milacle
□case7,変化1
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車から降ろされ、中に入る。
朝田先生の恋人小高先生が車椅子を押す。
中には、手の空いた人全員といっていいくらいのたくさんの人が出迎えていた。
みんなが口を揃えて言う。
「お帰りなさい、朝田先生」
だけど、いくら声を掛けても反応することはない。
瞼を、指を僅かに動かす反応さえない。
思わず悲しい感情が溢れ出し、あたりを深く暗い闇の底へと連れていく。
そして、朝田先生は個室へと移された。
そこは処置室や集中治療室に近い場所にあった。
考えたくはないことだけど、急変した時のためだった。
だけど、本当に朝田先生はこれを望んでいるのだろうか?
もちろん、意識がないため確かめることはできない。
朝田先生が苦しむだけなら、このまま…………
そうダークに考えてしまう。
だけど、きっと朝田先生なら僅かな可能性でも治療を望んでいただろう。
そう信じるより他はなかった。
朝田先生をベッドに寝かせ、そう考えながら窓の外を見ていた。
だけど、その時朝田先生の指が微かに動いたことに誰も気が付かなかった。
蜃気楼のように、夢〜幻〜そうあってほしいという願望がそうさせたのかもしれなかった。