─学園ラブ─

□鬼ごっこ
2ページ/3ページ

「!」
後ろから追ってくるサンジさんから前に顔を向けると、前にMr.ブシドーが立ち塞がっていて。
近付く私を捕まえようと腕を伸ばしてきた。
(そう簡単には捕まらないんだから)
捕まる時はMr.ブシドーになら捕まってみてもいいような気もちょっとはするけど、でも私だってそう簡単に捕まる気はない。
(女の子だから簡単に捕まえられると思ったら大間違いよ)
すぐ前まできたMr.ブシドーの手。
伸ばされるその手首の上を両手で掴んで。
「んっ!」
「!!」
そのままMr.ブシドーの腕に重心を乗せて、地面を蹴る。
Mr.ブシドーが驚いた顔で私を見上げてくるのを空中で見ながら、そのままMr.ブシドーを飛び越えて背後に着地する。

(────)
驚いた。
正直驚いた。
確かにこいつはうちの学校の女達の中で最も身体能力が優れちゃいるが。
伸ばした俺の腕を平均台みてぇに利用して、この俺を軽々と飛び越えたビビに驚いた。
まさかこんな身軽だとは思わなかった。
だが――。
「!!!」
(───)
背中ががら空きだ。
こういう所は女。
次の動作までに時間が僅かに遅れる。
体を捻り、駆け出そうとしていた後ろのビビに再度手を伸ばすと、瞬間『しまった』って顔で振り向いたビビと目が合った。
遊びとはいえ、これは勝負。
勝負ならこいつにでも遠慮はしねぇと、
「!!!」
その細ぇ腕を捕らえようとした瞬間、ビビが消えた。

「ルフィさん!!」
もう少しでMr.ブシドーに捕まってしまう瞬間、横から猛スピードで走ってきたルフィさんに助けられて。
「しししっ。大丈夫かビビ」
「うんっ!」
ルフィさんに掴まりながら返事をしてMr.ブシドーを見ると、私を捕まえ損ねたMr.ブシドーがぐんぐん遠ざかっていく。

「――――」
目の前でビビが消えた。
かっ浚われた。
あいつが、てめぇの目の前で。
それにちぃと気に食わなさが湧いた。
相手がルフィでも。
あいつが目の前で男にかっ浚われた事。
「ありがとう!、ルフィさん!」
「ししし!、おう!」
相変わらずの人間離れした運動能力で俺から走り去ったルフィが、俺から距離の離れた所でビビを離して、礼を言ったビビと二手に別れて逃げていく。

「くそっ!!。ルフィはともかくビビちゃんまでなかなか手強いな!!。?。どうしたマリモ」
ビビちゃんを捕まえ損ねて動かねぇゾロの横でゾロを見ると、様子がおかしい。
「――――」
(あ、こいつ)
ビビちゃんを連れてルフィが逃げていった、今はもう何もねぇ方を見たまま黙ってやがるゾロ。
その表情と周りに纏う空気で解った。
怒ってやがる。
ビビちゃんがルフィにかっ浚われたのが気に入らなかったか。
(……バカが)
たかが遊びにマジになってやがるバカマリモに呆れる。
だが気持ちは解らねぇでもねぇ。
惚れた女が目の前でかっ浚われる気持ち。

(――――)
たかが遊びだと思ってたが、そうも言ってられねぇらしい。
作戦立てて、かっ浚われて。
勝負としても、男としても。
ぜってぇ逃がさねぇ。
ぜってぇに捕まえる。

「……あらら…」
どうやら兄貴が本気モードに入っちゃったみたいで。
ビビが目の前で浚われたのがよっぽど気に入らなかったらしい。
ならもう兄貴には指示は要らないでしょうと、兄貴への指令は頭から取り除いた。
もう兄貴にはビビを捕まえるまで指示も耳には入らないだろうから。
多分制御ももう不能だろうし。

「ビビ!!!。ゾロが行ったぞ!!!」
「!!」
ルフィさんの声に振り向いたら、後ろからMr.ブシドーが走ってきていて。
標的に絞り込まれてる。
そう解る程の気迫を感じる。
(―――w)
でも何故か怒ってるみたいに本気になってる目が鬼気迫っていて、なんだか少し怖くてw。
(なになになに!!?w。Mr.ブシドーなんで怒ってるの!!?w)
逃げる私を一直線に追い掛けてくるMr.ブシドーに少し恐怖を感じて、全力で走った。
「ビビ!!。こっちに来い!!」
「ルフィさん!!w」
ルフィさんとは距離が離れていて、そしてルフィさんもサンジさんに追い掛けられている。
(ウソップさんは!!?w)
ウソップさんに助けてもらおうと辺りを見回したら、
(Σw)
広場の隅っこで、息を切らして仰向けに寝転がってるウソップさんが見えて。
あれはもうウソップさんに助けは期待出来ないと、一旦後ろのMr.ブシドーを確認した。
(あれ?w)
追いかけてきてた筈のMr.ブシドーがいない。
諦めたのかと思って、ルフィさんの方に走ろうとすると、
「え!!?」
いつの間にか、進行方向にMr.ブシドーが身構えていた。
(っ!!w)
さっきの飛び越えはもう使えないだろうと、進路を変えたら走ってきて。
伸びてきた手に捕まらないようにまた進路を変えた時、
(えっ?)
突然、上げてた髪の毛が落ちてきた。
一瞬それに気が移った瞬間。
「きゃっ!w」
おなかに回ってきた太い片腕に捕まって、地面から足が浮いて。
「捕獲完了」
「…………」
太い腕と固い体に挟まれたままちょっと呆然と見上げたMr.ブシドーは、まだ何か不機嫌そうで。
眉間にシワが寄ってる。
指には私の髪紐が絡まっていて。
(…捕まっちゃった…w)
ちょっと呆気なかった感じを感じながら、でも一番最初に捕まった事が少し悔しいような残念なような……。
(え?w)
その時ふと目に入ったウソップさん。
地面に寝そべったままのウソップさんの片手を捕まえてる余裕のナミさんがいた。
「悪ぃ〜w。最初に捕まっちまったぁ〜w」
(………w)
力なく謝ったウソップさんは、まだ声が疲れていて。
最初に捕まったのが自分じゃなかった事には少し安心したけど、そんな余裕もなくて助けられなかった事には申し訳なかった。
「あ〜、なんだ二人とも。捕まっちまったのかぁ…」
「…ごめんなさい…w」
つまらなさそうに言ったルフィさんに、申し訳なくて。
Mr.ブシドーに捕まってた腕から下ろされて、ルフィさんに謝った。
「随分連携が良かったじゃねぇか」
「作戦だ」
「あん?。作戦?」
Mr.ブシドーの言葉にルフィさんが答えて、その答えにサンジさんが訊いた。
「誰かが狙われたら助ける作戦」
「………だろうな」
私の言った作戦に、Mr.ブシドーがぼそりと呟いた。
「じゃあ今度は俺達が追う番だな!。さあ逃げろゾロ!!、サンジ!!」
「ああ?。まだやんのかよw」
「当たり前だろ!!。俺達だって追いかけたいんだ!!♪」
「「………w」」
やる気満々に、満面の楽しそうな笑みで言うルフィさんに、Mr.ブシドーとサンジさんが少し情けなそうな顔を見合わせて。
「はあ…。仕方ねぇな」
「なら十数えろよ」
そう言ってサンジさんはナミさんの方に、Mr.ブシドーはその逆に走り出した。
(よしっ)
今度は私が捕まえるんだからと、返された髪紐で髪を縛り直しながら、逃げていくMr.ブシドーに狙いを定める。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ