─原作サイド─

□決戦終了後
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「パっパパっ!?。ビビちゃんのお父様っ!?w」
「、あんた国王か」
ルフィを背負って現れた男。
その男がビビの父親だと解り、反乱の収まったこの現状で父親と合流出来たビビを見て、ようやく胸の中から何かが抜けた。
同時に体が重くなり、構う事無くルフィの凭れる壁に同じように背を着いて座り込み一息つく。
「何してる、ビビ。早く行けよ。広場に戻れ」
今にも沈みそうになる意識を気力で保ち、父親と共にその場に留まるビビを促した。
今は早く休みたかった。
安堵と共に襲ってきた疲労は、出過ぎた血とも相まって、もう限界にまで来ていて。
こうして話しているのも正直キツい。
壁に凭れ座ったのも、本当は倒れそうだったからだった。
他の連中も立ってはいるが、もうそれも気力だけで、今にも倒れそうだというのは長ぇ付き合いの中で培った雰囲気で解る。
だが俺も誰もあいつの前で意識を失う訳にはいかなかった。
あいつの事だ、ここで俺達が倒れれば、動揺し、また何かマイナスな事を思って自分を責めるかも知れねぇ。
「平和になった国で国王の言葉もないんじゃ締まらないんじゃない?」
ナミも早く休みてぇらしく、俺の考えていた事を代弁し国王とビビを促し、それに共に行こうと言ったビビをコックが止めた。
「解ってるだろ、ビビちゃん。俺達は札付きだよ」
「私達は勝手に宮殿に行っとくわ」
「うん」
ナミの言葉にビビが頷き、父親と共に広場に歩いていく。
その姿が小さくなった頃に、全員の膝が一斉に折れた。
地面に崩れ倒れた連中から、かなり小さくなったビビの後ろ姿に目を向けた。
その背中に言葉を贈る。
(よく頑張ったな…)
広場へと消えていく小せぇ、細い背中。
いつも船の上、気丈でいながらも憂いと不安と焦りをその背中に背負っていた。
それが今、やっと消えた。
もうあいつに憂いや焦り、不安は必要ねぇ。
あの背中にあるのは、これからのアラバスタへの希望。
あいつが進んでいくのは、二度と奪われる事のねぇ平和な国への道。
それを思えば、胸の中は穏やかだった。
これで終わったとしても。
あいつの、俺達との旅が終わるとしても。
これからのあいつが歩いていく希望と光に満ちた道を思えば、心の中は穏やかさに満ちていた。
(はぁ……)
安堵と満たされた気分に疲労がのし掛かり、両膝に渡した腕の上に頭を落とす。
目を閉じ、暗黒に遮蔽される。
その中に感覚が墜ちていく。

「………ん…。……?」
やけに揺れる感覚に、気を失っていたらしい意識が戻った。
目を開けると地面が後ろに流れて行っていて、誰かの足が歩いている。
「!?。なんだ!?」
てめぇの体勢の感覚から担がれていると解り、だが何者に担がれているのか解らず。
賞金首のてめぇらの身を海軍に引き渡そうとする輩か、それとも海軍自体か。
それとも俺達に恨みを持つバロックワークスの残党か、ともかくあんな所で油断して休んでいた事を迂闊だったと焦りながら顔を上げた。
「なんだてめぇ!!。俺達をどうする気だ!!」
随分な大男らしいその男のもう片方の肩にはコックが、そして小脇にはウソップが担がれているのが見え、その背中に手をついて体を上げて振り向くと、振り向いてきた男はきっちりと髪を切り整えた鷲鼻の男で。
その精悍な目と整った服装に、瞬間で悪党でも海軍でもねぇ事が解った。
「大丈夫だ、剣士殿」
「!!。おめぇは──」
その時横からした聞き覚えのある声に横を見ると、そこに居たのはあのウイスキーピークの変態オヤジで。
その左右の肩にはルフィとチョッパー、そして腕にナミを抱き抱えている。
「その男は私の部下でこのアラバスタ王国と王家の血族を守る護衛隊副隊長だ。心配はいらん」
「護衛隊副隊長…」
どうりでそこらの人間とは違う、独特の気迫と雰囲気を持っているその男に顔を向けると、その鷲鼻の男が信頼を感じる笑みを浮かべた。
「私の名はチャカ。君達がビビ様と共にこのアラバスタを救ってくれた事、感謝してもしきれぬ程だ。私からも礼を言わせてくれ、ありがとう」
「………」
その笑みと言葉に、安らぎに似た気分が湧いた。
本当に終わったんだと確信出来て。
「…俺達は何もしちゃいねぇ。あんた達の姫さんの愛国心につられてちぃと手を貸しただけだ。──だが大した姫さんだな、あんた達の王女さんはよ」
「……ああ、全く。感服する程の強い方だ。我が国の姫君も国王も」
誇らしげに、だが優しい笑みを鷲鼻男もオッサンも同時に浮かべ、
「さ、君ももう少し休みなさい。宮殿はもうすぐだ。着いたらすぐに手当をする」
鷲鼻男が笑みを浮かべたまま言ってきた。
「……ああ、悪ぃな。今回ばかりはてめぇで歩く気力が湧かねぇ。その言葉に甘えさせてもらう…」
支えていた腕の力を抜いて、担がれているその肩に体を任せる。
味方だという安心感、そして体の疲労感に抗う気は起きねぇで、目を瞑ってまた包まれる暗黒に意識が飲まれていった。


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