─原作サイド─

□服
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「…………」
早々と脱いじまうのもちぃと勿体ねぇが。
『はい、Mr.ブシドー』
王女自らが両手に乗せて差し出してきた服。
日照りの強ぇ砂漠で黒を着るのはちぃとツラかったが、言えなかった。
あいつが俺に選んだ服だ。
言える筈がねぇ。
暑さに耐えるのも忍耐修行だと思えば、暑さも受け入れられた。
それを脱いだ。
早々と。
汚したくなかったから。
あいつが選んで持ってきた服。
血で汚すのも、破いちまうのも、したくはなかったから。
「ん…」
いつもの服に袖を通す。
これなら替えはまだある。
破いても、血で汚れても構やぁしねぇ。
「…………」
脱いだ服。
洗おうかとも思ったが、俺の洗濯も結構雑いから、破いちまったら元も子もねぇ。
ちぃと汗は吸ってるが血じゃねぇだけマシだろうと、俺にしては綺麗に畳んで。
(…いつか返しに行くからな)
渡してきた時のあいつを思い出しながら、箪笥の中に仕舞い込んだ。


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