゃねぇ、宮殿内での、王とその家臣達と俺達とあいつだけの質素な宴だったが。
最高の酒だった。
今呑むこの酒も格別だが、あの時の酒には及ばねぇ。
最高の肴があったから。
あいつの本来の、心底からの笑顔があったから。
「……ビビ…」
胸ん中に湧いたその名を、押さえきれず口に出した。
だが幸い周りの騒がしさに、前に座るフランキーにも、その声は聞かれずに済んだ。
(…………)
旨ぇ酒。
呑みたくなった。
あいつと共に。
ここにゃあ居ねぇがずっと居る。
俺の中にずっと居るあいつ。
遠く、ここから遥か遠いアラバスタで、今も笑っているだろうあいつ。
ここにゃあ居ねぇがここに居る、俺の中に共に居るビビと、心ん中で共に呑んだ。
砂の国の英雄。
共にアラバスタを取り戻した英雄仲間のあいつと二人で、英雄と呼ばれるにゃあ相応しくねぇこの宴の酒を。


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